冒険者達との共闘
「おっと、危ないよ」
リナが次の敵へと構えたところで先ほど鏃を受けたオーガが立ち上がり、リナに攻撃を仕掛けたところだったがマチがそれに気が付きとどめを刺した。
「ありがとうございます」
「なに、お互い様さね。それよりもリナちゃん、私たちがオーガ共を食い止めるから魔法での援護は任せたよ!!」
「はい。マチさんも気を付けください」
「なに、まだまだその辺の冒険者には負けないよ」
そういって大きな剣を勢いよく振り回すマチ。
「マチさん早く!!」
そんな冒険者の声を聴きマチはオーガに向かっていった。それを見送ったリナは魔法での援護を始めるために詠唱を開始した。
「『氷精よ、我に力を与え三つの刃よ、敵を切り裂け。アイスソード!!』」
氷の剣が飛翔しオーガに襲い掛かる。
魔法で切り裂かれたオーガは膝をつくものやうまく急所にあたって絶命するものもいたのだが大半のオーガはそれでも進んでくる。
「おお、氷の剣まで」
「リナちゃん、こんなに強かったんだな」
「すげーぞ、リナちゃん」
リナの魔法を見た冒険者たちはその実力に驚き素直に称賛する。
(なぜ皆さんこんなに驚いているんでしょう?)
リナは称賛を送ってくる冒険者の言葉に疑問を感じていた。
リナが今使っている魔法はAFの世界では魔法使いでは序盤に覚えることができ詠唱もそれほど難易度の高くない魔法ばかりだったし現にオーガを一撃で倒せてすらいないからだ。
魔法による援護を受けれるようになり前衛で戦う者のみだった冒険者たちは戦いやすくなり一人一人の動きも一段と良くなっていたのだがリナの魔法に気を取られてしまったため戦線が乱れ始めてしまった。
そんな様子を見かねたマチは冒険者達に発破をかけた。
「お前たち、リナちゃんに見惚れてないでしっかりやりな!」
「わかってますよ」
「お、俺は魔法に見とれてたんだよ!!」
「まったく、やられても面倒みてられないよ!!」
マチに尻を叩かれ少し乱れた戦列は元に戻りオーガを押し始める。
(よかった。皆さんも大丈夫そうですね。それにしてもこのオーガたち頑丈すぎますね)
このオーガたちは今までリナが戦ってきたどのオーガよりも耐久力が高く、リナの魔法ですら一撃で倒せないほどだった。 一匹また一匹と倒せてはいるのだがこのままでは先に冒険者達の体力が尽きて押し切られてしまう。
(だったらこの魔法ならどうですか)
「皆さん、少し強力な魔法を使います。ボクの詠唱が終わったら合図を出しますのですぐに離れてください」
「「「応」」」
リナの声に皆が反応する。
皆の返事を確認したリナはすぐさま魔法の詠唱を始めた。
「『氷精よ、我に力を与え無数の刃を、敵を貫き降り注ぎ、食らい尽くせ、アイスレイン!!』」
「今です!!」
「皆散るよ」
リナの合図に反応したマチは大声で叫んだ。
無数の氷のつぶてが飛来しオーガたちを貫いていく。
その氷のつぶての一つ一つが鋭い針のようになってありオーガの持っていた鉄製の武器ですら貫き粉砕していく。
数十匹のオーガを倒したところで降り注いでいた氷のつぶてが収まっていった。
「おお、すげえ」
「これほどとは・・・」
冒険者たちは今まで見たことのない魔法に驚いていた。
完全に氷のつぶてが降りやむとそこには大量のオーガの死骸が倒れてあり、その魔法の凄まじさを物語っていた。
「お、オーガが全滅している」
「や、やった。俺たちの勝ちだ!!」
全滅したオーガを見た冒険者たちは勝利に喜び雄たけびを上げるが、
「皆さんまだですよ」
気のゆるんだ冒険者達に注意しながらリナはオーガの死骸の向こうに視線を送った。
皆もリナの視線の先を見てみるとそこには、ほかのオーガたちよりも一回り程大きく肌が黒くなっているオーガが立っていた。
「な、なんだあの大きさは!?」
「俺も見たことがないぞ」
「私もあんなに黒いオーガは見たことがないねぇ」
マチや冒険者達はそのオーガの大きさに身震いしていた。
しかしリナはそれほどの驚きはなく自然体のままだった。
(グランオーガですか・・・こんなところに出てくるなんて、あれは皆さんでは厳しいかもしれないですね)
そんなことを思いながらどうグランオーガと対峙しようかとリナは頭を働かせていた。