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本戦3回戦 開始

遅くなりました。

「リナちゃん大丈夫?さっきから様子がおかしいけど・・・」



 そう心配しながら話しかけるティアだったが、リナはティアの声は一切耳に入らず次の対戦相手の事で頭がいっぱいになっていた。



(『新選組』・・・偶然とは思えません。次の対戦相手は元の世界の人と考えて間違いないでしょう・・・何とか相手と話すことは出来ないでしょうか・・)



 試合後に聞かされた次の対戦相手の『新選組』と言うチーム名、このチーム名が偶然付けられたものなのか、それともリナの様に元の世界の事を知っている者があえて付けたのかリナはそれが一刻も早く知りたくて仕方が無かった。



「リナちゃんホントに大丈夫?」

「え?は、はい大丈夫です」



 ティアの問いかけに全く反応しなかったリナだったが、ティアがリナの肩を揺さぶりながら声をかけるとさすがのリナも我に返った。



「本当に大丈夫なの?」

「はい、大丈夫ですよ」

「もう、それならいいんだけどさ」



 リナがそう言って笑顔を見せるとティアは安心するように肩をすくめた。

 そんな様子を見せていたティアに申し訳ないと思っていたリナだったが、やっと見つけた手がかりなので、どうにかできないかティアに相談することにした。


「ティアさん。戦う前に相手チームと話したりする事って出来ますか?」

「うーん。それは流石に無理じゃないかな?私達は相手の控室の場所を知らないし、それに戦いの前だと相手も会ってくれないと思うよ?」

「そうですよね・・」



 言われてみれば当たり前の事を言われてしまったリナは落ち込んで声が小さくなってしまったのだが、ティアがそんな様子のリナを励ますように慌てて言葉を続ける。



「で、でも闘技場内でなら・・戦う前なら少しくらいなら話せるんじゃないかな?」

「そうでしょうか?」

「絶対とは言えないけど、でも何か気になる事があるんでしょ?だったら試してみるしかないよ」

「・・・そうですね。やってみます」



 リナは励ましてくれているティアに感謝しながら、なんとしてでも戦う前に相手と話をして情報を手に入れようと気合を入れた。



 戦いが始まるまでの時間気合の入ったリナは、ティアとハイネと共に次の戦いの作戦を立て始めた。



「聞いた話だと『新選組』は三人とも近距離での戦いを得意としてるみたいだよ」

「魔法を使ったりはするのでしょうか?」

「ちょっとは使うみたい」

「なるほど・・」



 リナとティアはどう戦うか悩んでいたのだが、ハイネはそこまで悩む様子を見せずに控え室に置いてあるお菓子をバクバクと食べていた。



「ハイネちゃんも考えてよー」

「なんでもいい。お姉ちゃんが決めた作戦で大丈夫」

「ハイネ、ボクが作る作戦は完璧なものじゃありませんので、なにか気になる所があったら教えてほしいのですが」

「そんなことない。お姉ちゃんの作戦は完璧」



 ハイネのリナに対する信頼は何故か常に最高の状態で、言っている事に嘘や偽りがないことがハイネの瞳を見たリナとティアにはすぐにわかった。



「・・・」

「・・・」



 リナとティアはお互いに視線を交換すると、無言のまま頷き合いこのままだとハイネの将来がまずいことを認識した。

 リナは何とかもう少しハイネの自分に対する認識を変えるためにティアに視線を送ったのだが、ティアはそっと視線を逸らした。



(ティアさん!?)



「と、とにかく今回はリナちゃんが最初に提案した作戦でいいと思うな」

「うん、それでいい」



 ティアの言葉にハイネが同意する。リナが待ったをかけようとすると控室の扉を叩く音が聞こえてきた。



「よ、よし行こっか!」



 ティアは気まずそうにそう言って足早に控室を出ていってしまった。

 リナは、何故かこの短時間でいろいろな問題が発生してしまっていたのだが、まずは相手のチームの事だと気持ちを切り替えて闘技場を目指して控室を出ていった。



 闘技場に到着するとすでに対戦相手である『新選組』のメンバーの姿があった。

 すぐにでも話しかけに行きたかったリナだったのだが、その場の空気に飲まれてしまってその場から動くことが出来なかった。



「ほらリナちゃん頑張って」



 そんな様子を見ていたティアはリナの背中を押して元気付けた。

 リナは背中を押された勢いのまま集まってくる観客の視線を何とか無視して『新選組』に話しかけに行った。

 


「す、すみません。少し聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「どうしましたか?」



 突然話しかけたリナの事を『新選組』のメンバーは嫌がる様子を見せることなく快く迎え入れた。



「え、えっと、貴方たちのチーム名の事なんですが・・・」

「僕達のチーム名?」

「はいその名前についてなんですが・・・」



 リナがそこまで声に出すとリーダーと思われる青年が腕を組んで頷いた。



「なるほど。・・・ちなみに僕の名前はオキタというのですが」



 リナはその名前を聞いて驚きを隠すことも出来ずにオキタの顔を見つめた。



「・・・その様子ですと聞き覚えがあるみたいですね」

「は、はい。教えて頂けますか?」

「構いませんよ。ただし僕達に勝つことが出来ればですが」

「え?」

「残念ですが、僕達に勝てない程度の実力の方にはお教えする訳にはいかないんですよ」



 オキタはそう言って頭を下げると「もうすぐ試合が始まりますよ」といって話を終わらせて行ってしまった。

 リナは慌ててオキタを呼び止めようとしたのだが、審判に呼び止められて渋々ティア達の元に戻っていった。



「どうだった?なにか聞けた?」



 戻ってきたリナにティアはストレッチをしながら問いかけたのだが、リナからは思いがけない答えが返ってきた。



「・・・ティアさん、ハイネ、この戦いボクに任せてもらえませんか?」

「え?それはいいんだけど、どうかしたの?何か嫌な事でも言われた?」



 ティアはリナの今まで見た事がない表情を見て少し怖くなってしまっていた。



「いえ。ですが勝たなければ詳しいことは聞けないみたいですので今回は最初から全力で行きます」

「お姉ちゃんの本気、楽しみ」



 ティアの感情とは裏腹にハイネは本気になったリナを見るのが楽しみで仕方なくなっていた。



「本当は大会では使うつもりは無かったのですが、今回は負ける訳にはいきませんから」



 リナがそう呟くと同時に試合開始の宣言が闘技場内に響き渡った。

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