最北の村へ
「まさかヴェストレームさんが王子様だったなんてねー」
現在ミュウを含めたリナ達一行はオキタのメモに記された場所に向かう為に北の森に入っていた。
オキタのメモに書いていた場所はこの大陸の最北端、ミュウが言うには一般には知られていない小さな村だと言う事だった。
アレントを出発してから半月程で北の森に来ていた4人は危険な森の中にいるにも拘らず談笑しながら森を進んでいた。
「でもミュウさんが一緒に来てくれて助かりました。ボク達だけでしたらこの森を進むのは難しかったかもしれません」
「そうでもないだろ。ワタシの見たところリナは辺りの地形の事を考えなかったら魔物の相手をするのは問題なさそうだしティアとハイネだって相手を間違えなければこの森を抜ける事なら出来るはずだし」
「さっすがミュウさんわかってるー」
「ん、私ももっと強くなる」
森に入って一日が過ぎていたのだが、ミュウの気配察知の能力が高く危険な魔物との遭遇は避ける事が出来、さらに現れる魔物もリナ達の出る間もなくミュウが瞬殺していたのだった。
「このペースならあと一日も歩いたら村に着くはずだよ」
「えーまたこの森で野宿かー」
そんな話をしている所でミュウの探知範囲に魔物の反応があった。
「っと、また来たね。これは…ワイバーンか、面倒だな」
「どうかしたの?」
「いや、ワタシの得物はこれだろ?見えてた頃は問題なかったんだけど、こうなってからどうも飛んでる敵と戦うのは難しいんだよ」
ミュウは手に持った短剣を振りながらそう言う。
ミュウの戦闘は相手の気配を探知しながらの戦いなのだが、それには相手の呼吸や動く物音それに地面の揺れを感じ取って戦っているのだが、空を飛んでいる相手はいくつかの情報が制限されている状態での戦いになるのでミュウは飛んでいる敵と戦う事を苦手としていた。
「そうだな。リナ、任せられるか?」
「ボクですか?」
リナは前に暴走してから本格的に戦う事は今までなかった。ミュウやティア達との特訓では魔法を使っていたのだが、実戦は久しぶりの事だった。
「いつまでも戦わずにはいられないだろ?それにお前は確認しておかないと駄目だろう?」
「……わかりました」
「「??」」
2人の会話の意味が分からずにティアとハイネは首を傾げるが、リナは覚悟を決めてレーヴァテインを構える。
(そうです。この目の状態で戦えるか確認しないといけませんし、なにより本気で魔法を使って戦えるのかも確認しないといけません)
そうこうしている内に上空から大型の青白いワイバーンがリナ達に向かって飛んで来ているのが見えてくる。
「なに?あのワイバーンすごいでかいんだけど…」
「あれはブルーワイバーンの変異体だな。気をつけろリナあのワイバーンは蒼炎のブレスを吐くぞ」
ミュウのアドバイスを受けてリナは頷いた。
(まずは下級魔法で相手のブレスを牽制して隙が出来たら威力の高い魔法で……)
と、考えてリナが魔法の詠唱に入ろうとしたときに違和感を感じた。
「もしかして……」
リナは杖の先にブルーワイバーンを捉えると魔法を発動させた。
「『アイスアロー!!』」
リナが魔法名を唱えると、氷の矢が形成されてブルーワイバーンに向かって通常ではありえない速度で飛んでいく。
ブルーワイバーンは氷の矢を何とか回避するとブレスを吐く動作に入るのだが、
「『氷精よ、大気の水を我の力に、ブリザードカタストロフィ!!』」
リナの魔法が先に発動しブルーワイバーンの体を貫いた。
胸を貫かれたブルーワイバーンは絶命して地面に落下していった。
「お見事、まさか無詠唱で魔法を使えるなんてな」
ミュウは拍手しながらリナに近づきティアとハイネは流石リナと言って盛り上がっていた。
「ボクも無詠唱で使えるとは思いませんでした。中級の魔法も詠唱のほとんどを破棄できましたし」
「なるほど、もしかして今ワタシと特訓している時とは別の戦い方をしなかったか?」
「はい。この杖で戦う事がボクの本来の戦闘スタイルです」
リナは暴走してから特訓や練習の時にはレーヴァテインは使わないようにしていた、万が一暴走してもレーヴァテインでなければ魔法の威力も落ちると考えての事だった。
「なるほどな、本来のスタイルになって初めて自分の成長に気づいた訳か。……ま、そういった奴がいない訳でもないし問題ないんだが、これからは特訓も本来のスタイルでやった方がいいな。自分の実力がわかってないとその力は自分や仲間に向かう可能性がある事をお前はもう身をもってわかってるはずだ」
「……はい」
「そう落ち込むな。さっきの戦いは見事だったんだから胸を張っときな」
ミュウは豪快に笑ってリナの肩を叩いて行った。
(ボクの実力ですか……アルカさんは力を封印を解いていく事で記憶も取り戻せると言っていましたが、本来のボクの力ってなんなのでしょうか……)
リナは見えない自分の力に不安を感じていたのだが、それを言い出す勇気はなく心の奥底にしまい込んだのだった。
その日の夜、明日の昼には着く予定である最北の村についてミュウから話を聞いていた。
「って言ってもな。ホントに小さな村で大陸から出る船の港の役割くらいしかない村だぞ?」
「でもでもこんなに危険な場所にある村なんだからすごいところなんじゃないの?」
「そりゃ危険な森だけど、この森のギルドでのランクはB~Aランク、上位のBランクが何人かいれば村に行くことは可能なんだぞ?」
「それってすごく危険な事なんじゃ……」
「なんだ?三人とももうわかってると思ってたのに、確かに冒険者ギルドは所属人数の多い大きな組織だが、高位の実力者が全員所属しているわけじゃないんだぞ?」
「そ、それは訊いたことあるけど」
「ワタシだって冒険者ギルドでのランクは無いんだから」
「え?そうなの!?」
ミュウはティアの反応に大きくため息をついた。
「まあわざわざこんな場所に港以外の役割を持った村なんて作る意味がないんだよ」
「そっか残念……」
面白い物が見たかったティアと珍しい食べ物に期待していたハイネが肩を落としているとミュウが思い出したかの様に言う。
「そうだ忘れてた。最北の村では奴隷も扱ってるから一応注意しときなよ」
「「「え?」」」
突然の発言に声をそろえる3人だった。
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