レプティリアンの他人敬称
「・・・・・『死を覚悟』した時ですか。皆さんのここに来た経緯を聞きます限り、確かに自分と同じですね。」
俺は包み隠さず、俺達がここに来る直前の出来事を話した。最初は驚いていたが、次第に何かを考え込むように、俺達一つ一つの案件を質問を交えながら聞き込んでいた。
「皆さんは種族も生まれた国も違う。しかし、『死を覚悟する』局面がそれぞれにある。鬼種族は何故か家族で移動した・・・・。そして、ドワーフ族は馬車ごと移動した・・・。何故だ?その時に、接していたものか?となると、家ごと移動するケースもあったはず。いや、手か。手で触れていたものか。そうすると納得出来なくはない。」
ブツブツ呟くB5。色々考えているようだ。
「しかし、共通点がない。それだけでは説明がつかない。もう少し詳しく聞かせていだけますか?えーと、タケル様。」
さま?サマ?様!?
「ちょっと!俺に様なんかつけなくてもいいですから。呼び捨てて下さいよ。」
「いえ、気軽に多種族の方を呼び捨てたとあっては、種族問題に当たります。どうか、タケル様で・・・・」
「いやいやいや、大丈夫!呼び捨てで!」
「それだけは出来ません。では・・・・タケル殿と。」
「ダメである!拙者と殿キャラが被ります故、認めませぬ。」
なんだよ、殿キャラって。知らんわ。
「じゃあ、『さん』とか『君』とかは?」
「とんでもございません。流石に『閣下』は無理ですが・・・そうですね、タケル卿はどうでしょうか。」
「いやいや、どこぞの貴族ですかその人は。」
「我はそう呼ばれていたから構わないが。」
「ではディディエン・ヴァンパイヤ・ジョエリックアンセーヌ卿とお呼び致しましょう。」
よく一発で覚えられたな。ディディの本名。
「クククククククッ、悪くない。悪くない。」
「では『タケル氏』ではいかがですか?」
やだな、なんだかヲタクっぽい。
俺はフルフル首を振る。
「あの、提案なんですけど。」
ハナが手を挙げる。
「『ミスター』や『ミス』っていうのはどうかしら?」
お!いいね!
「それでよろしいのですか?えっとミスタータケル。」
うーん、俺にミスター着けたら謎の霊媒氏みたいな感じだけど、様やら氏で呼ばれるよりはましか。
「それでお願いします。ミスターB5。」
「自分は呼び捨てでお願いします。レプティリアンは役職で呼ばれることはあっても、敬称をつけられるとこはありません。」
「わかった。じゃあ、B5はB5と呼びます。」
「ずるいな。我もそちらの方がよいな。」
「分かりました。ミスター.ディディエン・ヴァンパイヤ・ジョエリックアンセーヌと、お呼びします。」
あ、やっちまったなー。
「クククククククッ、我は『ミス』だ。そして愛称のディディでよい。」
「誠に失礼致しました!!ミス.ディディ!」
「気にするな。そこのタケルにも間違われたからな。我の魅力はニンゲンとレプティリアンには通じないのだろうから。クククククククッ。」
魅力ではなく、見た目だ。見た目も態度も通じないから、間違われるのだ。そこを自覚していただきたい。言えないけど。
「拙者も!拙者の事も呼んで下され!」
「えっと、ミスター.レビルで、よろしかったですか? 」
レビルさんの顔が、パァっと明るくなる。
「いいですな!急にこう、ステータスが上がったような気がしますぞ!」
何のステータスだよ。
全く話が進まない俺達だった。
敬称のみで終わる