あの日のミーティング詳細
ビーとジーが現れ、俺達全員で会議したあの日に遡る。
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「で、今後、あの2人についてどうするか、皆と決めたいんだ。」
「・・・・その前によろしいか。」
レビルさんが、スッと手をあげる。
「拙者の国の詐欺師の手口と似ているのである。」
「詐欺師?」
「そうである。下手に出て、ターゲットの警戒心を薄めたところに、知らない知識を披露し、不安を煽った後に、ターゲット自身に選択を迫る。な、詐欺師であろう。」
あー、布団売ったりオレオレ言ったりするのも確かにそうだわ。通販番組なんかもそういうのが多いもんな。
「なら、仲間にせず追放するの?」
「クククククククッ、ルル、それは悪手である。ならばより味方に引き入れ動向は知っておかねばならない。」
「そうよね。それに全てが嘘だと決まったわけでもないわ。さっきの話ぶりからみても、嘘をついているというよりも、大切な事を話していないって感じだったもの。」
「俺もあの2人の話を聞いて、全て嘘だとは思えない。でも、どれが本当かはわからない。一応、信用してるフリをして、簡単な俺達の経過を話してみた。それでようやくさっき伝えた情報が聞き出せた。」
人から話を聞くときは大体2割の真実を話すと相手の口が割れやすい。これは先輩から習ったわけではなく、俺が今までの色んな人付き合いから学んだことだ。
「そこでなのだが、皆で演じてみませぬか?」
「え?さっきのディディとレビルみたいなあの胡散臭い演劇を?」
ハナ、正直過ぎる。
「あ・・・嘘臭かったであるか・・・・。拙者、よく出来たと自負したおったのですが。」
「我も上出来だと思っていた。泣くな、レビル。」
あれがか。そして本当に涙ぐむなレビルさん。
「まぁ、演技は別として、皆で情報収集する必要があると思う。」
「けど、そう簡単に話してくれないでしょ。」
「・・・・もしだよ?この場所の事をもっとなにか知っているけど言えない理由がある。でも、話さざる終えなくなるときって、どんな時かな?」
「あの2人が故郷に帰りたいとき?」
「それなら、俺達に話さず、さっさと帰ると思うんだ。なのに余計な話をして不安を煽る理由・・・それは、俺達を監視するためじゃないかと思うんだ。」
「なんのために?」
「それはわかんない。けど、監視するってことは、脱走されたくないんじゃないかなって思うんだよ。」
「クククククククッ、確かに。あの技術があれば我々に頼らずとも帰還する手段はあるであろう。」
「つまり、今までと目的は変わらないということでありますな?」
「そう。天井に穴を開ける。それをやればきっと動き始めると思うんだ。」
「しかし、そもそもあのような硬い見えない壁・・・傷一つつけられないのでありますぞ?天井も同じ固さであれば、動きどころか何も得られませぬぞ。」
「そこでなんだけど、俺達は今までとおんなじ生活を続けながら、2人の会話を聞き逃さないようにしよう。何気ない会話からも、時折真実って言うのが出てくるもんだ。」
「えー、覚えられるかなぁ。僕、鉄鋼しか出来ないよ?」
「わかった!僕、子供だから監視しやすいと思う。だから、出来るだけそばにいるようにするよ!」
クジタ、本当に君は子供かい?発言がシャインよりも大人びてるぞ。。
「そして、彼らの知らないウソの情報をそれとなく話していこうか。」
「ウソの情報?」
「例えば、エルフは精霊の力を自由自在に使えるとか、吸血鬼の血は万物を硬化する血からがあるとか。」
「はぁ?なんなのその設定。」
「出来るだけ、あの2人に『ヤバい、こいつら本当に天井に穴を開ける』と思わせる事が大事なんだ。だから、それぞれの本当の力や能力は極力隠して、生活してみよう。」
「けんど、見張りながら、仕事さできねーど。」
「彼らのにも色々と出来そうな仕事を見つけて、そこに集中してもらうように持ってこう。その間にこちらも色んな設定と状況別のパターンを考えようか。それに合わせて『天井を壊される』と思えるような方法も考えようか。」
「そうであるな。そして、それぞれ密に連絡をとらねばなるまい。」
「皆が集まる時にこの話はできないから、『連絡網』を作ろう。でもその前に、彼らがなんの仕事が出きるのか確認してからだな。」
「ねぇ、一応キーワードを、決めておかない?あの2人の前で『例の件』とか『あの話』とか、怪しい言葉は使えないでしょ?」
「んだな。おでも、自信ねぇ。」
「なんら、『城』でいいんでねぇーか?そんなら、わだしやクジタが話しても、胡散臭くなんねーし。」
「・・・・確かに。『城の進み具合はどう?』が『計画の進み具合』とは思わないもんな。もし、トラブルがあっても『城の材料が足りないから』で、お互いを工房にスムーズに招き入れることも可能だよ。いいね、キヌコさんの作戦。」
「うむ。それで進めてみましょうぞ。」
「じゃあ、皆、それでいい?」
一同、頷く。
「じゃあ、あの2人の所に行ってくる。その間に皆は自分の能力設定を考えといて。」
そうして俺はレプティリアンという2人の元へ向かった。
俺がいない間に決まった設定。
レビルさんは城職人で人よりちょっと力持ち。
ルルは聖霊の恩恵を受けた知識学者。危険な爆薬の作り方を熟知。
ハナはウソがつけないアンドロイド。ウソをつくと緊急停止する。
シャインは武器マニア。危険な殺傷度の高い武器を作るのが趣味。
カムイは最強の傭兵。その角は強心剤で、力を何千倍にも引き上げ、1人でここらの山を吹き飛ばした設定。
ディディは残酷な吸血鬼。特に爬虫類の血を好み、その血は劇薬として毒にも爆薬にもなる核物質が溶けている。
キヌコさんは情報収集エキスパート。噂レベルからキヌコさんが知らない噂はなく、聞きたい場合は対価を支払わなければならない。
クジタは動物のお世話が好きだけと、ほんとは兄弟達を煙たく思っているダメなお兄ちゃん。ハナに恋をしている。
俺は、料理しかできない人でトイレへのこだわりが強い変人。
・・・・・俺の知らないところで決められた俺の能力。なんだろうな、俺だけこんな設定かよとシュンとした。絶対悪口だ。
こんな面白設定、俺達は・・・いや、俺はいいんだけど皆が演じきれるのだろうか。
仕事に行く前に連続投稿