色付くカウアイ島にて
同じ青でも特有の色。わたしがこの地を目指したのは、色の付いた大地を訪れることにあった。澄みきった空と断崖下から吹き込んでくる心地よい風と、靡く髪。
彼女は観光客だろうか。そうであってもなくても、同じ色の想いを感じられているのだとすれば、この場で躊躇する暇は無い。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「もし、こちらへは……観光で?」
「そうだとも言えますし、そうでないとも言いきれます」
言葉は時に選ばれることを迷う。考える間を置かずに、出された言葉は――。
「……感じられている色が同じでしたら、この地を巡りませんか?」
ひとりないしは、ふたり。その言葉の意味は明らかにそうであるにも拘わらず、彼女は軽く頷いてくれた。
ただ……同じ色と同じ風を感じたい。それだけのこと。彼女とわたしは、数日の時を共に感じることができた。
其処かしこにあったのは、紛れもない色の想いだけ。
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