表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/105

グランオーガ

 グランオーガがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。



「皆さんは下がっていてください。あれはボクが相手をします」



 リナはそういうと冒険者達の前に立ち今まで何も持っていなかったのだがアイテム袋から自身の身長よりも少し小さめの杖を取り出した。

 その杖の先端には空色に輝く宝石が装飾されておりとても奇麗な造りをしていた。



「リナちゃんその杖どこから・・・」

「今はそれよりも後ろに下がっていてください」



 リナは真剣な表情でマチに言うが、マチはその言葉に首を縦に振らなかった。



「いや、私も戦うよ。リナちゃん一人だけ危ない目にあわすわけにはいかないからね」

「で、ですがあれはグランオーガと言ってとても危険な魔物何です」



 リナが必死に注意を促すがマチはそれを聞かなかった、それどころか



「そうだ、リナちゃんだけを危険な目に合わすわけにはいかねえよ」

「俺たちも戦うぜ?」

「それにあんなに鈍そうなやつの攻撃なんで当たらないよ」



 冒険者達も引こうとはせずグランオーガに立ち向かおうとする。



「でもグランオーガは物理攻撃、剣や槍での直接な攻撃はほとんど効かないんです」

「それでもさね」

「え?」

「リナちゃん一人で戦わせることなんてできないって言ってるんだよ」

「でも・・・」



 グランオーガと戦う気になっている冒険者たちに困惑していたリナだったがそこにある人物から声がかかった。



「でしたらリナさま、私達も共に戦います」



 振り向くとそこには別でオーガと戦っていた騎士たちだった。



「我々の中には魔法を扱えるものもいますので万が一の場合には冒険者達も守ることは可能かと」



 騎士の真剣な眼差しにリナは首を縦に振った。



「リナさまからの許しは出た、我々も共にあの魔物と戦いこの町を救うぞ!!」

「「「はっ」」」



 騎士たちは一斉にリナに頭を下げると戦列を整えそこまで迫っているグランオーガに備えた。



「リナちゃん・・・」

「マチさん」



 先ほどまでの様子を見ていたマチは心配そうにリナに声をかけたのだが、帰ってきたのは不安そうにマチを見上げるリナの姿だけだった。



「・・・気にすることはないよ、リナちゃんはリナちゃんさね」



 マチは笑顔でそういうとリナの肩に手を置いた。



「そうだ、リナちゃんがリナちゃんなのは違わねえ」

「なにかあったら俺たちが守ってやるよ」

「お前がか?」

「う、うるせぇ」



 冒険者達もリナを励まそうとおどけて見せた。



「皆さんありがとうございます」



「じゃあ行くよ!!」

「「「おう」」」



 マチの合図で冒険者達はグランオーガの前に立つと各々グランオーガの相手を始めた。 

 騎士たちは上手く装備している盾を利用してグランオーガの攻撃をそらす。冒険者達は皆素早い動きで攻撃を躱しながら仕掛けていく。



「たしかにリナちゃんの言った通りこいつは硬いねぇ」



 冒険者の攻撃や騎士の攻撃はもちろんマチの攻撃すらグランオーガの皮膚に傷一つつけることができていなかった。

 リナはみんながグランオーガの動きを止めているうちに魔法の詠唱を始める。



「『氷精よ、我に力を与え三つの刃よ、敵を切り裂け。アイスソード!!』」



 騎士や冒険者達と相対しているグランオーガに魔法を叩き込む。

 しかしグランオーガはリナの魔法に視線を送ると手に持っていた剣でそれをすべて撃ち落とした。

 グランオーガは今の魔法に怒ったのか耳を切り裂くような雄たけびを上げ今までよりも格段に速くなった動きで冒険者や騎士たちを吹き飛ばす。

 さらには今まではただ剣を振り回すだけだったグランオーガだったが正確に人間の急所を狙う武芸者のような動きに変わっていた。



「ひ、怯むな!我々が倒れてはリナさまが危険にさらされる何としてもこいつの前進を止めるぞ」

「「「「「おおっ」」」」



 何名かの死者を出しながらも騎士と冒険者は一丸となってグランオーガに向かて行くがグランオーガはそれを腕の一振りで吹き飛ばす。



(皆さん、すみません)



 次々とグランオーガに吹き飛ばされ、やられていく騎士や冒険者達に心中で謝罪しながら。

 リナは覚悟を決めると新しい魔法の詠唱を始めた。

 リナの詠唱中にも胸を貫かれ絶命する者や吹き飛ばされ手足が逆に曲がってしまった者など死傷者が増えていく。



「『氷精よ、大気の水を我の力に、彼を切り裂け、薙げ散らせ、力を持って、吹きすさべ、ブリザードランス!!』」



 リナが詠唱を終えると、ともに無数の槍の形をした氷が今までとは比べ物にならないスピードでグランオーガに迫っていく。

 リナの魔法が放たれたことに気が付いたマチは全員に回避するようにと声を上げた。



 グランオーガに着弾したブリザードランスは刺した場所から次々とその場所が凍っていき、みるみるうちにグランオーガの動きを止めていった。



「やはり・・リナさまの魔法だ・・・」

「すげぇこんな魔法見たことねぇ」



 グランオーガは無数の氷の槍が刺さったままその体を凍らせていた。

 マチはグランオーガが動かなくなったことを確認すると離れた場所にいるリナに話しかけた。



「やったね。リナちゃん」

「はい、でも死んでしまった人も・・」

「リナちゃんが気にすることじゃないさ。あいつらも覚悟の上で戦っていたんだ」



 暗い声になったリナにマチは励ましの言葉を送った、その時だった。



「リナちゃん!!」



 突然グランオーガを凍らせていた氷が砕けると、そこからグランオーガが一瞬にしてリナへと詰め寄るとその手に持った剣を振り下ろした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ