武闘大会申し込み
ラウラ達と同行する事になった道中、特に大きな問題も無くもう少しでエクリスに着く頃になる。
馬車の中でラウラ達の事を聞いたり自分たちの事を話したりと、リナ達はより一層仲良くなっていた。
ラウラはこの大陸の『法聖国アニマジューレ』と言う国出身の剣士との事だった。
アニマジューレとはこの大陸で一番国土の小さい国だが、最大の戦力を誇る強国でどの国に対しても完全中立だとラウラは語った。
ラウラ自身は歳はティアと同じ17歳で、幼い頃から騎士になる為に剣の修行をしていて、今回はある目的の為に武闘大会に参加しに来たと言う。
同じくラウラの仲間であるクロックとグラフも同じようにアニマジューレ出身でラウラと共に行動していると言う事だった。
しばらく馬車に揺られていと、エクリスの町がようやく見えてきた。
「あれがエクリスか~」
ティアがそう呟く。
リナもその立派な町並みに心を奪われていた。
エクリスは町の中央にコロッセオに似ている大きな闘技場が建っていて、闘技場を中心に町が広がっていた。
エリクスは武闘大会が主な名物として目立ってはいるが、実は錬金術でも実績のある町だった。
しかし今回は武闘大会が近いという事で錬金術としての顔は無く。町のいたる所で各地の商店が露店を出し、まだ大会まで20日以上あると言うのに大いに盛り上がっていた。
リナ達はエクリスに問題なく入ることが出来たので、まずは宿探しを始める事にした。
「リナちゃん達、宿探すの?」
「はい。先に見つけておかないと後で大変ですから」
リナがそう答えると、ラウラはリナの手を引いて言う。
「だったら私達と一緒の宿にしようよ。闘技場からも近いし綺麗で安全な宿だよ」
リナはラウラに手を引かれる形でエクリスの中を歩き、闘技場が近くに見えて来た頃合いにラウラが足を止めた。
「ここだよ。この町に来たときはいつもここを利用してるんだ」
ラウラに案内された宿は、国境の町の宿と同じように表は豪華な造りになっていた。リナは高そうな宿だなと思ったが、付近の宿を見渡してみると、どこも同じように豪華な造りになっていたので、この国ではこの作りが基本なのかと考えを改めた。
リナ達はラウラに促されるように宿の中に入ると、思ったよりも宿代も安く、ラウラの言う通りに綺麗な宿だったので、この宿に決める事にした。
さすがにラウラ達とは宿の部屋は離れているが、しばらくは行動を共にすることになった。
リナ達はまずは闘技場へ参加の申し込みに行く事にした。
闘技場までの道には屈強な戦士達が行き来していて、大会までまだ日があると言うのにビシビシと闘気をリナやラウラ達は感じていた。
「うん。やっぱりこの空気はいいね。早く戦いたいものだね」
ラウラがそう言うと、すぐにクロックが窘める。
「ラウラいつも言っているが、すぐに調子に乗る癖は直せ」
「うう、わかってるよ」
注意されているラウラを見てリナ達が笑っていると、闘技場入り口に大きなカウンターが広がっていた。
「あそこで受付をしてるのでしょうか?」
「たぶんそうじゃないかな。実は私もこの町には何度か来た事があるけど実際大会に参加するのは初めてなんだよねって事で聞いて来るね」
ラウラはそう言いって走っていくと、すぐにリナ達の元に戻って来た。
「ここで受付であってるってさ。あっちのカウンターが空いてるみたいだから行こうよ」
リナ達はラウラについて行って闘技大会の申し込みカウンターに着いた。
「大会参加の申し込みでしょうか?」
カウンターに着くと受付のお姉さんがそう問いかけてくる。
「はい。お願いします」
初対面の人と話すのが苦手なリナに代わってティアが受付を行う事になっていた。
三人もカウンターの前に集まるのも気が引けたのでティアに任せてリナとハイネは少し離れた場所で待っていることにした。
「かしこまりました。こちらの用紙に記入をお願いいたします」
ティアは黙々と申し込み用紙に記入していき書き終わると受付に紙を渡す。
受付のお姉さんは紙を眺めて記入漏れがないことを確認すると、三人分の腕輪をティアに渡した。
「こちらは大会参加者へお配りしている証明代わりになる腕輪になります。大会3日前に予選会が行われますのでその時はこちらを装備してお越し下さい。詳しい事はこちらの用紙に記入されていますので、確認をお願いいたします」
「わかりました」
ティアは腕輪と紙を受け取ると、カウンターを離れてリナ達の元に戻ってくる。
受付のお姉さんに聞いた説明をリナ達に再度ティアが説明して紙をリナに渡した。
リナが紙を見ていると気になる点が何点か見つかった。
「ティアさん。大会って三人一組のパーティ戦なんですよね?」
「うん。そうだよ?」
ティアが当たり前だよと言った顔でそう答える。
しかしリナは肩を落としながら紙を指して言う。
「ここに大会本戦出場パーティは個人戦にも参加と書いてあるのですが・・・」
「へ?・・ほ、ホントだ」
ティアは本当に知らなかったようで紙に書かれていることに驚いていた。
「ま、まあそれは後で話すとする事にしまして、・・この『淡紅の氷姫』ってなんですか?」
「え?私達のチーム名だよ?」
ティアは「何言ってるの?」とリナに聞き返す。
「いや、これちょっと変じゃないですか?」
「そんな事ないよ?ね、ハイネちゃん?」
「うんいい名前」
ハイネもティアの答えに頷く。
リナは嫌な予感がしてティアに訊く。
「あ、あの・・このチーム名って誰が決めたんですか?」
「んーみんなで意見を出し合って最終的にはアルカさんが決めたんだったはず」
「・・・やっぱり」
こんなチーム名を思いつく犯人はアルカの他に想像つかなかったリナだったのだが、こんなチーム名じゃ氷の魔法を使う自分が嫌でも目立つのでは?とリナは大会が始まる前から嫌な予感でいっぱいのリナだった。
「うう、帰りたい・・・」
リナがチーム名の事でテンションを下げていると、ラウラ達も登録を終えて戻って来た。
「そっちは終わった?」
「うん終わったよ」
「よし。これで大会までやることは終わらせたし・・・早速観光だー!!」
ラウラはテンションMAXで腕を上げると、ティアも「おー」と腕をあげ、ハイネが観光と聞いて「お菓子ー」と言って同じ様に腕を上げていた。
元気いっぱいの面子のその横で項垂れていたリナ。それに気づいたこっそりとクロックが「大丈夫か?」と聞いてくれたその優しさにリナは静かに嬉し涙を流していた。
「お姉ちゃん早く、早く」
「ちょ、ちょっとハイネ、待ってください・・」
リナはハイネに腕を引っ張られながら、ラウラ達の観光に付き合う事になったのだった。
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