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僕と魔王とエトセトラ  作者: 猶江 維古
第3章:孤高の猫編
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第41話.気になるミンシャ

 




 食卓を囲うのはレーン、ラド、カルナ、ナコ、そしてミンシャ。


 レーンとミンシャは何とも言えない空気で同席していた。ナコとカルナは楽しそうに食事をしている。


 ラドは……ミンシャの整った顔立ちに見惚れていた。



「えっと、その、改めてご挨拶しますね! 僕はレーンと言います。そして彼女はカルナ。あと……」


「俺の名はラド。美しく可憐な花を守る〈重装剣士〉だぜ……!」



 そう言ってミンシャにウィンクして見せるラド。何を張り切っているのか。


 当のミンシャはラドのウィンクに眉根を寄せると、無視して自己紹介をする。



「アタシはミンシャ。〈格闘士〉よ。ここにはだいぶ前から世話になってるわ」


「ミンシャさん、いつ頃シーカーに……? その、僕らとあまり年が変わらなく見えるので」


「アタシは今19歳よ。シーカーになったのは3年前」



 3年前……つまり16歳の時にシーカーになったという。


 シーカーとなるには大分早い年齢だ。というのも通常養成学校の卒業を以てシーカーとなる場合は入学のタイミングにもよるが大体18歳を越えてからとなる。となれば、一発試験組という訳だろうか。


 レーンは予測はするがなんとも詳細は聞きにくい気がして、詳しくは触れなかった。


 再びレーンとミンシャの間で沈黙が訪れる。


 食卓には食器の音と、カルナとナコがニコニコと楽し気に食事をする声だけ。



 なんとも気まずい。


 しかしせっかくの機会。言うだけ言ってみようかと思い立ったレーンは話を切り出す。



「ミンシャさんは、ソロなんですよね……? パーティは組まないんですか?」


「はぁ?」



 ミンシャが露骨に嫌な顔をする。逸ったかとレーンは思うが、すかさずラドがフォローに入る。



「いやなに、実は俺たちも二人でやってたんだが……まあカルナを入れて3人? ではあるが。んで、そろそろちゃんとパーティ組むかって話になっててよ、前衛ジョブのシーカーを探してたんだ」



 ラドは笑顔を絶やさず期待に満ちた顔でミンシャに言う。ナイスフォローだとレーンは胸を撫で下ろす。なんとも刺々しい女性との会話は、社交性に疎く女性経験のないレーンには荷が重い。



「それでよ、聞いたところミンシャは凄腕だって聞いた。よかったら俺たちのパーティに入ってくれないか?」



 にかっと笑ってそう言うラド。対するミンシャは皿に乗るソーセージをフォークでつぷりと刺しながら言う。



「無いわ。アタシはソロ。理由を教えてあげるわ」



 そしてソーセージを刺したままのフォークを振りながらラドに告げる。



「アタシはアタシが認めるやつ以外に自分の命を預ける気はないの。強くて人格者。それこそ英雄の素質を持ったくらいじゃないと信用できない。ラドって言ったわね。アンタもモヤシと同レベルってとこでしょ。もっと強くなってからじゃないとアタシは口説けないわよ」


「な、そこまで言わなくてもいいだろ!」


「五月蠅い。唾が飛ぶわ。やかましいなら出てって」



 ミンシャはさらりと言う。



(きっついなー……!)



 レーンはあまりの突っぱねっぷりに目を丸くしているラドに同情しつつミンシャの性格を改めて認識する。


 ラドも流石にカチンと来たらしい。



「顔が可愛いからってちょっと意識高すぎるんじゃねーの?」


「なによ木偶の坊、文句あるの?」


「なんだとこの!」


「なによ、やろうっての?」



 ラドとミンシャは椅子から立ち上がる。


 慌ててレーンとナコが制止する。



「ちょっと! 喧嘩しないでよ!」


「そそそそうです! 仲良くしましょうです!」


「やれやれ、賑やかだなあ」



 カルナはどこ吹く風で食事をしている。肝が据わっているというより関心がないといった風だ。


 しぶしぶ席についたラドとミンシャだが、その二人の視線は未だバチバチと火花を散らしている。


 どうやらラドとミンシャは妙にそりが合わないらしい。ラドも最初のナンパな考えはどこかへ行ってしまったらしく、面白くなさそうにふんぞり返っている。人付き合いのいい彼がこうなるのは珍しかった。というのもラドはレーンを馬鹿にされた事に、もとより少し苛立ちは感じていたが故か。


 と、そこへナコが放った一言に、ミンシャの目の色を変える。



「み、ミンシャさん! レーンさん達はシーカーになってからひと月もしないうちに銀章になったすごい方達なのです!」


「は……!?」



 ミンシャはレーンとラド、そして食事を続けるカルナを次々にみやり、口を開ける。



「嘘でしょ!? そんな短期間で銀章になんかなれるわけ……アタシだって1年かかったのに!」


「えっと、一応本当です」


「へっ! 俺たちの実力がわかったかよ」


「ありえない! あんたみたいなモヤシと木偶の坊が……? こんな腰抜けが!? 信じないわ!」



 ミンシャは驚愕しつつもレーンを見ながらそう言ってハムを頬張る。



「事実だぜ。なんならギルドに言って確認してもいいぞ。ギルドマスター直々に説明してくれんじゃねーか?」



 急に得意げになるラド。ミンシャは信じられないと言った顔でラドの得意げな顔に苛立ちつつもぐもぐと食事を口に放り込んでいる。



「あ、あはは。それで、僕たち明日もクエストに行くんですけど、ミンシャさんも一緒にどうですか?」



 レーンはなんとかミンシャと友好を図ろうと思いそう誘ってみる。



「行かないわよ! なんでアンタたちと一緒になんか……!」


「やっぱりそうですよね……」



 あまり期待はしていなかったが仕方がないとレーンはミンシャににこりと笑い、食事に戻った。


 食事をしながらミンシャは、ちらちらとレーン達を気になる素振りで見てはいたのだったが。





 ♢





 翌日、ミンシャはレーン達が先にイ・シャールから出立し暫くした頃合いで、ギルドに顔を出した。


 受付に歩いていき、ルリリ達に軽く挨拶をする。



「やあミンシャ。昨日帰ったばかりなのにもうクエストかい?」


「働き者なのですう~」



 ミンシャは軽く笑う。



「せっせと働かないと、功績も立てられないでしょ? アタシは白金章を本気で目指してるんだから」


「はは、応援してるよ」



 ルリリが仕事書類にペンを走らせつつ笑う。


 と、ミンシャがしきりに周囲を見回しているので、セナナが声をかける。



「気になること、ある?」


「え? あ、ああ」



 セナナの言葉に少し驚いた後、少し悩んだそぶりを見せたミンシャは、受付カウンターに身を乗り出して小声で言った。



「ねえ、最近銀章になったっていうの、いるじゃない? あの、アタシとおんなじでイ・シャールに厄介になってる」


「ああ、レーンさん達ですか~?」


「そうそれ! あいつら、もうクエスト受けてるわよね?」


「気になるの? 彼らが」


「やっぱりミンシャも気になるんだねー! さすが耳が早いよ! なんたって彼らは今このオルフェオンで一番注目されてるシーカーだと言っても過言じゃないからね」



 ルリリの言葉にミンシャはまたも驚いた顔。



「それって異例の速さで銀章に上がったからって言うあれ? どうにも信じられないけど、本当、よね」


「本当、ギルドマスター、公認」



 セナナの言葉に嘘はない。というより、銀章をつけている時点で疑う要素は無いのだ。



「ぬぐ……で、あいつらどんなクエスト受けてったのよ」



 カウンターに肘をつきながら言うミンシャ。どうにも気になる。



(べ、べつにあいつらの実力をこの目で見ないと信じてあげないだけだし……気にしてるとかじゃないし)



 ミンシャは心の中でそんなことを考える。



「えっと、レーン達は……確か昨日から〈蛙大王(ロード・オブ・トード)〉の討伐クエストをやっているね。昨日は発見できなかったらしいから、今日もそうだと思うよ」


「はあ!? それ金章クラスのクエストじゃない! なんで銀章のあいつらが受けてんのよ!」


「えっと、それもギルドマスターの公認でして~」


「はああ!? いやそれもおかしいけど、危ないでしょ! 銀章があんな人数で敵う相手じゃないわ!」


「あー、多分それは大丈夫」


「なんでよ!?」



 ルリリは驚くミンシャに胸を張りちょっと得意げに笑って見せる。ギルドマスターの許可には驚いたのはルリリ達も同様であったが、レーン達が活躍するのは純粋にうれしいのだ。それは彼の父を見送っていた頃から変わらない。見知ったシーカーが活躍するのは、受付嬢としては誇らしいのである。


 そしてそんな誇らしさを胸に、ルリリ、セナナ、ノララの3人は口々にレーンらが成し遂げた先日のクエストの顛末をミンシャに語って聞かせると、彼女は殊更に驚いた。



「オルフェオンを救った……!? ギルドマスターからの指名クエストを達成!? 新種の金章級魔物をあいつらだけで討伐ううう!?」


「そ! だから彼らは今英雄の卵って呼ばれてるホットなシーカー達ってわけさ!」


「んぐぐぐ……」



 ここまで言われては信じるほかないのだが、ミンシャの謎のプライドがそれを拒む。


 こうなれば自分の目で見て確かめてやる。それから判断しても遅くはない。



(そこまですごい奴らだっていうんなら、納得させてもらうわよ……!)



 ミンシャは思い立つとすぐさまルリリ達に手を振ってそのままギルドを出ると、境界森林の先へ向けて出発した。


 レーン達を追って。





 ♢





 急ぎ境界森林を駆け、やっとこさ森を抜けようという頃合いで、ミンシャの耳には大きな地鳴りと、不快な鳴き声が聞こえて来た。


 この鳴き声には聞き覚えがある。間違いない。〈蛙大王(ロード・オブ・トード)〉だ。


 ミンシャも一人で戦うにはなかなかの強敵。過去銀章だった時に一人で挑んで死にかけ、命からがら逃げだした思い出もある。


 あいつの恐ろしい所はその戦闘力もそうだが、取り巻きとして現れる多数の〈蛙貴人(ロイヤルトード)〉にある。


 数の暴力を押し付けられるため、フルメンバー……つまり一般的には4人以上のパーティで戦うのが最も賢い。最も、金章クラスの魔物という区分は〈蛙貴人(ロイヤルトード)〉を含めたものであるため、物量差をカバーできる通常人数のパーティで挑めばそこまで危険な敵ではなくなる、のだが。


 しかしてあのモヤシ……レーン達は〈重装剣士(ガーディアン)〉と〈召喚士(サモナー)〉の仮パーティだと言っていた。カルナは記章を付けていないかったから多分戦闘員ではないだろう。一緒にイ・シャールを立ったのは見たが、今頃は街でお留守番しているだろうな。


 そしてレーンとラド二人であの蛙の化け物と今まさに戦っているとしたら、急ぎ助けなければ不味いことになる。


 ミンシャは歯を食いしばりながら走る速度を上げる。


 そして森を抜けた瞬間、〈蛙大王(ロード・オブ・トード)〉が目に入った。


 やはりか。ミンシャはローブを靡かせながら急ぎ助けに入るため、戦場たる沼地に突入し……。



「っ!?」



 ミンシャは目の前で起きた()()を目撃した。


 そう、今まさに沼地に駆け込み、苦戦しているであろうレーン達に助力すべく戦闘態勢のまま走っていたミンシャは、〈蛙大王(ロード・オブ・トード)〉の頭がパンッという音を立てて粉々に吹き飛ぶのを目撃したのだ。



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