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旅の同行者

「君たちさっきはごめんね」



 ラウラと呼ばれていた女性は先程リナ達に向かって小剣が投げられた事を気にして直接謝りに来たのだった。

 何を言われるのかと構えていたリナ達だったが、素直に謝ってきたラウラに手を振りながら答えた。



「い、いえ。さっきの男の人が飛んでくる前に止めてくれたんで。だ、大丈夫ですよ」



 リナがそう答えると、ラウラは悪戯顔になっていった。



「ふふっ。そんな事言って、別にクロックが止めなくても君たちならあれ位どうとでも出来たでしょ?」



 ラウラはリナ達の実力があれ位余裕で回避出来るのがわかっているかの様にそう話していると、ラウラの後ろから二人の男性が歩いてきた。



「ラウラ。お前謝るのか挑発するのかどっちなんだ?」



 そう言ったのは先程小剣を止めた帽子の男性クロックだった。



「しょうが無いよ。ラウラはこう、なんて言うか馬鹿だし・・」



 そう言ったのは先程の騒動には一切関わらなかったこれと言って特徴のない地味な風貌の男性だった。



「はぁ?なんで私が馬鹿なのよ!!」



 ラウラが怒るがクロックがそれを無視してリナ達に向き合った。



「さっきは済まなかったね」

「い、いえ、だ、大丈夫でした・・」



 リナが初対面の人だった為、少々どもりながら答えるとクロックはキョトンとし「ああ」と呟き自己紹介を始めた。



「済まない。初対面で失礼だったな。俺はクロックって名前だ。こっちの馬鹿はラウラ。で、こっちがグラファリーキリゲス。グラフって呼んでやってくれ」



 クロックはそう自己紹介を終えたのだが、リナはまさかこんな特徴のない男性の名前が特徴的な名前とは思わず驚いていた。

 反応のないリナにクロック達は首を傾げたのだが、何も返事をしなかったリナに代わってティアが自己紹介を始めた。



「紹介ありがとうございます。私はシェスティア。ティアでいいわ。でこっちがリナちゃんとハイネちゃん・・・じゃないやハイネリアちゃん」



 ティアに紹介されたハイネはペコリと頭を下げて挨拶をし、リナはやっと我に返って頭を下げる。

 お互いの自己紹介が終わった所でラウラが勝手にリナ達のテーブルに座って言う。



「ティア達も今度の武闘大会に出るんでしょ?」

「うん。そうだよ」

「私達も出るんだ。・・そうだ、よかったらエクリスまで一緒しない?エクリスの事だったら詳しいし案内するよ?」


 

 ラウラはそう言ってエクリスまでの同行を提案する。クロックとグラフは特に文句も無いのかラウラの後からリナ達の反応を確認していた。

 ティアはラウラ達が面白いと思って同行は賛成だったので、リナとハイネにどうするか確認を取る。



「ティアさんがいいならボクはそれでも大丈夫ですよ」

「お姉ちゃんが良いならいい」



 ハイネは相変わらずリナの意見に合わせる。リナもラウラ達が悪い人間には見えなかったしお互いの交流は基本的にティアがやりそうであった為、特に反対はなかった。



「おっ、そっちのメンバーも問題ないみたいだね」

「うん。これからよろしくね」



 話を聞いていたラウラは特に反対意見が出なかったので、同意と見てそう言うとティアも頷きお互い握手を交わした。



「うん。やっぱり強いね」

「え?」



 握手をしたラウラがそう呟いたのでティアが反応すると、ラウラは笑いながら言う。



「いやね、握手をしたら相手がどれくらい強いか大体わかってくるんだよ」

「へぇすごいね」

「ははっ。ありがとう。こんなに素直な強さを持ってる人に会うのは久しぶりだよ。大会で戦うのが楽しみだな」



 ラウラは好戦的な事を言いながら手を放す。

 クロック達はラウラの後ろで呆れたように頭を押さえていたが、その時のリナ達は何に呆れていたのかは分からなかった。



「リーダーのティアの実力がこれなら、そこそこな所までは勝ち抜きそうだね」



 ラウラがそう言って笑うと、クロック達は「また失礼な事を」とラウラの頭を叩く。

 そんな光景を見ていたリナはラウラがそう言った性格の人間なのか掴んできた所で、先程暴れていた男達を捕まえに来た警邏隊の人たちが騒動の中心にいたラウラにも話を聞きたいとの事で話しかけて来た。

 いろいろと訊かれる事が多そうだったので、明日の出発の時間をお互い伝えてその場は解散する事になった。

 その後やっとリナ達のテーブル料理が運ばれて来た時に店員に迷惑を掛けたのでと、その日の食事代を無料にしてもらいなんだか得をした三人だった。



 

 食事を取った後、宿の部屋に戻ると、ティアがリナに申し訳なさそうに質問をする。



「リナちゃんは本当に良かったの?」

「なにがですか?」



 ティアの質問の意味が分からなかったリナはそう訊き返す。



「ラウラさん達との旅の事だよ」



 ティアは本当はリナが無理をしてティアに合わせたのではないかと心配していたのだった。



「大丈夫ですよ。ラウラさん達はいい人の様ですし、それにこの先の国の事をボク達は何も知りませんから、前もって案内してくれる方と一緒に同行出来るのでしたら断る理由もありませんよ」

「そう。よかった」



 ティアはリナにもしっかりとラウラと同行する理由がある事を聞いて安堵のため息を漏らす。

 その後は三人とも簡単な魔力操作の修業をしてから眠りについた。





 夜が明けてリナ達が自分たちの馬車の元へ行くとすでにラウラ達が待っていた。



「おはよー、遅かったね」



 ラウラがそう言うが、本人も眠そうに目をこすっていた。

 ティアがその事につっこむとラウラは少し顔を赤くして言う。



「べ、別に旅が楽しみで昨日寝れなかったわけじゃないんだからね!」



 聞いてもいないのにそんなことを言うラウラにリナ達三人はほんわかした気持ちでラウラを見ていた。



 そんな会話をしていると、御者の人たちが出発すると言うのでお互い馬車に乗り町を出る。



「・・・でなんでラウラさんがこっちに乗ってるの?」



 いつの間にかリナ達の馬車に乗り込んでいたラウラにティアが言う。



「いやぁ、この頃ずっとクロック達と一緒に旅をしていたから女の子と話す機会が全然なくってね」

「そうなの?」

「うん。それに昨日は戦いがあったから気分も高揚しちゃって悪いこと言っちゃったかなって思ってね。謝りにもきたんだ」



 ラウラはテンションが上がると好戦的になってしまう性格と自分で自覚していたので、昨日の事を早く謝りたくてついついこっちの馬車に乗り込んだのだった。



「そうだったんだ。私は別に何も気にしてなかったよ」



 ティアがそう言ってリナとハイネもそれに同意した。



「よかった。じゃあ改めてよろしくねティアちゃん、リナちゃん、ハイネリアちゃん」

「よろしくラウラさん」

「よろしくお願いします」

「よろしく。私はハイネでいい」



 リナ達は改めて挨拶を交わす。

 昨日と打って変わって女の子らしいラウラに驚きはしたが、こっちが素らしく話しやすかったのでリナもすぐに打ち解ける事が出来たのだった。

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