サバイバルカードはヤバい
弁当をこさえ、海辺まで歩き、砂浜を探索してみたものの、見つけられたのは、流木と貝殻と魚の死骸。
ヤシの木様の葉とその実は少し頂戴したが、人が関与したと思われる物品は何も発見できなかった。
しかし、探索して発見もあった。
海辺を歩きで川を見つけたところからさらに海沿いを進むと、海の岩場のようなものがあった。
ちょうど潮が引いていたタイミングなんだろう。岩場には逃げ場のなくなったタコや巻き貝を見つけた。それをわずかに海水を入れたエコバッグに集めた。
もうひとつ発見があった。
横穴から少し川の上流方向にやや歩みを進めると、崖の上へ登れる道があった。そこを登ると、竹がはえていた。
確か、竹は加工すると籠やら炭やら使えたはず。
一旦、海産物を横穴に置き、竹林へと向かう。
サバイバルツールキッドの中にワイヤーソーというものが入っていた。取説見たときはピンと来なかったが、恐らくこれを使う場面だろう。
ワイヤーソーの両端にあるリングを掴み、竹を包んで左右に動かす。そう、これはチェーン式のノコギリみたいなものだ。
ナイフで切るよりも効率よく、竹はズバズバ切り落とされていく。
竹の種類なんてわからないし、筍狩りもしたことないから、この竹の種類が食料になるなんてさっぱり検討もつかない。
一応、筍がはえてないか気にしながら竹を根元から次々切り落としていく。
計20本ほどか。残念なことに筍は見当たらなかった。
竹自体は空洞で持ち運びしても木に比べたら軽いもんだ。ただ、笹が顔に当たり、いささか、こそばゆい。
横穴近くで担いだ竹をおろし、枝を剥ぎ取る。
一本の竹を節付近で切り落とす。
簡易のコップだ。
ビールの缶も、缶きりで蓋を外しコップ状にしていたが、いかんせん切り口がギザギザで怖かった。
因みにサバイバルカードの中に缶きりってのがあったから使用したんだが。
話は変わるが、あのサバイバルカードはヤバい。
取説読んで改めて思ったのだか、あのカードは色んなサバイバルに対応した金属をはめ込んだ代物だった。
ルアー大・ルアー小・矢尻大・矢尻小・ノコギリ刃大・ノコギリ刃小・マイナスドライバー・アイスピック・缶きり・簡易ナイフなど、折って使うことが出来るものだった。
正直、サバイバルカードって『俺の名は誰それで、血液型は~、住所は~緊急連絡先は~』みたいなドックタグ扱いだと思ってた。これには俺もびっくりした。
なんとなく生活してて、使おうなんて場面は更々ない。ありがとう、サバイバルツールキッド。
で、竹の話に戻そう。
幅5~8㎝くらいの竹を20本切り取ってきたわけだが、長さは8mくらいあると思う。他にも長くて太い竹があったが、取り敢えず切りやすそうなもののみ、とってきた。
取り敢えず一本は根元の節から切り、10㎝くらいの長さのコップを数個作る。竹の先のほうはまだ柔らかくよくしなるので、釣り竿にしてみよう。
真ん中の残った硬い竹は、次々と竹串にしていく。やっぱり薪にくべる木を加工するよりも強度やら衛生面やらなんとなくいい気がするしな。
あと、横穴にちょうどはまるくらいの長さに竹を切り、更にその竹を半分に縦割する。縦割にした竹に、等間隔で穴を開けていく。
ほら、岩の出っ張りに作った干し肉用の糸、垂れ下がってたろ?だから出っ張りにうまく半分に割った半月状の竹をかけ、バーちゃんのパンツみたいなユルユルから変えようと思ってさ。
等間隔に開けた穴から糸を結びつけて干し肉と、朝とった魚の開きを干す。
そうそう、竹を見つけた場所の近くにツタも見つけた。それも、持てるだけ集めて、今、川の中に浸けている。
確か、職場の同僚である作業療法士が、籐細工する前の日に、ツタみたいのを水に浸けて柔らかくしていたからだ。それが成功すればロープの代わりになるかもしれない。
13:02
一段落したところで、俺は昼食をとることにした。