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序章:不本意すぎる始まり方。

プロローグ






 僕こと実山 稔(さねやま みのる)は俗にいうトラック野郎である。

 一人称単数が僕と表される通り一般のトラック野郎のテンプレートイメージとは違う、元文系大学中退の長距離運ちゃんだ。

ナビやリアシートに交代運転手がいないことでお察しの通り所属の会社はとても黒い。福利厚生とか大丈夫なんかね?この会社が摘発され営業自粛、縮小、破綻も連想ゲームで容易に思い浮かぶためゼヒ事務には頑張っていただきたい。第二新卒なんて言う救済措置からは程遠い救済されない側(三十路前)からすれば死活問題なのだ。この会社のことだ、退職都合が個人都合、会社都合問わず失業保険が適用されるとは思えない。明細では天引きされているのだけど。


 ともあれ「今日も一日ご安全に!」の御唱和ソロの後、法定速度・積載上限ぶっちぎりで国道をかっ飛ばした現在26時(午前2時)。やっと納品が終わり現地積み込みを横目に休息用貸し部屋でコーヒーの青缶(スチールからアルミに変わった時に味が落ちた気がする)片手に鞄からハードカバーや、ジュブナイル、ライトノベルを読み進める。

テンプレ(死亡事故)から異世界転生かあ・・・」

 誰もいないので独り言は容赦いただける現環境万歳。飲む・買う・打つで娯楽を得る人種ではないので同僚の方々は誘いに来ることもない。

「よくよく考えたら主人公転生するたびにスピード違反切符ドライバーが何人死亡事故の加害者になってるんだよな。何人のドライバーが犯罪者になったのやら」

 今日も新しいラノベ、ネット小説、など読み漁り、そういった導入を複数確認し様式美を確認し自己満足した後、正午出発に備えるため6時に睡眠をとり始めた。


 午前9時。起床のお時間である。実質3時間の睡眠。時計の短針を確認しつつやるせない現状を確認し

「24時間働けますかー?ビジネスマーン、ビジネスマーン」

と平成初期の栄養ドリンクのCMソングを口遊む。こんな歌詞が日本全国区で昼夜を問わず放送される国ニッポン。大丈夫かこの国と思わず心配になるが、基本日本人は仕事ができることが、最上位の喜びとして見出してる人種のため多分大丈夫なんだろう。僕もそうだ。ジャパニーズビジネスマン万歳!


「じゃあこちらが出荷伝票と突き合わせ表です。確認でき次第お願いします。」

「A-6までと、2、4,6,8,10...17、と。ハイでは承りました。」

事務員のお姉さま+20歳くらいの女性から伝票を受け取り、いつも通りご安全唱和(お一人様)を一通りこなし早速出発だ。


「晴れかあ・・・いっそ曇ってたらなぁ。雨が降らない程度で。」

ピーカン晴れだと太陽光がまぶしくて逆に視界の確保に支障が出やすいのであんまり歓迎できない。

 途中何故だかわからないし、体に良くないものてんこ盛りのはずだが、異様に美味しいサービスエリアで山菜蕎麦とかやくおにぎりをとり、高速から国道、国道から渋滞を避けるため川沿いの裏道を走る。念のため時速30kmでの徐行だが。止まれない徐行は徐行運転ではないというのは無しだ。


 で、皆様お待ちかねの瞬間である。ちなみに僕は待ってもないし希望もしてない。むしろゴールドを目指す勢いだ。でもお約束の神様からは逃げられない。


「徐行でよかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

飛び出してきた人影に急ハンドルを切りつつ華麗な回避!

 計6輪3対の車輪がアスファルトをひっかく音を聞きつつ縁石に乗り上げる。

 その瞬間にサイドミラーに目をやるとへたり込む人影を発見。どうやら新たな主人公は誕生しないようだブラボー!

「ィィィィヤッホーーーゥ」

どこかの髭配管工のカートのような声をテンション爆上げ状態で叫んだ後、綺麗な、それは綺麗なバレルロールを披露しながら川(工業用の運搬船が通るような汚い運河だ)へダイブ。ニュートン先生も「仕方い、引力だもの」とおっしゃるに違いない。そして総重量超過2tは芸術的なまでに水面に没した。僕の意識もゴグリっとくぐもりつつも高い音を聞いたあと没した。



 そして目を覚まし、身だしなみを確認。靴は1か月前に購入したスニーカー、社名の刺繍が入ったつなぎと合わせた帽子。胸ポケットにはメモの書き取りとボールペン。いつもの装備を確認すると立ち上がる。で目の前の人物。人物?に尋ねる。

「あの、なんで逆様なんですか?」

「ここは天井も、地面も、側面も、辺という概念がない世界よ。思考すれば体勢は自然と置き換わるわります」

「あ、ご丁寧にありがとうございます」

「いえ。どういたしまして」

 ちょっと念じてみた。すると顔御中心にぐりんと視界が回転し先ほどの人物(と仮定しておこう。嫌な予感しかしないけども)の正対する。現状確認がしたい野で聞いてみようか。

「あのですね、これはあれですか?」

「多分そのあれですよ。珍しいパターンなんですが」

その人物はそうやって眉をひそめた。なんだそりゃ。

「こほん、ではいつものを」

「あっはい」

「ここはあなたの世界と異界をつなぐ神域です。あなたは想定外の事故により無事死亡し、その救済としてここに魂を召喚しました」

 あんまりな言い方だった。何百回と繰り返したのだろう。いや何千回だろうか。やけにスレて、威厳もありがたみも7割offの情緒で言い放ったその一言を瞬時に理解した。そして、叫んだ。

「なめんなファンタジーーーーーーーーーーーーーーーー!」






 

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