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本戦1回戦開始!

 武闘大会本戦当日の朝、リナ達はすでに闘技場の控室の中に入っていた。

 予選の時と違い広めの控室の中にはリナとティア、ハイネの三人しかいなかった。

 リナ達の試合は今日の昼頃の予定なのだが、大会の空気に慣れておこうと言うティアの案で早めに闘技場に来ていたのだった。



「うう、帰りたいです・・」



 ティアのアイデアは裏目に出て、闘技場に集まったあまりにも多い人の数にリナは完全に怯えてしまっていた。

 何度もティアとハイネが励ますものの外から聞こえてくる観客の歓声が聞こえる度にリナはビクッっと体を反応させてガタガタと震えているのであった。



「リナちゃん、今そんなんじゃ試合が始まったら大変だよ?」

「いえ、もういいんです。ボクはここで負けでいいです」

「駄目だよ!?何言ってるの?」



 リナは完全に戦意を失いこの場から早く去りたいと本気で思っていた。

 ティアは何とかリナの戦意を戻そうと試行錯誤するが、外から聞こえてくる声が原因で何をしても部屋の隅で震えるだけになっていた。



「リナちゃんもうすぐ試合だけど大丈夫?」



 いろいろやっている内にリナ達のチームが戦う時間が迫っていた。

 ティアとハイネはすでに戦いの準備を済ませていたのだが、リナは何も用意出来ていなかった。



「ティアさん達だけで行ってきてください・・・」



 リナが涙目でそう言うのだが、この大会は3人1組のチームだから一人でも欠けるとそこで敗退となってしまう。

 メンバーの入れ替えも一度だけなら認められてはいるが、リナ達は3人しかいないので、どこまでもこの3人で戦うしかないのだった。



「もう、リナちゃんこの間言ってたじゃない。自分の実力をしっかりと確認しておきたいって。今回の大会でそれを知って目標に向かうんでしょ?」

「あ・・・」



 ティアの言葉にリナはここに何をしに来たのか思いだす。



「どうせ観客なんて今日は試合がいっぱいあるから戦いが終わったらすぐに私達の事なんて忘れちゃうよ。そう思ったら気が楽にならないかな?」

「・・・そう、ですね」



 ティアの励ましにリナは控室に入って初めて立ち上がった。



「お姉ちゃん、頑張ろ?」



 ハイネに上目遣いでそう言われてしまって、リナは自虐的に笑うとハイネの頭を撫でるとアイテム袋から『レーヴァテイン』を取り出した。

 リナは魔法杖は沢山持っているが、一番強力な力を発揮できるのはこの杖なので、今回はその力を借りる事にした。

 リナの決心が固まったその時に控室を叩く音が聞こえた。



「『淡紅の氷姫』の皆さま、試合が始まりますので準備をお願いします」

「はーい。今出まーす」



 扉を開けると、運営の人がリナ達を迎えに来ていた。

 案内に従って廊下を歩いていると、階段の下部分で制止させられた。



「この上に上がりますと闘技場に出ますので、名前を呼ばれましたら階段を上がって出ていってください。あとは審判が開始の合図を出しますので、そこから試合開始となります」

「わかりました」

「ではご健闘を」



 案内人はその場から速やかに立ち去る。リナ達は廊下に取り付けられていたベンチに腰を下ろして試合の順番を待った。

 観客の声が先程よりも大きく聞こえてきてリナの手が震えだすが、その上にティアの手が重なり「大丈夫」と励ましてくれた。

 しばらくしてから大歓声が上がり、今行われている試合が終わったことが分かった。

 階段の上からは『クラスター』の面々が悔しそうな表情をしながら降りて来たので、負けてしまったのがわかってしまった。

 『クラスター』とチラッと目があったがお互いに何も言わずにその場から立ち去って行った。

 そして、しばらく時間が経った所で闘技場から大きな歓声が上がった。



『さぁ次の試合は観客の野郎どもお待ちかねの『淡紅の氷姫』の登場だぁ!!『淡紅の氷姫』は唯一本戦に勝ち上がった女性のみのチームだ!!こちらの情報ではどの子も皆、美人で可愛いそして何より強い!!期待のチーム『淡紅の氷姫』登場してもらおう!!』



 実況の男がそう言って観客を盛り上げていた。



「・・・出たくないです」



 リナは顔を引きつらせてそう言うが、もうここまで来たのでティアに力尽くで闘技場まで連れていかれた。



「「「「わああああああああああああああああああああああああ」」」」



 リナ達が闘技場に出ていくと、観客達がヒートアップしその歓声がすごいことになっていた。

 そんな反応にティアは嬉しそうに手を振り、ハイネは迷惑そうに耳を塞ぐ。そしてリナはと言うと・・・直立したまま放心状態になっていたのだった。

 観客達が盛り上がってきた所で相手チームの入場の番になった。



『さて、人気上昇中の『淡紅の氷姫』に対するのは、こちらも前大会を知る者たちには大人気『荒野の煉獄』の登場だ!!前大会でも活躍していたリーダーのデッシを筆頭に豊富な戦闘経験を誇る強力なチーム、新人チームに戦いと言う物を教え込むのはこのチームなのか!?』



 『荒野の煉獄』の面々は、眼帯を付けた髭面をした両手剣を持った男とスラっとした長身の足の速そうな短剣を持つ男、最後に出てきたのは鎧を全身に着込んだ大きな盾を持った人物だった。

 明らかに予選に比べても相手の実力が違う事がよく分かった。

 リナも対戦相手が登場してからは気を持ち直し、その瞳は相手の力量を確認しようとしっかりと相手を捕らえていた。



『さぁ両チームそろったところで、審判が壇上に上がっていきます』



 審判が予選の時と同じように手を上げて宣言する。



「それでは本戦1回戦・・・・始め!!」



 開始の合図と共にお互いのチームが前に出ていく、ここまで勝ち上がってきたのなら大丈夫だろうと、すでにグローブを装備しながら弓を放っていた。



「『朧分身』」



 ハイネも相手をかく乱する為に分身を多く作りティアの弓と共に攻め上がっていく。



「タップは獣人の分身を各個撃破、シーヴは弓を受けながら魔法攻撃だ!!」



 リーダーであるデッシが、長身のタップ、鎧のシーヴに指示を出してティア達に対応していく。



 タップの素早い攻撃でハイネの分身が次々に消えていき、残るは本体を含んだ4体になってしまっていた。



「・・・なかなかやる」

「君もその年で大したものだよ」



 二人はそう言って言葉を交わすと、お互いに次の手を打った。

 タップが小さなナイフを無数にハイネへと投げ込んでいく、ハイネは分身と共にナイフを躱しながら次の手に出る。



「『不知火・蒼火』」



 ハイネは分身と共に手裏剣型の蒼い妖炎を回避動作と共にタップに向けて投げ付ける。

 タップはナイフを投げた状態のままだったが、ハイネの反撃に反応しうまく体をひねって攻撃を躱した。



『ななな、なんてことだー!!お互いにナイフ、炎の刃と投擲攻撃を行いましたが、華麗に回避!!あまりにも素早い攻防で実況できませんでしたが、ハイネリア選手とタップ選手の息の詰まる攻防には目が離せないぞー!!』



 ハイネが応戦している中、ティアはデッシと交戦していた。



「はぁ!!」



 ティアの掌底がデッシの懐をえぐり込むが、デッシは上手く両手剣を間に挟み攻撃を回避していく。



「ふむ。どこかで見たような体の動きだな?その体術誰に師事している?」



 デッシはティアの体術に何か感じる物があったのか、そう質問をする。

 しかしティアはしゃがみ込み足払いを入れながら言う。



「今は秘密だよ。教えて不利になったら嫌だからね」

「ふっ。それもそうだ」



 デッシは軽く足払いを躱すと半歩後ろに下がる。

 ティアが追撃しようと、前に踏み込もうとするが、デッシの背後から岩弾が飛んでくる。



「魔法!?」



 ティアが危うく岩弾を避けると、デッシの後方にいる鎧のシーヴが魔法を唱えているのが見えた。



「その格好で魔法使いなのね・・」



 ティアはシーヴを壁役と思っていたので初めにデッシを狙ったのだが、狙いが外れてしまったようだった。



「この分だとリナちゃんにも頑張ってもらわないと駄目かな・・」



 リナ達は作戦として、苦戦し始めた方にリナが参戦する作戦になっていた。

 現状はティア、ハイネ共に苦戦と言うほどの事は無く戦っていたのでリナの出番は今の所なかった。

 そのおかげで現在闘技場内でぽつんと立っているだけの女の子が一人いたのだった。



「・・・・ボクってなんの為にここに立っているのでしょうか?」

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