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序章:不本意すぎる始まり方。#2

プロローグ





「なめんなファンタジーーーー!」

 渾身の叫びである。もう一度言おう。なめんなファンタジー!

「気持ちはわかります。取り敢えずは話を聞いていただいてから身の振り方を考えていただいたほうが良いかと思いますが」

「・・・っはあ。わかりました」

「状況合わせて飲み込んでもらえますと楽になると思いますので」

 そう前置きして目の前の人物?は事務的に続けた。

「私、魂魄管理責任者で¶?仝ΔΛЁと申します」

「すみません、聞き取れませんでした。もう一度」

 なんだかよくわからない発音が飛び出した。これだって生きていた世界で聞いた音を多分無理やり当てはめているだけなので意味としては明後日の方向なんだろう。

「あー・・・空間域の管轄違いなのでおそらく固有名詞については伏せられてしまうみたいですね。多分意味のない雑音、虫の羽音とかそんな感じの音になってしまうと思います」

「そうですね、そう聞こえました」

「では、形式上'刈り手'と名乗りましょうか。いわゆる死神の概念はご存知ですか?」

 刈り手さんはそう問いかけてきた。好悪感もなくあくまで事務的に。

「あれですか、確実に死を与えるとか害意をもって寄ってくるアレじゃなく、いわゆる定命のモノの満期を迎えた魂とかを回収する輪廻をつかさどるてきな」

「そのソレです。そこの概念をしっかり持っている方は珍しいですが、ご存知なら話は省略できます。私はそこの総管理者です。死神として背名の上限と下限を管理維持する者です」

「でその管理人さんが、話を聞けば管轄違いだそうですけどどうして僕のところへ?お役所が違うのでは?」

 管理者、つまりは中間管理職かな?多分間違いなさそう。この感情を押し殺した雰囲気はことを荒立てず、淡々と事務的に役職をこなすうちの事務方にそっくりだ。いろいろ毒や闇を抱えてそう。

「まぁいわゆる神っては奴はですね、そういったことに造詣の深いサネヤマさんには言うまでもないと思うのですが・・・」

 ああつまり

「大雑把に過ぎる・・・と」

「そうなんです」

 お互いに苦労するなぁ。そういったしがらみやあれやこれやは管理職や下っ端が一番身に染みている。お互いヤレヤレでトホホな状況で顔を突き合わせた。こちらから見る刈り手さんの顔はそりゃまあ可愛い系美人なのだけど、心労のせいか眉を寄せ半ば泣き笑い状態だ。多分僕も同じだろう。ツライ。

「人が溢れたから気軽に天変地異なんか起こさないでほしい。やるなら連絡周知とロールプレイイングの上状況の予想再現を試行してからでしょうに」

「あー、、わかります。どこも世知辛いですよねえ」

「お判りいただけますか」

「心中お察しいたしますよ。他人事じゃない」

 二人してハァーーーーーー・・・と毒抜きをするように息をついた後説明を続けてもらった。

「で。ですね話を戻しますとそういったあれやこれやの結果査定外の死亡事故や災害、事件が頻発してるのは大変申し訳なく。今回サネヤマ様はそれに遭ってしまったということなんです」

「なんかもう自責されると僕の心中も掻き毟られるようでしんどいので建設的に行きましょう!」

「ありがとうございます。それで選択肢が3つありまして。1つ私の管理下での世界に新しく生命として生まれる。2つ。同じく定命でかられるべき人物の魂に同居、若しくは融合。3つ。このまま魂を漂白し世界のエネルギーの一環として連環してしまう。というのがあります」

「3つ目以外は調整ミスになりそうですけど大丈夫なんですか?」

「問題ありません。新しく生まれる命については定められてはいますが魂の定着はまだですので差し替えになります。メリットデメリットとしては所謂先祖返り状態での生まれになりますので、天才や鬼才といった麒麟児になる場合が多く、状況によっては記憶の保持したまま新生児になります。出産時も転生させる手前各自に生まれるように母体に加護が与えれ、生まれもある程度指定ます。デメリットとしては異端になりやすくやもすれば迫害対象になりやすいですね」

「なるほど、嚢中の錐ですか」

「然様です」

「2つ目は何でしょうか」

「2つ目はある程度成人している方に事故や病で一度生死の境を歩むことが定められております。その際魂の輪郭が薄まった状態でサネヤマ様の魂を混入させる形となります。メリットは成人していますのである程度の生活環境が整っていること、必然医者などの処置が受けられる地位であること、が挙げられます。勝馬に乗った状態でスタートですね。ただしデメリットが2つ。一つは魂が混在した場合どのような人格になるかは不明である。最悪二重人格で同居もあり得ます。もう一つが友人知人、社会地位が確立しているため予定調和な人生になります」

「3つ目はなんとなくわかりますので結構です」

「まあ、そうですね。ここまで把握して想像できないことはないと思うので予想通りとだけ」

 つまり何時ものヤツということか。うちの親類縁者は大学時代に飛行機事故ですでにいない。悲しむ人間は最小だからまあ身の振り方というものに頓着はないかな。この状況だ楽しんでいけそうな方向で決めてしまっていいのかもしれない。ただ一つだけ確認したいことがある。

「あの、一つ今回のこと以外で伺ってもいいです?」

「もちろん。今回は例によって例外ですし蘇生以外ならお答えできますよ」

 なら聞こう

「うちの両親、どうなりましたか?」

「――――」

 なぜか面食らった顔をしていらっしゃる。そんな変なことじゃないと思うのだけど、聞いたら駄目なやつかな?

「失礼。正直それを聞かれるとは思いませんでした」

「そうなのかな。でも突然いなくなったっていうのには変わりないので」

「解りました、しばらくお待ちください」

 そう言って刈り手さんは目を閉じてかすかに口を動かし始めた。時折「そちらが悪い」だの「そういうのなら私はこの役職降りる」だの闇深い単語が聞こえてくる。管理職というのは誰もなりたがらない役職なのはどこも同じらしい。仕事と責任は倍でも給料は1割増していどだしなぁ

「お待たせしました。詳細確認できましたのでお伝え出来ます。ただ魂自体次のステージに回っておりますのでお会いすることはできません。担当の刈り手の状況説明とメッセージを預かっているそうです」

「メッセージですか・・・」

「はい。今回の提案がなければ管轄違いで目にすることなく消滅していたでしょう、不手際申し訳ありません」

「ああいやいいんですよ、あなたが悪いわけじゃないんですから」

「久々にやさしい言葉をいただきました。ではメッセージですが概要でよろしいですか?」

「お願いします」

「では、前触れもなく、何の言葉も残せず社会に出る前に放り出してしまうこと、悲しい思いをさせてしまうこと、そしてなんだかんだ言いながら楽しい家族であり愛していたことその旨を伝えてほしいと」

「そう・・・ですか。この僕から見ても仲のいい夫婦でしたし想像つきます。そうですか・・・」

 半ば予想通りのメッセージで内容自体に何の感慨もなかったけど、ただあの二人らしいなあっていう事ともう出てこないであろうと考えていた二人の痕跡を知ることができて満足だった。


 一頻り浸った後話を続けようと刈り手さんに声をかけた。

「申し訳ありません、お待たせしました」

「問題ございません。それにここは時間の概念がありません。主観時間があっても客観時間からは外れておりますので」

「ありがとうございます。では僕の結論をだします」

 自分の意思だ。しっかりと大きな声で、胸を張って頼もう。

 そんな心内を察したのか刈り手さんはしっかりこちらを見据えて居住まいをただした。

「伺います」

「僕が願う魂の条件、それは――――」

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