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孤島奮起  作者: つふら
トカゲが現れた
110/126

歓迎会と収穫祭

ハナ暦 9/20



大体収穫も終わり、加工も一段落ついた。城も着々と作られてきている。


「ここらでたまには収穫したものをパーッと飲み食いしようではないか。収穫祭と言うのであろう?」



というレビルさんの希望。


収穫祭といっても、カムイの角のお陰で育成スピードは格段に早い。だから、正確には年4回は収穫祭が出来るのだが、なんだかんだ忙しくてやることはなかった。


これから冬になるし、ビーとジーの歓迎会も兼ねてたまにはいいだろうというのが、レビルさんとルルの意見。


まぁ、別にいいんじゃないか?


という訳で、今日の夕食は豪華になった。


新鮮野菜のピクルスと鯛のカルパッチョ、コーンスープと酸辣湯、炒飯と明太子のパスタ、尾頭付き鯛の塩焼きになんちゃってロースト猪に鶏唐揚げ、鮭のちゃんちゃん焼きと筑前煮に鹿シチュー、杏仁豆腐もどきにフルーツシャーベットと果物盛り合わせ。


どうた!和洋折衷!しかもコース料理っぽくしたんだぞ!まあ、こんだけ数があるとわかんないだろうけど。


それに飲み物は大盤振る舞い。ワインに日本酒、焼酎ウオッカというラインナップ。


「乾杯!!」


それぞれシャインが作ったガラスのグラスに好きな飲み物を注ぎ、夕食が始まった。あ、子供はグラスだと危ないから竹筒コップな。


「これが麦酒?泡ばっかで苦いじゃない。」


ルルは初めてのビールがいまいち美味しくないようだ。構うものか。確かに、俺が飲んでいた麒●ラガーと比べると格段と味は落ちる。けど、一年ぶりのビールだ。美味しくないわけがない。


「なら飲まなくてよし!」


「うーむ、この冷たい苦さ、仕事の後にはたまらない上手さであるな。」


わかる?レビルさんはわかってくれる?この美味しさ。


「おでは焼酎が一番だ。」


「私はやっぱりワインね。このスパークリングワイン、美味しいじゃない。」


「しかし、この日本酒も美味い。辛味の中に旨さがある。拙者は1杯目は麦酒もよいが日本酒のほうがよいな。」


あー、それもわかるわー。


「ビーも飲んでるか?」


「ええ、いただいています。自分もこの日本酒というのが好みですね。」


ビーはレプティリアン用に作った小さいコップでチミチミと飲んでる。


「ジーは・・・・お前、飲み過ぎるなよ。」


子供用の竹筒に、ワインをナミナミ注いで、イッキ飲みしている。


こいつに酒を与えるべきではなかった。


「ミーはこの程度で酔わないぞー。」


もう酔っている。


誰かが話すと誰かが反論し、また誰かが違う話をして、適当に笑って・・・酒が入らなくても賑やかなのに、酒が入ると食卓はより賑やかになる。


こういう時、飲めないハナは可哀想だ。まぁ、笑ってるから楽しんではいるんだろうけど。


「タケルにーちゃん、僕もその麦飲みたい。」


「駄目だ。お酒は大人になってからだ。」


「大人になるのはいつ?」


「俺の国では二十歳だったけど、カムイの国は何歳だったの?」


「12だ。」


「はっや。ルルのところは?」


「12から15歳ね。大人になる試練をクリアしたら、大人として認められるのよ。」


「へー、どんな試練?」


「秘密。エルフにしか教えてはいけない決まりなの。」


「ケチ。」


「はぁ?」


「はい、喧嘩しない。」


グッとハナに俺とルルは押さえつけられる。


そんな俺達を見て、ビーが笑う。バカにしたような笑いではなくて、なんというか慈しむような笑い。


「皆さん、本当に仲がいいんですね。よかった。」


「は?仲がいい?喧嘩しようとしてたのよ!」


「自分は見ててなんだか皆さんを見ていて嬉しくなりますから。」


「なんだ?ビー殿、酔っておられないのか?」


「いえいえ、飲んでますし少しは酔ってますよ。本当に、皆さん仲が良くて、嬉しいんですよ。」


「そうであるか。まま、今日はたらふく飲みましょうぞ。」


そう言ってレビルさんはビーのグラスに日本酒を継ぐ。


「ありがとうございます。」


ビーも、継がれた日本酒をクイッと飲み干す。


「お、良い飲みっぷりではないか。」


そうして時間は一時間・・・二時間と過ぎていく。


子供と双子、シャインとキヌコさんは先に自室に戻ったが、俺達は飲み続けていた。


「ミー、歌います!レプティリアン国歌!ビー先輩もほら!立って!」


「嫌ですよ。自分は歌が下手だから。」


ジーもかなり酔ったのか、全く盛り上がらない国歌とか歌いだす始末。


「2番、レビル!脱ぐ!」


「脱ぐな!!!」


「3番、ルル、脱ぎます!」


「だから、脱ぐな!」


「では我がその体について詳しく書き残してやろう。」


「書くなー!!!」



そして更に夜は更け、解散となったのは飲み初めてから5時間ほど経過した頃だった。





翌朝。


ううぅぅぅぅぅぅ。頭が痛い。


二日酔い。


飲み過ぎた。


もう日は出ている。水を汲んでこなくてはいけないのに、体が重い。


酒というのは不思議だ。


こうなるのは過去の経験からわかっているのに何故か飲んでしまう。


俺は顔を洗い髭を剃ると、重い足を引きずりながら外に出る。


天候が雨だったら色んな仕事が休みになるものの、残念なことに晴天。


担い桶を肩にかけ、川へ向かう。


水を桶に入れた後、頭痛を少しでも静めたい俺は頭を川に突っ込む。そんな事でアルコール性頭痛は治らないのは経験上も知識上も分かってはいるのだが、まぁ気休めだ。


「うー、痛い。」


俺の隣で、同じように川へ頭を突っ込んでいたのはルルだった。


「おはよ。ルルも二日酔い?」


「・・・・そうみたい。なんか、飲まない間に弱くなっちゃったな、お酒。」


そうなのだ。俺も酒はどちらかというとザルの方だった。健康診断では毎年着実にγ-GPTは悪化していたけども、二日酔いになる時は朝まで飲んだ時くらいのものだったのに。それがあの程度の酒で二日酔いになるとは・・・・。今頃肝臓はフルに働いていることだろう。


「でも文句なんて言ってられないから、ちょっと狩りに行ってくるわ。」


「いってらっしゃい。俺も胃に優しい朝食、作っとくよ。」


さて、俺も働かなくては。


水のたっぷり入った担い桶を持ち、土間へ向かう。


土間ではすでにキヌコさんが朝食準備に取りかかっていた。


「あんれ、タケルどん。ちゃんと起きられたんだな。」


昨日の食い散らかした後をすべて片付け、いつも通りの居間になっていた。


「キヌコさん、すいません片付けもさせてしまって。」


「居間を片付けたのは私よ。ほんと、汚すだけ汚してみんないなくなるんだもん。」


「ありがと、ハナ。」


「そんなにアルコールって美味しいのかしら。私も飲んでみたいわ。活動停止すると思うけど。」


「それは止めて。ごめん!ちゃんと今度は片付けるから!」


ブスーっとした顔をしながら塩作りをしているハナ。今度、なにか恩返しをしなければ・・・・。


「いんや、タケルどんは起きてきただけでも偉いもんだぁ。うちの人はまんだ寝てると思うど。飲み過ぎっどいつものあーなんだ。」


あー、カムイ、凄い飲んでたもんな。


「じゃ、朝食作りますよ。」


「ほとんどこさえてあっがら、タケルどんは休んでてえー。」


「わかった。なら、取り皿でも準備しておくよ。」




「ごめん、収穫ゼロだったわ。」


土間にルルが入ってくる。


「ルルどんもおはよぅ。これまたルルどんも酒くせっ!そんな臭かっだら、獣は逃げるな。」


「え?ホントに!?だから、サファイア達も今日は近くに寄ってこなかったんだわ。ちょっと風呂に入ってくる!!」


ガラガラドン!!


木の扉が勢いよく閉まる。


その音でキクコが起きてしまい泣き出した。その声に触発されたカクシも遅れて泣きだす。


「うぉぉぉぉ、頭にィィィィィ、響くぅぅぅ。」


「すまんタケルどん。」


「いや、どちらかあやすよ。」


「酒臭いんだからタケルは無理。私があやすから、タケルは朝食作ってて!」


はいよ。俺も臭いんだな。後でシャワー浴びるか。


「キクコとカクシが泣いてる!」


クジタとシャインが居間の扉を開ける。


「うわっ!くっさ!何この臭い!」


あー、子供達よ。すまない。


「かーちゃん、タケルにーちゃん、換気していい?酒臭い!臭いがこもってる。僕も酔ったらどーすんだよ!」


もちろんですよクジタ。どーんと風通しをよくしてくれ。それにしてもよく『換気』なんて難しい単語を言えたな。


「おはよう。」


ディディが起きてきた。いつもと変わらない様子。


「おはようディディ。『二日酔い』は大丈夫か?」


「あぁ、『葡萄の復讐』のことか。問題ない。」


復讐って・・・・なら俺のこの頭痛は『麦の復讐』となるのか。


「お?皆起きているではないか?拙者も酒には強いと思っていましたが、皆さんも強いですな。」


レビルさんだ。全くもって通常運転のご様子。


「皆さん、おはようございます。」


「おはよーさん!!」


ビーとジーがいつもと変わらない感じで居間に現れた。


「おはよう。2人とも結構飲んでたのに、頭痛くないの?」


「頭・・・?ああ、問題ありません。少し体の動きは鈍いようですが、意識とはリンクしてないので。」


「いやー、お強いですなー!!!レプティリアンは。」


・・・・あとは、カムイだけだ。


「クジタ、とーちゃんを起こして来てぐれ。」


「えー、臭いもん。」


「ほれ!飯さ皆で食べッから早ぐ。」


「もー、わかったよー。」


そして、鼻を摘まんだクジタに引っ張られながらカムイも居間にやって来た。


うわっ!換気したのにカムイが来た瞬間に酒臭さが充満する。


「よし、皆さそろっだな。タケルどん、食べるべか。いただきます。」


今日は1人無傷のキヌコさんの掛け声で、朝食が始まった。


(シジミ)の味噌汁に煮魚、昨日の残りの筑前煮と鹿シチュー。


流石、キヌコさん。


二日酔いの体によく染み入る朝御飯だった。


スマホ、修理にだす

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