ひと時の観光
ラウラ達との試合があった翌日リナ達は朝から外に出かけていた。
昼に行われるラウラの試合までの空いた時間にエクリスの観光をしようと人の少なそうな時間から行動を開始したのだが、まだ朝が早いと言うのに広場はたくさんの人で賑わっていた。
「思っていたよりも人が多いですね」
「そうだね。大会が始まってから闘技場にまっすぐ行ってたから全然知らなかったよ」
二人が賑わっている広場を眺めながらそう話していると、ハイネがリナの手を引いて駆け出し始めた。
「お姉ちゃん早く早く」
食べることが大好きなハイネは広場から漂ってくるいい匂いに惹かれてテンションが上がっていたのだが、食べる事以上に好きなリナと一緒に遊びに出かけられてハイネのテンションがより高くなっていた。
「ハ、ハイネ!ちょっと落ち着いてください」
「二人とも待ってよー」
「むう、二人とも急いで」
三人は久しぶりにゆっくりできる時間を楽しむために出店へと向かって行った。
・・・と楽観的に考えていたリナ達は、自分達が大会のおかげでかなりの有名人になっていた事を失念していたのだった。
「うわぁ『淡紅の氷姫』だぁ。三人揃ってるよ」
「近くで見たら皆可愛いなぁ」
「あらあら、こんなにちっこいのに大会に出ていたのかい。ほれ、これ食べな!」
あっという間に人に囲まれたリナ達はいろんなひとに声をかけられたり、食べ物をもらったりとその人気はすごいものだった。
だが、知らない人が苦手なリナはティアの後ろに隠れ、ハイネは貰った食べ物を食べる事に集中していた為、ティアが一人で寄ってくる人に対応していた。
あまりにも人が集まってきてしまったので午前中は全く観光が出来なかった3人だった。
ラウラ達の試合時間までになんとか解放されたリナ達は試合が見えやすい場所を確保することに成功していた。
「ラウラちゃんの試合相手って何てチームだっけ?」
「確か『ゴグマグ』って名前だったはずです。硬い防御で攻撃を防いで隙を突いて戦うチームらしいですよ」
「守りを固めるチームか、私達は守る戦いは苦手だったからラウラちゃん達の違った戦いが見れるかもしれないね」
「そうですね」
そんなことを言っていると、ラウラ達が闘技場に入場してきた。同時に『ゴグマグ』の面々も入場してくる。
「うわっ何あの大きい盾、鎧も大きいし殴ったらこっちが怪我しちゃいそうだよ」
ティアがそんな感想を述べていると、闘技場内に実況の声が響き渡った。
『さあさあ、次の試合は敵を圧倒的な力で屠ってきた『妖精の剣』とその防御は今大会一番と声も高い『ゴグマグ』だー!!鋭い一撃が防御を打ち砕くのか?はたまた全ての攻撃を防ぎきってしまうのか目が離せない試合だぞ!!』
実況が会場を盛り上げる中、いよいよラウラ達の試合が始まる。
「それでは試合開始!!」
審判の開始の宣言と同時にラウラが相手に向かって走り出す。
「ラウラちゃんが動いた!」
「はい。ですがクロックさん達には動く様子がないですね」
ラウラは『ゴグマグ』の一人と対峙した時、相手は大きな盾を前に構えるのだが、ラウラはそれを物ともせずに大盾を両断して懐に踏み込むと、見えない一撃で相手の意識を刈り取った。
「今の見えた?」
「はい。なんとか・・」
「む、速かった」
三人にはラウラの素早い剣技が見えていたので、その凄さがわかってしまったのだが、試合をしている『ゴグマグ』の残りの二人は剣技が見えなかったのか、同時にラウラに攻め込み同じように意識を奪われてしまったのだった。
「試合終了!!勝者『妖精の剣』」
『き、決まったー!!なんと『妖精の剣』ラウラ選手一人で試合を決めてしまったー!!』
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」
試合が終わってリナ達は闘技場から出ていた。
「ラウラさんの試合すごかったですね」
「うん。強かった。・・・でも動きは見えてた」
「はい」
ティアはラウラの凄さに身震いしていたのだが、それは恐怖ではなく武者震いだった。
ラウラとの再戦が楽しみになったティアは今すぐにでも特訓をしたかったのだが、皆といる時間も大切だと割り切ってから気持ちを切り替えて今日の観光を楽しむことにした。
「ほらリナちゃんもハイネちゃんも行こ?試合を見てたらお腹がすいてきちゃった」
「私もすいた」
ティアとハイネが先を歩いて行ったのでリナもそのあとを追おうとしたのだが、闘技場の影に見覚えのある人影が見えた。
(あれは・・・ラウラさんと確か七聖剣の・・・知り合いだったのでしょうか?)
物陰に隠れてなにか話をしているのが見えたのだが、
「リナちゃんどうかした?早く行くよー」
「は、はい。なんでもありませんすぐに行きます」
ティア達に呼ばれたので、それ以上見る事もなくリナは二人の事を意識から切り離した。
その後、またも人に囲まれたりと大変な一日になったのだが、三人はエクリスの観光を思う存分楽しんだのだった。
「そうか・・やっぱり来ているんだね」
「はい。あの後も何度か反応がありましたので」
「報告ありがとう。こっちも警戒を強化しておくよ」
「あと、あの事なんですが」
「わかってるよ。そっち大丈夫だから君は試合を楽しんで」
「はい。ありがとうございます」
そう言ってラウラが頭を下げると、相手の男七聖剣のゼアンは「任せて」と一言残してその場から離れていった。
コメント、ブックマークありがとうございます。




