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本戦2回戦 本気

 ジャスミンの放ったクリムゾンフレアが無防備な状態のリナに迫っていた。

 この大会では強力な魔法に関しては即死してしまわないように選手にヒットする前に腕輪に仕込まれている魔力結界が展開して身を護るようになっているのだが、もちろんそのシステムが起動するとその選手は失格扱いになってしまう。

 その為、リナに迫っているクリムゾンフレアはヒットすれば失格は免れない程の威力のある魔法だった。

 リナは目の前の魔法に対してやられたという表情は一切見せずに、少し苦い表情で呟いた。



「二つ目を使うと体力的に辛いのですが、このままでは失格になってしまいますし仕方ありませんよね」



 リナは右腕を前に出すと魔法を発動させた。



「『第四制限(フォースリミット)解放(リリース)』」



 リナがそう呟くと巨大な氷の壁が瞬時に現れてクリムゾンフレアを防ぎ止める。



『な、なんとリナ選手の目の前に巨大な氷が出現しジャスミン選手の魔法を塞き止めた!!一瞬にして現れたこの氷の塊は魔法なのかぁ!?』



「なんで・・・」



 ジャスミンは魔法を詠唱する隙なんて一切なかったはずなのに上級魔法を止められるような魔法を瞬時に発動させたリナに対してもうそう呟く事しか出来なかった。

 クリムゾンフレアは徐々にその威力を失っていき完全に消えてしまう。

 最後の力を振り絞って上級魔法を発動させたジャスミンには回復する時間が必要だったが、リナはその隙を与えることはなかった。

 氷の壁の後ろから現れたリナはジャスミンを視界に捕らえて魔法の詠唱を始める。



「『氷精よ、大気の水を我の力に、冷たき風よ、凍える吹雪よ、ぬくもりを奪いし旋風よ、彼の者を包み、凍結させよ、ブリザードウィンド!!』」



 リナが魔法を放つとジャスミンは冷たい風に襲われてその体を凍らせていった。

 本来この魔法は相手の視界を奪って動きを阻害する魔法なのだが、無抵抗状態の相手に使えば遠距離からでも捕縛可能くらいには凍結能力をもつ中級魔法だった。

 完全にジャスミンを戦闘不能にしたリナはフラフラになりながらティア達が戦っている方向へ歩き始めた。



「はぁはぁ、こっちは・・終わらせましたけど、まだ・・ティアさん達が戦っていますよね」



 流石に制限魔法を2つ解放した上に上級魔法を使用してしまっては今のリナでは魔力の大半を使ってしまっていた。

 何とか魔力ポーションを補給しながら歩いて行くがその足取りは重いままだった。



『ここで『ジャッジメント』の魔法使いは両名共に試合続行不能の合図が出されました。残るはギンセイ選手の一人だがこのまま決まってしまうのかー!!』




「ハイネちゃん聞いた?」

「うん、さすがお姉ちゃん」

「そうだね。私達もせめてこの人を倒さないとリナちゃんに悪いね」



「俺とやり合ってんのに随分と余裕じゃねぇか!!」



 実況が聞こえた2人がそう話していると、ちょうどティアに斬りかかっていたギンセイがそう言って振りかぶっていく。



「余裕なんてないよ」

「へっ、よく言うぜ」



 ティアとギンセイが戦っている中、ハイネは残るリザードマンを一気に倒しにかかっていた。



「『不知火・桜花』」



 ハイネは妖炎の剣を出現させると、瞬時にリザードマンを切り裂いていった。

 『不知火・桜花』は『紅羽』と違い斬られれば幻術の炎ではなく本物の炎に包まれて焼かれていく殺傷能力の高い技だった。

 魔物相手以外には使う事はない技だが、誰も巻き込まない状態になれば炎が燃え移り周りの敵も焼く事が出来る便利な技だった。さっきまではティアを巻き込む可能性があったので使えなかったが、ギンセイと戦っている今なら問題なく使えたのであった。

 リザードマンを全滅させられてしまったギンセイは驚きの表情と共に笑みを浮かべていた。



「リザードマンがやられちまったか」

「これで2対1だね」

「そうだな。ここで俺がやられたら俺達はここで終わっちまう。だがな・・・まだ俺は負ける訳にはいかねぇんだよ!!」



 ギンセイはそう叫ぶと膨大な魔力を使用して召喚魔法を発動させた。



「我に契約せし誇り高き獣よ、今こそその力で、我が敵を討ち払え、召喚術:ハーブルムーン!!」



 魔法陣から現れたのは、ギンセイの髪の色と同じ青い体毛をした大きな虎のような獣だった。

 ハーブルムーンはその美しい体毛と月のような瞳の色から神聖な獣として扱う国もあるほど高貴な獣だった。

 決して人に懐くことのない獣だが、ギンセイには懐いているのかギンセイの敵と判断したティアとハイネに牙をむき睨みつけていた。



「こいつはハーブルムーン。俺の相棒だ、本当は決勝まで使うつもりは無かったんだがここで負けちゃあ意味がねぇ・・・全力で行かせてもらうぜ」



 ギンセイはハーブルムーンと共にティアとハイネに襲い掛かっていく。

 ハーブルムーンは素早い動きを見せると、鋭い爪と牙で襲いかかり、それに対応している相手の隙をついてギンセイが攻撃する連携のとれた見事な動きだった。



『ギンセイ選手、ここでハーブルムーンとの巧みな連携でシェスティア選手、ハイネリア選手を追い詰めていく!!これはこの試合わからなくなってきたぞ!!』



「くっ!!」



 なんとかギンセイとハーブルムーンの攻撃を防いでいる2人だが、防ぐだけで攻撃に転じる事が出来なくなっていた。



「このままじゃ・・ハイネちゃんあれ・・いける?」

「できるけど・・ここで使うの?」

「向こうも本気みたいだし、このままじゃ負けちゃうよ」

「・・わかった」



 ティアとハイネは隠していた技をここで出す事に決めて防御の構えを解いた。



『シェスティア選手、ハイネリア選手防御の姿勢を解いたぞぉ!?このままでは敗北してしまうが何か作戦があるのかぁ!!』



「へっ、負けを認めるか?ハーブルムーン一気に決めるぞ!!」

「ガァウ」



 ギンセイとハーブルムーンはここで勝負を決めようと2人に突撃していくが、ここでハイネの妖術が発動した。



「『霞衣・夜叉』」

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