オーガ来襲
「リナ姉、リナ姉!!」
早朝部屋の扉を叩く音がリナの眠りを妨げていた。
「リナ姉早く起きてくれって大変なんだ!!」
扉の向こうでサムが何やら叫んでいるがリナは前日夜遅くまで逃げ出す準備をしていたため睡魔から逃れられずにいた。
何度か扉を叩く音が聞こえていたのだがそれを無視していると突然扉が開いた。
「リナ姉起きろって大変なんだ!!」
「ん?サム君?」
流石のリナも部屋にまで侵入されると起きざるをえなかった。
「そんなに慌てて何かあったんですか?」
そう尋ねながら上半身を起こすと寝間着として来ていたナイトウェアの胸元がはだけているかっこうになっていた。
その姿を見てしまったサムは慌てて後ろを向いた。
「と、とにかく早く着替えてくれ町の外にオーガが出たんだ!!」
「オーガくらいでしたら町の高ランクの冒険者の方でしたら倒せるでしょう?」
サムの慌てようにリナは不思議そうな顔をして答えた。
オーガは力は強いが動きが鈍い魔物とされCランクとして設定されていたのでCランクの冒険者だったらもちろんのことBランクの冒険者がいれば余裕で対応できる魔物だったからだ。
「違うんだよ!!オーガが大勢で攻めてきたんだ」
「大勢で!?それはおかしいですね」
そもそもオーガという種族は群れで行動することがない魔物だったので大勢でそれに町にせめて来ることなんてリナがこのまちに来てから一度もなかった出来事だった。
「だから町のみんなや低ランクの冒険者は逃げるようにって」
「マチさんは?」
「母ちゃんは戦いに向かったよ」
「え?」
「母ちゃんあれでも昔冒険者だったんだ。まあそれは今はいいや、ということだからリナ姉さっさと逃げるぞ」
「・・・わかりました」
リナは着替えを済ませると念のために昨日準備した物をアイテム袋に突っ込むとサムと共に宿から出て行った。
「どこまで逃げるんですか?」
「こういう時に集まることになってる広場があるんだまずはそこまで走るぞ」
「わかりました」
大通りや路地などを通って近い道を走っていると町のみんなが集まっている広間についた。
広場には町の人や低ランクの冒険者などでいっぱいになっていた。
「まずは女子供はこれに乗ってくれ、男はそのあとだ」
混乱しないよう冒険者ギルドの職員が皆を先導していた。
「まずは女だ君もこっちに」
冒険者の一人が手引きをする。
「ほらリナ姉呼んでるぞ・・・リナ姉?」
サムが辺りを見渡してもリナの姿がそこにはなかった。
「ごめんなさいサム君」
リナは広間に着いたとたんに踵を返しマチ達が戦っているであろう方向へ走り出していた。
それはマチが心配だったこともあったのだがそれ以上に広間にいた数名の騎士姿を見て反射的に逃げてしまっていたのだった。
「あれはたしかにエクラドの騎士でした、やっぱり昨日の話の騎士はエクラドからボクを探しに来ていたんだ」
町のはずれの方まで走ってくると数名の人間と20匹弱のオーガが戦っていた。数名の人間の中の一人はリナのよく知る人物、マチの姿があった。
オーガとの戦いは若干人間が不利な状態にあった。この町での最高ランクの冒険者は現在別の依頼で町を離れていたし残った冒険者も一番高くてCランクの冒険者が数名残っていただけであった。マチも昔は冒険者だったのだがそのランクはCランクとても数匹のオーガを一人で対応することはできない。
エクラドの騎士も戦いに参加していたがそれでもオーガの数に及ばずじりじりと押され始めていた。
そんななかリナは戦場へと走り出した。
「マチさん!!」
リナが大声で呼ぶとマチは幻でも見たかのように驚いた。
「リナちゃん!?」
「はい」
「なんで来たんだい!!」
「一応ボクも冒険者ですし」
「リナちゃんはまだĒランクだろう、それにオーガにつかまった若い女はどんな目に合うかなんて考えるまでもないだろうからこの戦いには若い女は来ていないんだよ!?」
「それもわかってます・・・それに」
リナが声を途切り詠唱を始める。
「『氷精よ、我に力を与え三つの鏃を。アイスアロー!!』」
三つの矢がマチに迫っていたオーガに突き刺さった。
「それにボク、これでも結構強いですから」
「リナちゃん・・・」
「まずはこのオーガをどうにかしましょう。ほら、次来ますよ」
「はっ。またリナちゃんに借りができちまうねぇ」
「大丈夫ですよ貸しになんかしませんから」
「リナちゃんだ」
「あの子か」
「俺たちも女の子に負けてられねえぞ」
突然のリナの参戦とその活躍に押され始めていた冒険者たちの士気がぐっと上がりオーガを押し始めていた。
一方でオーガと応戦していた騎士たちはボソッと呟いていた。
「リナ姫さま・・・」
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