話 其の五
スパコーン!!
どや顔でかっこよくそれっぽいセリフを言った俺の頭を、ルルが竹筒でどつく。
痛い。
「タケルが一番グジグジしてたのによく言うわよ。」
「うむ。そうですな。やれ電気がないだの、ガスが欲しいだのずっと言って降りましたからな。」
そうなんです。俺が諦め切れなかっただけなんです。
他の皆は簡単に運命を受け入れてしまったけど、俺、やっぱりあの電化製品で囲まれた世界に帰りたかったんです。
そりゃ、自分の手で作り出すのは楽しいし達成感はあるよ?でも、電気もガスも水道も・・・・あ、水道はなんとかなってるけど。でも、なんでも揃ってる世界に戻りたいって思うだろ?
人間、一回楽を覚えたら戻りたくなるんだよ。
「・・・・・・・カカカカカカカカッ!」
ジナツヒコが笑いだした。
「なんだよ、ジー!いいじゃないか!」
「いやいや、正直で何よりと思ってさ。」
「じゃあ!」
「帰れないのは変わらない。」
くぅ。
やっぱりダメか。
「なんだよー、タケルにーちゃん。さっきはカッコいいと思ったのにさぁ。」
「だってさぁ、皆といるのも楽しいけどさ、可能性があるなら、すがってみたいじゃんかよ。」
「僕も親父にもう一度会いたかったけど、帰ったところで生け贄にされるしなぁ。」
「タケルは無い物ねだりなのよ。」
うぅぅぅぅぅ、言われたい放題だ。
「カカカカカカカカッ!本当に仲が良い異種族同士だ。では・・・。」
ジナツヒコは姿勢を改める。それに倣うようにビハヤヒも姿勢を正す。
そして、彼らは俺達に向かって頭を下げた。
「君達の人生を、弄んでいるようですまなかった。」
ジナツヒコに合わせ、ビハヤヒも頭を下げる。
「でも、自分は皆様にお礼が言いたい。ありがとう。」
ビハヤヒが頭を挙げる。
「自分とジナツヒコは、きっと異種族でも争いなど起きない世界を夢見ていた。同僚からはバカにされ、頭がおかしいとまで言われた。しかし、自分はレプトゥリアン、ジナツヒコはアクトゥリアン。それでも手をとり研究を進めることができた。」
「そうだな。俺達は今、自分達の信じていたことを見ることが出来たんだ。異種族でもミー達が介入しなくても争わず暮らせるということが。」
「そちらさんはよくても、俺の気持ちは・・・!」
「ハイハイわかったから、タケルはもう諦めなさい!そんなに私達と一緒が嫌なの?」
「そうじゃなくて、もっと文明をさっ!」
「しつこい!!」
「カカカカッ、わかった。タケル、君の意見は善処しよう。」
ジナツヒコは笑いながら、俺を見る。
「但し、ミー・・・いやこのプロジェクトに関わってるスタッフ全員から願い・・・依頼を受けてくれればの話だけどな。」
話が終わらなかった