本戦1回戦 激闘
『試合が始まり早速各選手達が交戦する中、未だに動きを見せないリナ選手はどのような活躍を見せてくれるのかーー!!』
リナが立ち尽くす中、実況が場内に響き渡る。
「あまり注目してほしくないのですが・・・」
何故かまだ戦っていないリナに注目が集まり始めていた。
『情報によりますと、リナ選手は予選すべての試合で一切手を出さずに勝利してしまい未だにその実力を知る者はいません!!この戦いの中で一体どんな活躍を見せてくれるのかー!!』
「「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」」
観客が盛り上がっていきリナに注目が集まっていくが、ティアの戦いにも動きが見えてきた。
「『木精よ・・・』」
ティアは魔法を発動させようと詠唱するが、辺りに木々がないため反応が無かった。
「やっぱり闘技場内では使えないか・・」
ティアは魔法を諦めて、デッシの懐に踏み込み拳を連打していく。
その連打は息もつかせぬ勢いで、デッシに密着している状況を作ってシーヴの魔法も放ち難くしていた。
『おっと、ここでシェスティア選手の連打!連打!連打!ここまで密着されてはデッシ選手の両手剣も振り抜けず、シーヴ選手の魔法の援護も期待できないぞぉ!!このまま決まってしまうか!?』
「はあぁぁ!!」
連打の終わりに大きく踏み込むと、右腕をねじり込み回転をかけながら拳を抉り込んだ。
デッシは連打の攻撃は両手剣でうまくいなしていたが、最後の一撃は危険と判断して両手剣を盾の様に構え身を護った。
ティアの拳は両手剣に突き刺さり勢いを失わないままデッシを吹き飛ばしていった。
「はぁはぁはぁ・・」
体力を大きく使う連打からの大技は流石のティアも肩で息をし始めた。
『き、決まったかー!?シェスティア選手の鋭い一撃でデッシ選手が吹き飛んでしまったー!!このまま立つことが出来なければ、デッシ選手はそこで試合続行不能。この試合には再起できません』
土煙に包まれたデッシをティアはじっと見つめる。シーヴからの魔法攻撃も警戒しているが、シーヴはデッシが吹き飛んでから微動だにしていなかった。
しばらく待って土煙が晴れるとそこには、片膝を突きながら砕けた両手剣を持つデッシの姿があった。
『デッシ選手武器を破損しているが、まだ戦闘続行可能の様子です』
デッシの姿を確認したティアは今度こそと拳を構える。デッシは砕けた両手剣を放り投げると大声で叫んだ。
「シーヴ!俺の剣をよこせぇ!!」
その声が響き渡ると、シーヴが鎧の背中部分から両剣を取り外してデッシに向かって投げる。
デッシはそれをうまく掴み取ると両剣を回してティアと構え合う。それと同時にシーヴも鞘にから剣を抜くと同様にティアへと構えた。
「ここからが本番ってわけね・・」
明らかに両手剣を使っている時よりも動きの良いデッシ、剣を構えながらも魔法を構築しているシーヴこの二人を相手にどう戦うかティアは考えを巡らせていた。
「『鎌鼬・凪風』」
ティアがデッシに連打を入れていた頃、タップの素早いナイフ捌きに対応しきれなくなったハイネは妖術で全身に風を纏い触れる者を切り刻む状態になっていた。
この状態になったハイネに切り込んでいくタップは手が少し切られた所で一瞬で身を引いた。
「危ない危ない。・・・見えない刃、風かな?凄い技を持っているね」
タップは肩を落としながら笑うとハイネはにっこりと笑い返す。
「この程度そんなにすごくない」
そうは言うが、ハイネは若干胸を張り自慢げになっていたのだった。
「ははっ。言ってくれるね。でも・・・これならどうかな?」
タップは素早くハイネの周りを動きまわると、あらゆる方向からナイフを投げ込んでいく。
ハイネは飛んでくるナイフを纏った風で薙ぎ払い、攻撃を凌いでいくが、無数に飛んでくるナイフの一つがハイネの腕を掠っていった。
「っ!?」
風を突き抜けて体に当たったことに驚いていると、今度はタップがナイフを持ったまま突っ込んできた。
「なめるな!!」
一回掠った程度で『凪風』を攻略したと思われた事にハイネは怒りを見せるが、タップのナイフが纏った風を突き抜けて迫ってくる。
「なっ!?」
ハイネは驚きながらナイフを避けると、信じられない者を見るような目でタップを見つめていた。
すると、タップはナイフを構えると面白そうに種明かしをしてくれた。
「うん。君の技は素晴らしいものだけど、まだまだ未完成だ。僕は一応風の魔法が使えるんだけど、その魔力をナイフに乗せるだけで君の纏っている風は簡単に切り裂くことが出来たよ」
タップはそう言うが、ただの風魔法の使い手ではハイネの『凪風』を切り裂くことなど出来るはずは無かった。謙遜しているがタップは相当な風魔法の使い手で間違いはなかった。
ハイネは悔しそうに唇を噛むと、『凪風』を解いて新たな術を発動させた。
「これは、防ぐことは出来ない。死にたくなかったら、防御してね」
ハイネがそう言うと、ハイネから膨大な魔力が吹き出していく。その魔力が徐々にハイネを包み込んでいくと、ハイネはぼそりを呟いた。
「『外法術・黒縄』」
ハイネが纏っていた魔力が瞬く間に無数の黒い蛇へと変化していくと、タップへ向かって伸びていった。
タップは蛇を見て急いでその場から身を引くがその速度を超える勢いで蛇はタップを追いかけていく。
「くっ」
タップがそう声をもらしながらハイネの攻撃を躱していく。タップは何とかこの状態から脱したいと考えるが、勢いよく迫りくる蛇に対応しながらハイネに反撃する事は出来なかった。
そうしている内にタップの左足が微かに蛇に触れてしまった。すぐに足を引いて蛇から脱するが、その瞬間タップの左足が動かなくなってしまっていた。
「なに!?」
左足に目をやると、蛇に掠った部分からさらに蛇が生み出されまるで縄の様にタップの足に纏わりついていた。
「もう逃がさない」
ハイネは大量の汗を流しながらそう呟くと、タップは左足が徐々に熱くなっている事に気が付いた。
「熱っ。があああああああああ!!」
タップが気が付いた頃にはすでに全身に蛇が巻きつき、全身に燃えるような熱さが広がっていた。
「今は熱さだけ、でも降参しないなら今度は燃える」
そう言うハイネの声色は今の燃えるような状況とは裏腹に凍えるような冷え切ったものだった。
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