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摩天楼の令嬢  作者: みわみわ
プロローグ
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プロローグ

初めまして!

初投稿でドキドキしております。

この話は、女神を宿したある令嬢の一代記です。

よろしくお願いいたします。



今日ついに、念願のライブに行けることになった!

ファンクラブに入ってすぐだと良い席がとれると聞いていたのに、どういう理由(わけ)か、チケット自体が取れない状態が続いた。

本来なら、クレームつけても良かったのかもしれない。でも小心者ゆえに結局5回応募して、ようやくプレミアム席をゲットした!

目の前で、あの姉宮松雲(あねみやしょううん)の歌う姿が観られる!

ライブの前日は、興奮して眠れなかった。

とはいっても一般会社の事務員である私は、眠気を抑え、気合いを入れて通常の時間に出勤し、ノーミスを心掛けながら業務を行い、定時後まで突っ走った。そして、化粧直しを手早く終え、会社をあとにして、急ぎ足で駅へと向かう。

ライブ会場のある最寄り駅は、現在新しいビルの建設ラッシュで、時間的に仕事を終えた背の高い重機が、定位置に戻る最中のようだった。ここは、海沿いでもあるので、風がとにかく強い。私は、風を切るように走っ………、……、…





よーっし、会場に着い…た?


「アイラちゃんが目を覚ましましたよ!良かったですね!」


「アイラ、私のアイラっ!」


私は…相生愛(そうじょうあい)だけれど、アイラってわたし?


わたしが目を覚ましたのに気付いたのは、モルガン公爵である父と友人のコナー医師だった。

襟足より長めに伸ばした茶色の髪をオールバックにしていて、優しげな水色の瞳は今もわたしを見つめ、濡れた前髪をそっと右手で払っていた。そんな彼の斜め後ろには、泣きすぎて目を腫らしきった母と、母からの連絡で慌てて屋敷に帰宅した父が、母の後ろで心配そうに立ち尽くしていた。


わたしは生まれた時から身体が弱く、ずっと寝たきりで今日発作を起こせば、命も危うかったそうだ。


「どういうことだ?まるで"別人のよう"だ…」


コナー医師が小さな声で呟いたのが聞こえた。何か思いつめた表情(かお)を一瞬してから、すぐにわたしを見つめ直し、大丈夫だよと声をかけてくれた。

わたしはその声に安心して、再び瞳を閉じた。






生死の境を彷徨い前世を思い出したわたし…アイラ。

前世はとある国で事務員として会社で働いていた。自分の家族構成などはあまり思い出せないが、国民有料テレビチャンネルしか観られない地方の出身で、好きな番組は大河ドラマだった。またここもうる覚えだけれど、何かのキッカケで都会に出て、一人暮らしをしながら奨学金で大学を出た後、無事就職をした。それからは働いて、テレビを観て、寝て…生活を送っていたのだけれど、たまたまテレビで観た一人のアーティストに釘付けになった。

彼は新人発掘の音楽番組に出ていた。

(なんて切ない…)

憂いと哀を絡めたような胸を締め付ける歌声で、おそらく会いたくても会えない想い人に、幻でも抱きしめようともがく激情を押さえに押さえて歌いあげていた。

私は彼、姉宮松雲(あねみやしょううん)に、惹かれてしまった。見た目は短く刈られた黒髪にちょっと厳つい感じの風貌で、身体はかなり高めでガッシリとしていた。会社にも大学のサークルにもいなかったタイプだった。朴訥としていて、司会の質問にもあまり上手く答えてはいなかった。


会いたかった…ただそれだけだったのに…



「アイラ様、お加減はいかがでしょうか?」


メイドのメイプルが扉をノックした後、声を掛けてきた。わたしは部屋の中へ入るよう即返事をした。メイプルはいつも部屋に入る時、素敵なお花の入った花瓶を持って来てくれる。今日は白いデイジーが活けられていた。彼女はサイドテーブルの上にそっと置く。


「あなたには、しんぱいをかけたわね。コナーせんせいは、もうだいじょうぶとおっしゃっていたわ。あんしんして?」


そう話して、ベッドから起き上がろうとしたら、長い病床生活で身体に力が入らない。ベッドサイドに素早く近寄ったメイプルは、サッとわたしの背中に手を入れて座る体勢になるよう、手助けしてくれた。

わたしの専属として、物心ついた頃から支えてくれていた彼女を改めて見直す。彼女のピンク色の瞳には薄っすらと涙が浮かんでいたが、口元は嬉しさを表すように綻んでいた。



この事より、筋力をつける必要性を痛感した父は、わたしにリハビリするよう告げた。このリハビリも任されたコナー医師は、わざわざ開業している医院を臨時休業してまでお越しくださった。


「い、痛っ!うあ、ひっ!」


思った以上に身体に力が入らない。足の裏が地に着く度に痛みが伴う。こんな風な状態がかなりの月日続いた。コナー医師は立つことも儘ならぬわたしを根気よく労わってくださった。そして、さらに月日は流れ、7歳から続いたリハビリは、12歳でようやく終了したのだった。






前世のライブ会場や開発の話等は、もちろんフィクションです。



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