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アレントへの帰還と不穏な情報

 リナ達を乗せた馬車がアレントに向かう道中、あともう少しで到着するという中リナは高熱を出していた。先日一度起きた時には問題なかったのだが、そのまま眠り続けて数日後残り2日で到着というタイミングで苦しんでいるリナをティアが発見したのだった。

 すでにゼアンの部下が早馬をアレントに先に出発させて治療の用意を手配し残りの道中を急いでいる所だった。



「ゼアンさんまだ着かないの?」

「もう少しで着きます。昼を過ぎる頃には到着しています。すでに治療の準備は出来ているはずですので今はリナ君に付いていてあげてください」




 そんな一行がアレントに到着したのは昼前と予定よりも少し早い時間だった。

 至急リナを病院に連れて行こうとしたのだが、アレントで待っていたのは冒険者ギルドの職員だった。職員はリナの治療は病院ではなく冒険者ギルドで行う事をゼアンに伝えると一行はすぐに冒険者ギルドに向かった。



 冒険者ギルドに到着するとメイルが皆を迎え入れると、冒険者ギルドの中でも最奥に位置する一部の職員のみしか立ち入りを許されていない場所に案内された。



「こちらです。すぐに治癒師が参りますのでお待ちください」



 メイルはそう言って部屋を出ていった。現在部屋には寝込んでいるリナとティアにハイネ、ゼアンとその部下の護衛が2名が滞在していた。部屋にいる護衛二名は二人とも女性で他にいる男性の護衛は女性であるリナに配慮し冒険者ギルドの外に待機していた。

 苦しそうにしているリナの汗をティアが拭っているとすぐにメイルと共にヴェストレームと治癒師と思われる白衣を着たショートウェーブで金髪の女性とハイネと同じ位小柄の長髪で銀髪、兎耳をピンと立てた女の子が部屋に入ってきた。

 少女は目が見えないようで、メイルに手を引かれる形で入室してきていた。



「お待たせしました。早速ですがシャロンさんお願いします」



 メイルがそう言うと白衣の女性シャロンがリナの頭に手を当てる。すると、シャロンの手から緑色の魔力が溢れるとリナの体を包み込んだ。

 しばらくするとシャロンは手を放した、すると先程まで苦しそうにしていたリナの表情が次第に良くなっていった。

 完全に回復したように見えるリナを見てティアはシャロンに質問した。



「リナちゃんの病気は治ったんですか?」

「はい大丈夫ですよ。リナ様は病気では無く体が酷く疲労していたみたいです。今は私が疲労の回復を行いましたのですぐに目を覚ますはずです」

「そうですか。ありがとうございます」

「いえいえ、これが私の仕事ですから」

「シャロンさん僕からも一つ聞いてもいいかな?」



 小さく手を上げながらゼアンがそう質問を投げかけた。



「リナ君の体は疲労が原因で悪くなっていたと言ってたけど、本当に疲労だけであんな症状が出るのかい?」

「はい。リナ様の体の疲労は一般的な疲労とは違い魔力の過度の使用による疲労になります。本来ならあのような症状が出る前に魔力切れを起こしてしまうだけなのですが、それを超えてしまった場合あのような症状になることがあるのです」

「なるほど・・・」

「私には何故このような状態になるほど魔力を使えたのかは分かりませんが、今後はここまで魔力を使う事はやめておいた方がいいでしょう。この治療が出来るのはこの大陸では数名しかいないはずですので」



 シャロンがそう笑顔でゼアンに返していると、眠っていたリナに動きがあった。



「んんっ」

「リナちゃん!!」

「ティアさん?あれ・・・?」



 リナは状態を起こすと目をこすりながら首を傾げていた。その様子を見たティアは慌てて懐に入れていたリナの眼鏡を手渡した。



「ありがとうございます」



 眼鏡を受け取ったリナは見慣れない部屋と見知らぬ人の存在に少し驚きの表情を見せた。



「ここは?」

「アレントの冒険者ギルドだよ。熱が出てたリナちゃんをシャロンさんが診てくれたんだよ」



 ティアの紹介と共にシャロンが頭を下げる。リナも同じように頭を下げて挨拶を済ますと、念の為もう一度シャロンに体の状態を診てもらった。



「体調も回復しているみたいですし、特に問題はありませんね。念の為.今日一日は安静にしてください」

「わかりました。ありがとうございます」

「私はこの冒険者ギルドにいますので何かありましたらお呼びください」



 そう言ってシャロンが立ち上がると、兎耳の少女に頭を下げてから部屋から出ていった。



「また皆に迷惑をかけたみたいですね」

「そんなことないよ。リナちゃんにはいつも助けられてるんだから、これくらい問題ないよ」

「問題ない」

「ありがとうございます」



 リナは仲間の2人にお礼を言うと、奥に控えていたゼアンやメイル達にもお礼を言った。



「皆様にもご迷惑をおかけしました」

「いえ、リナ様が無事ならなんの問題もありません」

「メイルさん・・・ありがとうございます」



 そんなやり取りをしていると、兎耳の少女が分かりやすく咳ばらいをした。



「あー、無事回復して何よりだ」



 リナ達の視線が少女に集まるとティアがメイルに質問した。



「ねえ、この子は誰なの?」

「えっと、この方は」

「いい、自己紹介くらい自分でやるよ。初めましてだな、ワタシはこの冒険者ギルドのギルドマスターをしているミュウ・ラストだ」

「ギ、ギルドマスター?え?君が?こんなに小さいのに?」

「小さい?」



 ティアが驚いてそう言うと、ミュウは体を震わせて怒気を溢れさせていた。慌ててメイルがティア達の元に駆け寄っていき3人に耳打ちした。



「ミュウ様は容姿が子供に見えてしまう事を気にしておられますので、どうかそこには触れないようにお願いします」

「「「は、はい」」」

「それとミュウ様は古傷で盲目になっておられますが、魔力の扱いに長けていてこの部屋の中くらいでしたら全て手に取るように把握していますので特にティア様は気を付けてくださいね」

「は、はい」



 メイルは多少なりともティアの性格を理解しているので、ティアの好みであろう姿をしているミュウに対して万が一何かしでかすと面倒な事になるのは目に見ているので真剣な声色で注意をした。

 メイルの話を聞いたティアがすぐミュウに謝罪すると、怒気も薄れてその場は落ち着きを取り戻した。



「早速ワタシがここに来た理由を話したいんだが、すまないがゼアンの護衛の2人は席を外してくれるか?」

「・・・わかりました。二人とも外で待っていてくれ」

「「はっ」」



 護衛の2人が部屋から出ていき中にはリナ達3人とミュウ、ヴェストレーム、メイルにゼアンの7人だけになっていた。

 なんの話があるのかと3人が緊張していると、ミュウが話を切り出した。



「まずはそうだな、まずこれをはっきりさせておきたいんだが、シェスティアだったか?お前本当は人族じゃないだろう?」

「えっ!?」

「そんなに慌てなくてもいい。その首飾りで姿を変えてるんだろ?」

「どうしてそれを?」



 ティアがそう聞くと、ミュウは胸元からティアのネックレスに似た物を取り出した。



「あっ!それって!」

「お前と同じ物だろ?まあこれにはもう力は残ってないんだがな」

「どうしてそれを?」

「まあ一言でいうと、ワタシもエルフだからな。まあ兎族、獣人とのハーフになるんだが、昔これと同じ首飾りをソフィアと手に入れてな、だからこの首飾りの力も知ってる。ソフィアって名前は聞いた事あるだろ?」

「お、おばあ様を知ってるの?」

「ああ知ってるよ。古い友人だからな。そうかシェスティアはソフィアの孫だったのか。ははっ、あいつが『おばあ様』ねぇ」



 ミュウはいたずらっ子のような笑顔をしていた。ティアはまさかこんなところにソフィアの知り合いがいるとは思っていなかったので驚いていたのだが、それよりもメイル達が自分の事を知ってしまった事を気にしていた。

 ティアが申し訳なさそうにメイルを見ているとメイルは笑顔で言う。



「ティア様、事情はわかっていますので気にしないでください」



 メイル達は事前にティアの種族の事を可能性の話としてミュウに聞かされていたので驚きはなかった。さらにエルフと言う種族の事もミュウを通して詳しく知っていた為、ティアがそのことを隠していたことも理解出来ていたので不快な感情はなかった。

 ティアは部屋にいる者達が自分の種族の事をわかってくれている事を理解しミュウの頼みもあったのでネックレスを外して元の姿に戻った。



「おお、やっぱり似てるな」



 ミュウは元の姿に戻ったティアの姿を把握すると嬉しそうにそう言い。初めてティアの本来の姿を視た残りの3人は人族の姿の時よりも美しく神秘的な存在感に思わず見入ってしまっていた。



「それでミュウさん私がエルフっていう事を確認したかったみたいですけど、何かお話に関係あるんですか?」

「ああ、特にシェスティアに聞きたいんだがリナとハイネリアにも聞きたい。お前達今までに変な仮面をつけた者達を見た事は無いか?怪しい黒のローブの者達でもいいんだが。エルトレームに来たりはしていないか?」



 ミュウの言葉にリナとティアはエルトレームに現れた者達の事を思いだしていた。



「私が里を出る前にそんな人に里を襲われた事があります。その時はリナちゃんの協力もあって撃退する事は出来ましたけど」

「本当か?そいつがどんな奴なのか、何が目的なのか、何かわかる事はないか?」

「ずっと仮面をつけていたからどんな人かはわからなかったな。リナちゃんは何か覚えてる?」

「そうですね。あの人は非常に強力な魔法を無詠唱で使っていましたのでかなりの実力者なのは間違いないのですが、分かることと言えば男の人という事とエルトレームには何かを取りに来たみたいな事を言っていたと言う事くらいですね」

「物を取りに?それはなんだ?」

「いえそこまでは・・」

「そうか」



 そこまで話していたところでハイネが割って入った。



「私も黒のローブと変な仮面は見た事ある」

「ど、どこで見た」

「・・・」

「ハイネいつ見たのですか?」



 ミュウに詰め寄られても黙っていたハイネだったがリナに聞かれるとすぐに答え始めた。



「ん、お姉ちゃんにも前に話したけど、私の家に来た男が変な仮面を持ってたのを見た事がある」

「そうだったんですか・・・」

「どういうことだ?」

「すみません。彼女は昔辛い体験をしていまして、なるべくその時の事は話さないように言っていたものですから、ですがハイネの話の男も特に特徴のない人物って事でしたのでわかることはありません」

「ねえ、ミュウさん。その仮面の人とか黒のローブの人とかっていったい何なんなの?どうして私達に聞いたの?」

「実はそいつらは最近いろんな場所で盗みや殺しをしている集団なんだけどな、わかっているのは変な仮面をつけている事と全員が黒のローブを着ている事だけなんだ。珍しい物を盗んでいると情報もあったからエルトレームも襲われていないかと思ったんだが、やっぱり何者かはわからないか」



 ミュウはそう言って肩を落としていると、今まで黙っていたゼアンが懐から封筒を取り出しながら前に出た。



「まさかミュウさんも調べていたとは思いませんでした、実は僕も同じことを調べていましてね。そう言う事でしたらミュウさんにもこれをお渡ししておきます」

「なんだお前も調べていたのか・・・と言うか何でお前がアレントにいるんだ?」

「いえ、成り行きにはなりますがリナ君達と知り合いまして、僕の目的地と同じ方向だったので同行していたんですよ。まあ目的はここでも達成できそうなので結果的にはよかったのですが」



 そう言ってゼアンはヴェストレームに視線を送ると、ヴェストレームは項垂れるように肩を落としていた。



「なんだてっきりメイルに会いに来たのかと思っていたのに」

「え?なんでゼアンさんがメイルに会いにくるの?」



 ミュウの言葉にティアが反応するとミュウはしれっと言う」



「え?だってこいつら兄妹だし」

「え?えええええ?二人って兄妹なの?」

「そうだよ」「はい」



 ゼアンは嬉しそうにメイルは少し恥ずかしそうにそう答えたのだった。



「まあそんなことは置いといてメイル早速この資料を確認して情報を整理してくれ情報がまとまったらもう一度このメンバーで話し合いたい」

「はい。かしこまりました」



 メイルはミュウから封筒を受け取るとすぐに部屋を後にした。



「じゃあ僕も用事があるし失礼するよ」



 ゼアンも同じように部屋から出ていくとヴェストレームもため息をついてそのあとを追って部屋から出ていった。

 次々と人が部屋から出ていく中リナは一つ疑問を覚えていた。



「あ、あのさっきもう一度このメンバーっていいましたか?」

「ん?ああ言ったぞ?」

「えっとそれはボク達も含まれているんですか?」

「そうだな。お前達の実力はすぐにわかったし協力してもらう。これはギルドマスターであるワタシ直々の命令だ。それにまさか全員があいつらと関わりがあったなんて偶然とは思えないしな」



 ミュウはそう言って薄い胸を張るがすぐに真剣な表情に変わった。



「・・・すまないがシェスティアとハイネリア、少し部屋から出ててもらえないか?ちょっとリナと話したい事がある」

「え?」

「ティアさん。大丈夫ですよボクは構いませんから」

「わかったよ。行こっかハイネちゃん」

「ん」



 ティアは人見知りなリナを心配していたが、本人から問題ないと言われてしまってはこれ以上の心配はいらないと判断し2人で部屋から出ていった。

 部屋にはリナとミュウの2人だけになる。

 しばらく沈黙が続くとその静寂をミュウが破った。



「なあリナ、お前目がほとんど見えてないだろ?」

「っ!!?」

「隠さなくていい。ワタシも全く見えてないから動きでわかるんだ。しかし今までは見えていたんだろ?なにがあったんだ?」

「それは・・・」

「まあ、無理には聞かないさ。でも今回は隠してるみたいだったから席を外させたがあの2人には伝えておいた方がいいんじゃないか?」

「いえ、この眼鏡があれば視力の調整が出来ますのでこれ以上心配も掛けたくありませんのでしばらくは秘密にしていたいと思います」

「そうか、まあそれはリナが好きに決めればいい事だけど・・・」


 ミュウはそのあと何か言葉を続けようとしていたのだが、結局何も言わずに部屋を後にしたのだった。

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