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孤島奮起  作者: つふら
人間があらわれた
7/126

肉の加工


4:21


辺りはうっすらと暗くなってきている。そろそろ夕食の支度をしなくては。


今、手元にある食材のなかで、最初に調理をしなくてはならないのはナマモノ、つまり肉だ。


生のままだと、せっかくの食料を台無しにしてしまうので、加工をしてやや長持ちをさせるしかない。



加工か。


浮かぶのは干物とか、漬物とか、燻製くらいしか浮かばない。冷蔵庫や冷凍庫の生活しか知らない俺は、作ったこともなけりゃ試したこともない。


うーん。


戦国時代にタイムスリップした某漫画の主人公は、農民達に、冬は干し肉を作らせていた。確か、塩水を縫って風当たりのいい日陰に干せ、なんてことを言っていた気がする。それなら出来そうな気がするが、問題は『冬』という季節。


今の時期はどの季節に当たるのかわからない。電車に突っ込まれた日は6/3だったが、この場所も同じくらいの気候なのかわからない。体感ではさほど変わらない気もするが。


兎に角、行動あるのみ。


豚肉を取り出し、約2㎝感覚で切り落としていく。


サバイバルツールセットのナイフのお陰だ。


脂肪部分は取り除き、後で油の代わりにしよう。


切り取った肉を並べ、塩を揉んでいく。適量なんて知らないから、そこは適当。


豚肉は少しこれで寝かせておく。


次に鶏肉を一口大に切り、肉パックが入っていたビニール袋の中にいれる。そこに醤油をいれて、これも寝かせる。


最後は合挽き肉。これもビニール袋にいれ、塩を少々し混ぜる。ついでに卵も混ぜる。


これで下拵えはオッケー。


拾ってきた木の表面をナイフで削る。15本くらいだろうか。


横穴の壁の岩がいい感じに対に出っ張っている場所を探し、ソーイングセットの中にあった糸を繋ぐ。


そのあと川へと行き、水の流れを塞き止めるように、川の中の石をL字型になるように積んでいく。反対側の同じように石を積んでいく。やや川面から石が見えるくらいの高さまで。



5:33


削った串状の木に挽き肉をつけていく。焼き鳥のつくねのように。そして、最初に作った焚き火の回りに次々と串を刺していく。


豚バラ肉は一枚ずつ針で糸を通し、先程作った横穴壁にはった糸のところに結んでいく。


パチッパチッと、合挽き肉つくねの刺した焚き火から音がし、なんとも食欲をそそる肉の匂いがしてきた。


こまめに火に当たる部分を変えながら、俺はその音に酔いしれる。音だけで食欲に刺激をされるのは久しぶりだ。


辺りはほとんど暗くなり、聞こえてくるのは川の流れている音と、風の音。火の粉がチリながら、肉の匂いだけがこの空間を謳歌している。


た・・・たまらない。これがBBQの醍醐味なのだろうか?今となってはそんな事よりもこの肉にかぶりつきたい本能で、喉が口腔内がウズウズしている。


待ちきれなくなった俺は川辺に作ったL字の場所へ向かう。


そこには、ビール缶4本と、鶏肉が浸かっているビニール袋があった。その缶をひとつとり、足早に横穴へ戻る。


一歩一歩近寄る度に、食欲をそそる。


俺は地面に座り込み、プルトップに手をかけ、引き抜く。


右手には合挽き肉つくね。


「いただきます」


まずはつくねを恐る恐るかじる。


「うぉ』


直後にビール缶を口に、一口、二口。


「旨い」



至福。これぞ生きている喜び。


合挽きつくねは塩だけの味付けだったが、この疲れている体にはこの塩気こそが最高のご馳走だった。


そして、ビール。


肉体労働の後のビールは堪らなく旨い。


利尿作用があり、こんなサバイバル環境ではマイナスでしかないのだろうが、それでも旨いものは旨い。


作ったつくね10本食べ、いつしか夜はふけていく。


いつの間に、俺は眠りについていた。


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