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本戦4回戦 対決『妖精の剣』

「いよいよラウラちゃんとの試合だね」



 ラウラ達『妖精の剣』との試合の当日すでに控室に入っていたリナ達は試合に向けてミーティングをしていた。



「情報によるとラウラちゃんのチームは前衛にラウラちゃんとクロックさん後衛にグラフさんらしいんだけど・・・」

「どうかしましたか?」



 ティアが説明の途中で難しい顔をしていたのでリナが聞き返す。



「それがね、ラウラちゃんのチームってまだラウラちゃんしか戦ってないんだって、それに私達が試合を見れなかったのは戦闘時間がめちゃくちゃ短いんだってさ」

「今までラウラさん一人で戦っていたってことですか?」



 リナの言葉にティアは頷く。



「という事はクロックさんとグラフさんの実力は不明でさらにラウラさんは大会屈指の実力と言う事ですか・・・」

「うん。どうかなリナちゃん何かいい作戦ある?」



 リナはしばらく考え込みティアから聞いた相手の情報から、試合が始まったらティアとハイネがラウラを一気に攻め立てリナが即座に魔法で援護、今回もラウラが一人で戦うと予想してそう作戦を伝えた。



「わかったよ。ラウラちゃんは任せて」

「ん、ラウラが相手でも手加減しない」



 リナから作戦と聞いた二人はすぐに了承してそう返事を返す。



「それと万が一クロックさんとグラフさんが戦いに加わる事があった時には、ボクが魔法で足止めする事になると思いますのでラウラさんとの戦闘中に魔法の援護が無くなると思っていてください」

「「了解!!」」



 作戦が決まってそれほど時間がかからないうちに控室の扉をノックする音が聞こえた。



「いよいよだね」

「うん」

「はい」



 三人が控室から出ようとした時にリナが足を止めて二人に言う。



「ティアさん、それにハイネも昨日も言いましたが『新選組』との戦いで使った魔法は今回の大会ではもう使うつもりはありませんのでそれだけは覚えていてください」



 リナが申し訳なさそうにそう言うとティアは笑って答える。



「うん。わかってるよ、昨日リナちゃんが言ってた通り危険な魔法ってわかってるから大丈夫だよ」

「ん、心配しなくていい。私とシェスティアでお姉ちゃんを助けるから」

「ありがとうございます」



 リナは二人がそう言ってくれた事に感謝しながら試合に向かって行くのであった。



 リナ達三人が闘技場にやってくるとすでに『妖精の剣』が待ち構えていた。



『さぁ両チーム出そろいました。毎試合毎試合驚くような試合を見せてくれるのは『淡紅の氷姫』特に注目すべきは常識を覆すがごとく素晴らしい魔法の技術を誇るリナ選手!その姿はまさに淡紅の氷姫にふさわしい選手でしょう!!対するはその力は全てを圧倒するが如く!あらゆる敵を一人でなぎ倒すは『妖精の剣』!!このチームは未だにラウラ選手以外は戦闘に加わってはいませんがその力は圧倒的!!今回の試合もラウラ選手一人で決めてしまうのか!?注目の一戦だぁ!!!』



 実況が聞こえてくる中、ラウラがリナ達の元に歩いて来る。



「やあ、ようやく試合が出来るね」

「うん」

「ここまで勝ち上がってきたんだ手加減の必要は無さそうだね。楽しませてもらうよ」

「お互い全力でね」

「ああ」



 ラウラはそう言い残して試合開始位置に下がって行った。

 リナ達も同じように開始位置に移動すると審判が手を上げて高らかに宣言する。




「それでは試合開始!!」



 審判の合図と共にティアとハイネは作戦通りにラウラに向かって走って行こうとしたのだが相手の動きを見て足を止めてしまった。

 『妖精の剣』は今までの戦闘スタイルとは打って変わってラウラとクロックが勢いよくこちらに走って来ていた。



「なっ!?」



 驚くティアにリナが声をかける。



「ティアさん!クロックさん達が動くのも想定の内です。全力で迎え撃って下さい」

「そうだね。行くよハイネちゃん!私はラウラちゃんと戦うからクロックさんをお願い」

「ん」



 ティアとハイネは向かってくる相手に向かって走っていく。



『なんと『妖精の剣』初めてラウラ選手以外の2人が戦闘に参加だー!!ラウラ選手、クロック選手が一気に攻め込んでいく、それを迎え撃つシェスティア選手ハイネリア選手はどう戦うのか!?』




(まさか本当にクロックさん達が攻めてくるなんてグラフさんは開始位置から動かずに魔法の準備をしてるのでしょうか?ここは上級魔法にも備えながらティアさん達をフォローするためには・・・)




「『第一制限(ファーストリミット)解放(リリース)』」

「『セット、アイスバレット』」



 リナが発動させた魔法がラウラ達に放たれるが、ラウラとクロックは素早い動きで魔法を躱しながらティア達と戦っていた。

 ラウラとティアはお互い得意な得物、ラウラは身の丈ほどの長剣をティアは拳を使って攻め立てる。クロックとハイネの戦いは、ハイネの妖術に対してクロックは独特身のこなしと卓越した剣術で妖術の事如くをいなしていた。

 ティアとハイネは何とか戦えてはいるものの、それはリナの援護があってこその結果で実力だけでは何歩か劣ってしまっていた。



「ははっ、やるねぇティア。リナの援護があるとしたってここまで戦えるとは思ってなかったよ」

「それはっどうもっ!!」

「よーし、まだいけそうだねちょっとスピードを上げていくよ」

「え?ちょっと待って!!」



 ティアはそう泣き言をこぼすがラウラはスピードを上げていくのにティアは何とかついて行くことしか出来ていなかった。



「はぁ、また悪い癖がでてるよ・・」

「む、今は私との試合中」



 ハイネがそう言って腕を振るとクロックは慌ててその身をずらした。



「おっと、見えないけどその姿を見るに何かの術かな?」

「『鎌鼬・紫電』」



 ハイネは雷を纏いながらそう淡々と答えてはいるがその表情は驚きを隠せていなかった。

 ハイネはこの大会の間に体に纏っている見えない刃をある程度伸ばすことが出来るようになっていたのだが、クロックはその見えない刃に反応していたのだった。



「なかなかやる」

「それはこっちのセリフかな」



 ハイネとクロックの戦いはティア達ほどの派手さはないがそれでも激しい技術戦が繰り広げられていた。



 ティアとハイネの戦いが続く中ようやく大きな動きを『妖精の剣』が見せた。



「ラウラ、クロック準備ができた!!発動させるぞ!!」



 その声に反応した二人はティアとハイネに一気に攻め入った。

 それを見たリナは上級魔法の準備をしていたのでティア達に向かって叫ぶ。



「グラフさんの魔法にはボクが対応します。二人は目の前の相手に集中してください!!」

「「了解!!」」



 リナの叫びと同時にグラフは魔法を唱える。



「『我が魂、我が体を依り代に、彼の魂、彼の体に眠りを、現出せよ!アヴド!!』」



 リナは送れず対応するために魔法を唱える。



「『氷精よ、汝の力を持って我に従え、凍結する自然の息吹よ、我が前に吹きすさべ、大気の氷よ氷刃となりて、切り裂け、蹂躙せよ、四肢を貫き、我が敵を退けよ、フリージングカタストッ』えっ?」



 リナが上級魔法を発動させようとした途端、リナの足元から異形の手が出現する。

 異形の手はリナの反応速度を超えて両手両足を掴み身動きを封じてしまった。



「な、なんですかこれは?」



 リナの動きが完全に封じられると発動させていた制限魔法も停止されてしまっていた。



(魔法が、いえ魔力が使えない!?この腕に魔力が吸われてしまっている!?それにこの力体を動かすことが出来ません)



『な、なんとこれはグラファリーキリゲス選手の魔法でしょうか、リナ選手の動きを完全に封じてしまったぞぉ!!』



「リナちゃん!?」



 実況が聞こえたティアが振り向くとリナが異形の手に捕まっている姿が目に入った。急いでリナの元に向かおうとするがラウラがそれをさせなかった。



「悪いね、リナの動きは封じさせてもらったよ。リナに前の試合みたいな魔法を使われちゃうとこっちも危ないからね」

「ずっと狙ってたの?」

「一番危険な相手を放置はしておけないからね。悪いけどこれでティア達は詰みだね」



 ラウラがそう言い放つと、グラフが割って言い放った。



「ラウラ、油断せずにすぐに倒せ。あの子、魔力量が異常だ。このままじゃ押し返される」

「グラフでもリナの足止めは長くはもたないのか。やっぱり恐ろしい子だね。仕方ないちょっと惜しいけどすぐに勝負を付けようかティア!!」

「うっ」



 ラウラの闘気にティアがじりじりと後ずさっているとハイネが声をかける。



「シェスティア、まだチャンスはある。前にアルカから聞いたことがある。特殊な魔法は術者もそれなりに代償があるって言ってた。たぶんあの魔法もそれ、さっきからグラフはあそこから少しも動いてない。きっと動くと魔法は解けるはず」



 珍しくハイネが長くしゃべるほど状況は緊迫していたのだが、まだ勝機があることが分かったティアは一歩前に足を進めた。



「ありがとうハイネちゃん」



 ティアはまだ戦えると気合を入れなおしてラウラに攻め込もうとしたときだった。



「あれ?ラウラちゃ・・・」



 ラウラは瞬時にティアの背後に移動すると打撃を加えてティアの意識を刈り取った。



「シェスティア!?」



 ティアが倒れた事に驚いたハイネの前にクロックが詰め寄っていた。



「やっぱり君はすごいよ。その歳でグラフの魔法の弱点を瞬時に見極めるなんて、でも俺達と戦うには少し早かったね」



 クロックはそう言って剣を振ると、雷を纏っていたハイネに一切傷をつけずに意識を断ち切ってしまった。



「さて、あとはリナだね」



 二人は動きの取れないリナに歩み寄っていった。



「さっきの動きティアさんとの戦いでは手を抜いていたんですか?」



 リナがそう問いかけるとラウラは首を横に振った。



「いや、そうじゃないよ。あの時はリナの魔法も警戒しながら動かないといけなかったからね。それにさっきのもリナが捕まって動揺していた状態じゃなかったらティアは見切っていたと思うよ」

「そうですか・・・」

「で、どうする?このままリナの意識を断ってもいいんだけど?」



 ラウラが長剣を肩に当てながらそう問いかけるとリナは首を横に振った。



「いえ、まだ動けそうにありませんので素直に負けを認めます。ボク達の負けです」



 リナが負けを認めた瞬間審判が声を上げた。



「試合終了!!勝者『妖精の剣』」



『決まったー!!勝者は『妖精の剣』だー!!3人の力がそろったこのチームは流石の『淡紅の氷姫』も太刀打ち出来なかった!!しかし『淡紅の氷姫』唯一の女性のみ、そして最年少チームもここまで良く戦ったぞー!!』



「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」



 観客の歓声も鳴り止まぬまま、リナはティアとハイネが救護係りに連れていかれるのと一緒に闘技場を後にした。

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