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武闘大会 予選2回戦

 予選2回戦が行われるまで1時間ほどの空き時間ができた。

 予選参加者たちには小さな控室が用意されていて、試合が終わるごとに交代で使うシステムになっていた。

 リナ達は2回戦までの空き時間を使って次の戦闘の作戦を立てる事にした。



「1回戦目はハイネの活躍ですぐに終わりましたが、次に戦う相手にも通用すると考えない方がいいと思います」

「そうだね。さっきの相手はものすごく弱かったし次からはチームワークも出していかないと勝てない相手かもしれないしね」



 リナの言葉にティアが同意する。ハイネは自分の力が足りないのかと不安になっていたのだが、それを察したリナがハイネの頭を撫でながら言う。



「ハイネの実力は相当なものですよ。でもこの大会はチーム戦ですから、3対1で戦うよりもボク達もチームワークで戦う方が勝機が増えますからね、期待してますよ」

「うん、頑張る」



 ハイネはリナの言葉で上機嫌になっていた。

 それから三人はある程度の連携を話し合って決めていたのだが、アルカの所で会得したものが多いティアとハイネは作戦を考えている時にはまだその内容をリナに秘密にしたままでいた。



「ちゃんと教えていただかないと作戦も立て辛いのですが・・」

「大丈夫、リナちゃんは今までの私達が出来る事の範囲で作戦を決めてくれればいいから、こういうのはピンチに使った方がカッコイイからね」

「うん、カッコイイ」



 ティア達は、勝ち上がりたち気持ちはもちろんあるが、自分の技の出しどころをより恰好良く見せたいとリナに豪語してリナを困らせていた。

 リナは渋々アルカとの修業前までの二人の情報と1回戦目で見たハイネの技を参考にいくつか作戦を立てた。



 そうこうしているうちに次の予選試合の時間が迫って来ていた。

 リナ達は慌てて控室を出ると、次に試合が行われる地下闘技場13番に向かって走っていった。



 時間ギリギリで闘技場に着くとすでにそこには審判と対戦相手が中で待っていた。



「遅れて申し訳ありません」



 リナ達が謝りながら中に入ると、審判は「まだあと5分ありますよ」と言って迎え入れてくれたのだが、対戦相手の態度はあまり良くなかった。

 対戦相手は『クラスター』と言う男三人兄弟のチームだった。

 リナ達が部屋の中に入るや否や口笛を吹いてリナ達を挑発していたのだった。

 審判との挨拶を済ませて『クラスター』の面々の前にリナ達が立つと、三兄弟は各々いやらしい視線でリナ達を見始めた。



「おいおい、女が相手かよ」

「しかも2人は子供だぜ?」

「しっかしこのねぇちゃん、どんだけ胸でかいんだよ」



 そんなことを言いながら下品な笑いを浮かべていた。

 リナ達は嫌悪感を感じながらも一応は対戦相手なので審判に促され1回戦目と同じく対戦相手と握手をするために前に出た。

 相手も同じように前に出て握手をしたのだが、突然対戦相手に手を引っ張られてリナはお尻を触られてしまった。



「ひゃっ!?」



 突然の事で何をされたのか分からなかったのだが、隣でティアが同じように手を引っ張られて胸を鷲掴みにされていた。

 すぐに身を引いて胸を庇うティアはものすごい形相で相手を睨みつけていた。



「おいおい、そんな目で見るなよ。ただの挨拶だろ?」

「こっちの子も良い尻してたぜ」

「ちっ兄貴たちずるいぞ」



 『クラスター』の面々はそう言って笑いながら自分たちの初期位置に歩いて行った。



「ハイネは何もされてないですか?」

「うん。握手しただけ」



 幸いなことにハイネには何もされていなかったので一安心だったのだが、ティアの様子が危険な物になっていた。

 リナでも恐ろしく感じる怒気をまとったティアにリナは恐る恐る話しかける。



「ティ、ティアさんは大丈夫でしたか?」

「ふふふ、大丈夫だよ。リナちゃん。あいつ等私が完全に潰すから」



 全然大丈夫には見えなかった、ティアは不気味に笑いながら『クラスター』を睨みつけて一切視線を逸らそうとしなかった。



「私の胸を触った事も許せないけど、リナちゃんのお尻を掴んでいたのも見てたんだから・・ふふふ、死刑、死刑よあいつ等は・・・」

「ティアさん一応殺すと失格になるので気をつけてくださいね」



 リナはティアにそれしか声をかける事が出来なかった。

 リナとハイナがティアに怯えつつ時間を待っていると、審判が開戦の宣言をする。



「それでは予選2回戦・・・始め!!」



 開戦の声が上がった瞬間、いつの間にかに鉄で縫われたグローブを付けたティアが今まで見たことがないスピードで相手に向かって走りだしていった。



「あっ、ティアさん!??」



 作戦を立てていたにも関わらず猛突進していったティアをリナは止める事が出来なかった。



「と言うかティアさん接近戦はヴェストレームさんに禁止されていたんじゃ・・・」



 リナがそう呟いた時にはもう三兄弟と戦闘が始まっていた。

 三兄弟は三人とも剣を使った接近戦タイプで手に持った盾で魔法や矢を防ぎながら攻め込むことが出来る、実力のあるチームだった。



「おっとねぇちゃん一人で突っ込んできたか、そんなに嫌だったか?」



 長男は笑いながらティアの横にスライドしていく。ティアが長男を追って同じように体を横にスライドさせると、次男が逆にスライドしてティアが三人に取り込まれる形になってしまった。



「へっこうなったらお前は終わりだぜ。ここからの俺達の攻撃を防ぎ切った奴は今まで一人もいねぇ」



 そう言って盾の後ろからティアに切りつけるが、今回は相手が悪かった。

 ティアは切りつけてきた、剣を受けとめるとそのまま刃の部分を握り潰してしまった。



「防ぎきる?そんなことはしないよ?今から私はあんた達を殴るんだからぁ!!」



 ティアは鬼神のごとく体術を駆使して相手の剣や盾を砕き潰し、追い詰めていく。



「・・・あれは」



 リナは目の前にいる自分の知らない鬼神の事が現実だと思えなかった。



「あれはアルカに教えてもらってた。強化魔法、グローブも特別製だから簡単には壊れない」



 ハイネは勝負はついたと言わんばかりにリナの背中にポンと手を当てた。



「でも、ティアさん一人で大丈夫でしょうか?ボク達も、戦った方がいいんじゃないのでしょうか」



 リナはティアが一人で戦っている事が危険ではないかと思ったのだが、ハイネはそれを否定した。



「さっき戦ってて思ったけど、皆ヴィトニルに比べたら全然遅い、あれならまず私達には当たらないよ」

「そ、それは比べる相手が悪いと思います・・・」



 当たり前の様に相手をヴィトニルと比べていたハイネにリナは苦笑いをするが、ティアも同じようにそう思っているなら大丈夫なんじゃないかと、そう思うリナだった。



「ひ、ひいいいいいいい」

「なんだ?なにがおきてるんだ?」

「というか俺は何もしてないんだが?」



 三兄弟はティアから逃げながらそう叫ぶが、身体強化しているティアからは逃げきれず一人一人ボコボコに殴られていったのだった。



「・・・・『クラスター』全員気絶・・・勝者『淡紅の氷姫』!!」



 審判も試合前のやり取りをしっている為、特に咎めようとはしなかったが、完全に顔面の形が変わっている『クラスター』を見て若干引き気味にそう宣言していた。

 予選に勝利したリナ達は、審判に地下闘技場1番に向かうように言われたのだが、そんなことよりティアの状態が気になって仕方が無かった。



「ティアさん大丈夫ですか?」



 未だ興奮気味のティアに恐る恐る声をかけると、ゆっくりとティアがリナを見て大きく呼吸をする。



「ふーーー。・・・うんもう大丈夫」



 ティアはようやくいつもの笑顔をリナ達に見せると、ボコボコにした『クラスター』を見ながら一言、言った。



「セクハラする奴はああなって当然だよ」

「同感」



 ティアの言葉にハイネも同調していた。

 こうして無事に?予選を突破したリナ達『淡紅の氷姫』だったのだが、



「・・・あれ?ボク何もしてないんじゃないですか?」



 リナは予選中自分が何もしていなかったことに今気づいたのだった。

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