更なるトカゲ
「助けていただき、感謝します。」
サファイアの口から救出されたトカゲは唾液でベトベトな体を手で拭っている。
いえ、すみません、うちの子の手が・・・いえ、口が早くてすみません。
「先輩、なんで出てきてしまったんですか!?これじゃあミーが犠牲になった意味がないじゃないですか!」
「G52の為にこの御二人は仲違いをしてしまったことに、自分は許せません。それにG52、君の態度も許せません。だから出てきました。」
もう一匹・・・・もう一人いたのか。
「そこの御二人、どうかその怒りを納めて下さい。」
ペコッと頭を下げるトカゲ。
「自分がG52の代わりに知っている事をお話します。ですから失礼な態度をとってしまったこと、上司として謝罪します。そもそも本当にG52は、ほとんどなにも知らないのです。」
端でコソコソとレビルさんとディディが話している。
「拙者らの『北風と太陽大作戦』は成功だったのですかな?」
「クククククククッ、終わりよければ全てよし。」
『北風と太陽』だったのか。何が北風で何が太陽だったのかよくわからないまま終わってしまった。そして、助言するとすればディディの出番とレビルさんの出番は逆の方が良かったと思うけど。
そんな事より、このトカゲから話を聞かなければ。
「まずはお名前を伺ってもよいでしょうか?」
「自分の名はマークB5と言います。B5と呼んでください。」
「では、B5。早速、質問をしてもいいでしょうか。」
「どうぞ。」
「俺達が実験動物とはどういうことでしょうか?」
「そうG52が言ったんですね。正確に申しますと、自分にも分かりません。分かっているのはここでアクトゥリアンが何かの実験をしているということ。生命体全てが『動物』ということであれば、貴方達も『実験動物』ということになります。」
「しかし、こやつは拙者らの事を『下等生物』と呼び捨てたぞ。」
「大変、申し訳ありません。このG52はその・・・学力と知性と配慮と常識と想像力にかけているところが多々ありますので、ご容赦下さい。」
ほぼ、ダメじゃないか。大丈夫か?レプティリアン。
「クククククククッ、人を見た目や身分や環境や種族でしか判断できない馬鹿ということか。」
「こっこの!ミーを馬鹿に・・・・」
「仰る通りです。申し訳ありません。そのため、不快な思いをさせてしまったことを心から今一度お詫びいたします。」
G52の声を遮るようにB5は話を続けた。
「アクトゥリアンが何かの実験をしているところまではわかったのですが、その『何か』が分からなくて、自分が調査するように命を受けたのです。」
B5の話を俺達は聞き逃さぬよう黙って聞く。
「そして、調査中にエンジントラブルがあり墜落しました。そこはG52の言っていることは合っています。ただ、この辺りは上空から何度も調べたところだったのですが、海しかありませんでした。だから、自分は海に水上着陸するつもりでいたのです。」
「しかし、いざ着陸体制になったとき、何故かジルバートのコントロールが効かなくなりました。水上に叩きつけられて、機体は粉々になる予定でした。」
・・・・・まさか、またこの流れなのか。
「死を覚悟した時、急に目の前に木が現れたのです。海のど真ん中にいたのにですよ?幸いにも木がクッション代わりとなり助かりましたが、本当に九死に一生を得ました。」
間違いない。このレプティリアンという2人も俺達と同じ『死を避けた』者だ。
「これが、自分の知る事全てです。ご理解頂けましたでしょうか?」
俺達は顔を見合わす。
「B5、俺の名前はタケルって言います。種族は『ニンゲン』です。」
「はい、それは見れば分かります。」
「拙者はレビル。元、風の魔王。種族は魔神族である。」
知らなかった。
「『魔神族』・・・聞いたことがありません。いや、待てよ・・・・。いえ、続けて下さい。」
「私はハナ。アンドロイド。」
「機械なのですか?気がつきませんでした。」
「我が名はディディエン・ヴァンパイヤ・ジョエリックアンセーヌ。吸血鬼である。」
「吸血鬼、何故またこんな辺境惑星の民族が・・・いぇすみません。」
「他にもドワーフ、鬼、エルフという種族が俺達の仲間にいます。今は留守番してもらってますけど。」
「なっ、そんなに異種族がいるのですか?まれに1つの惑星に数種の種族が生まれることはあっても、こんなに揃うことは今まで例にないですよ。」
もったいぶる必要はない。俺は一息吸い、一気に告げる。
「俺達もB5と同じように、『死を覚悟した』瞬間に、何故かここにいたんですよ。」
トカゲを2匹とするか、2人とするか。