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僕と魔王とエトセトラ  作者: 猶江 維古
第3章:孤高の猫編
38/47

第38話.早速の課題

 


「ラド! 右の3体、任せる! 足止めでいい!」


「おうよ! うぉぉぉっ、〈タウント〉ぉ!」


「左の5体は吾輩が片付けよう。6秒もらうよ!」



 レーン達は今、境界森林を越えたところにある沼地に来ていた。


 一行の眼前には人間サイズの巨大な二足歩行で槍を持つカエルのような魔物が数十体も映っていた。


 〈蛙貴人(ロイヤルトード)〉と呼ばれるその魔物達は銀章クラスの危険度であり、レーン達をじわじわ包囲しながらぎょろりとした目で睨んでいる。


 そんな目玉をぐりぐり動かしていた一体が、カルナの手刀で首を刎ねられる。


 続けざまにカルナの放った魔術でさらに数体が蒸発。


 うろたえる〈蛙貴人(ロイヤルトード)〉達だが死角たる背後から詰めるもラドのカバーで足止めされ、その間にもさらにカルナは数体を葬る。



「こんなに多いとは思わなかったな……ルリリさんが止めた訳がわかったよ」



 レーンは少し焦りながら呟いた。



 一行がこんな所に来ているわけは、この沼地で最近目撃情報があったという魔物、〈蛙大王(ロード・オブ・トード)〉の討伐クエストの為だった。


 本来であれば金章クラスのクエストだったが、レーン達は少し浮かれていたことや、功績を早く上げたかったので受けられないか打診したところ、ルリリらは渋ったのだが、スオウの一声で許可が出た。


 スオウからすれば、〈偶像(イドロ)〉を倒す実績を持つレーン達の勢いがあるうちにどんどん功績をあげてほしいという気持ちのようだ。


 そんなわけで来てみたはいいが肝心の〈蛙大王(ロード・オブ・トード)〉の姿はなく、その眷属たる〈蛙貴人(ロイヤルトード)〉ばかりが一行を出迎えたのだった。



 結果として数十体の〈蛙貴人(ロイヤルトード)〉の歓迎を受けたのだが、一行はそこまで苦戦せずこれをすべて討伐することに成功する。



「ふう、〈偶像(イドロ)〉と戦った後だからか、こんぐらいなら楽勝だな!」


「そうだね、あれに比べたら油断しなければ苦戦はしないように感じるね。とはいえ、本命はまだ出てきてないわけだけど」



 きょろきょろと周囲を見渡してみるレーン。やはりターゲットの姿はなさそうだ。


 仕方がないと息をつくと、カルナがやってきてぼやいた。



「沼地を走り回るのは嫌だな。足が濡れるよ」


「確かにちと動き回ったからな。俺も鎧が重いからすぐ足を取られてよー。一回さっき転びそうになったぜ」



 ふむ、とレーンは思案する。


 二人は確かにとても動き回ってもらっていた。その動きで苦戦はしていなかったが、負担もあるのは事実と言える。


 レーンは先の戦闘を思い出す。


 レーンは戦場全体を見てラドとカルナの動きに注意しつつ、彼らが前衛を担っている間に後衛として魔術を編んでいた。


 しかして一人で補助と攻撃をこなすのはなかなかに難儀で、脳の処理が戦況に追いつかない事もしばしば。


 仕方なくラドを前衛の盾役、カルナを前後衛兼任の遊撃とし、レーンが後衛というポジションを取っていたが、いまいち型にはまらない気がしていた。


 今でこそカルナの能力頼みで何とかしているが、本来であれば専門の前衛がいたほうがラドも合わせやすいし、カバーする範囲を分担できれば無駄に移動する必要もなくなる。そうすればカルナは本来得意とする魔術に専念できるしレーンも楽になる。



(うーん、今まではラドと僕の二人で仮パーティっていう形でもなんとかなっていたけど、それってカルナのおかげでごまかしていただけ、か。うーん、この先エトセトラの奥地へ進むことを考えればこのままじゃちょっとダメかな)



 レーンは少し考えた後言った。



「パーティメンバー勧誘とかしてみる?」







 ♢






 クエストを一時中断し早速オルフェオンに戻ってきた一行は、パーティーメンバーをどう増やすかについて頭を悩ませていた。


 パーティーは基本は横のつて、つまりはシーカー同士のつながりで結成されるもの。


 レーン達にはシーカーの知り合いといえばレバン達くらいしかいないが、彼らは彼らで既にパーティーを組んでいる。


 レバンらに人を紹介してもらうことも考えたが、今はクエストで出かけていて不在であった。



 ともなれば何とか自分たちで勧誘なりなんなりするしかないわけだが、言い出しっぺのレーンが一番無作為勧誘に奥手であった。



「お前相変わらずコミュニケーションダメダメ君かよ! 少しは改善されたかと期待したのに!」


「し、仕方ないだろ! 知らない人と話すの怖いじゃないか! っていうか誰がダメダメ君だよ!」


「お前ルリリさん達とか初対面でもすっごい話してただろ!」


「あ、あれはとりあえず会話のきっかけはシーカーと受付っていう、なんていうか、あるじゃないか! こう、役職的に話して然るべき間柄だろ!」


「そういう言い訳っぽいのがあれば大丈夫なんだね、レーン」



 カルナが少しあきれたように笑った。ショックである。レーンはがくりと項垂れた。言い訳などとそんな直球で言わなくても。


 と、話を聞きつけたかノララが一行の座るテーブルへとやってくる。



「皆さん、パーティメンバーを増やされるんですか~?」


「ノララさん……えっと、実はそう思ってて」


「あ~、今まではレーンさんとラドさんのお二人でしたもんね~」



 ノララがそういえば~と手をたたく。ぽわぽわした様子で二人を見るノララにレーンは事情というかパーティメンバー募集という話が出た経緯を説明する。



「……というわけで、連携というか、やっぱり個人の負担が大きくて。前衛のラドはどうしてもカバー範囲が広くなってしまうし、カルナに頼って何とかしていますが……」


「なるほど~。では掲示板を利用してみては~?」


「掲示板?」


「はい~! あちらです~!」



 そういってノララはクエスト依頼用の掲示板の近くにある一回り小さな掲示板を指さした。



「あそこにパーティ募集の張り紙を掲示するんです~! 興味を持ってもらえば、加入申請が来るかもしれませんよ~」


「なるほど、勧誘じゃなくて募集か。これなら確かにコミュ力ゼロのレーンでも大丈夫そうだな」


「おいラド。僕だって怒るぞ」


「では、私が仲介をするので~、募集内容とかを教えてください~! あ、いま書類お持ちしますね~!」



 そんなわけでノララに頼んでパーティ募集の張り紙を掲示してもらう運びとなった。


 募集内容は前衛ジョブ。一先ずはこの条件のみ。


 とりあえずは様子見ということで一行は解散し、自由行動をすることとした。


 ラドはこのままギルドで誰かが来ないか待つといって残り、カルナは適当に散歩してくるといってどこかへ行った。


 レーンはとりあえず空いた時間で、明日また標的を探す際に向けた道具の補充をはじめとした買い物でもしようと思い、アイリッサ・ロウを歩く。



 道行く人の中にもシーカーらしき人は多く、銅章や銀章が散見する。金章はやはりというべきかほとんどおらず、歩きながらぼうっと見た限りでは見受けられなかった。白金章は言うに及ばず。


 周囲を見渡していて、やっぱり活気あふれる街だなあとふと思う。


 そして並び立つ屋台を見ていて、レーンはあることを思い出した。



「そういえばナコさんにちょっと買い出し頼まれてたんだった。えーと、青果屋さん……」



 レーンはきょろきょろあたりを見渡し野菜や果物が売られている屋台へ駆けていく。


 店主はレーンを見てにこやかに笑った。



「いらっしゃい! これはうわさに名高い英雄の卵さんじゃないか。よく見とっとくれ!」



 恰幅のいい壮年の男性店主はにこやかにそう言う。


 もうシーカーだけではなく街の住人もレーン達の事を知り始めている。概ねレバンが吹聴しまくっているせいだろうことはおおよそ見当がついた。


 とりあえずナコに頼まれた品々を買い揃え、紙袋を抱えて踵を返そうとした時である。



「ん……?」



 レーンの視界に気になる光景が移る。


 一人の、ローブを羽織ってフードを目深にかぶった……体格からして女性であろう人を、数人の屈強な男たちが囲んでいたのだ。


 どうにも会話の内容は聞こえないが、身振り手振りから察するにやはり揉めている。


 道行く人々は喧騒からか面倒に首を突っ込まないようにか、気づいていないふりをしているように見える。


 と、レーンが目を凝らした瞬間に男の一人が女性の腕を掴むと強引に路地の中へ引きこんだ。


 他の男たちもそのあとに続いて路地裏に消えていく。



「え……? あ、えっ」



 レーンは、その光景をなんとなくでしか見ていなかったがはっとする。


 これはまずいやつなのではないか。


 大勢の屈強な男性たちの目には明らかに物々しさを感じていたのにぼうっとしていた自分が恥ずかしくなる。



「おじさんごめん、ちょっとこれ持っててください!!」


「お、おいおいおいちょい待ち‥‥‥おわっ!!」



 店主に強引に今買ったばかりの荷物を押し付けるとレーンは人波をかき分けて路地裏へと向かった。




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