ハイネリアの冒険?
ある日の事、センテリスで魔王化と言う危機から助けられた少女、ハイネリア・フォン・リファントは一人冒険者ギルドにやって来ていた。
いつも共に行動ている。二人は今日は一緒にいなかった。
リナはアルカの所に一人呼び出され、ティアはヴェストレームの所に修行に行っていた。
ハイネは二人に宿で待っている様にと言われていたのだが、最近Fランクとはいえ冒険者となったハイネは、留守番しなければいけないほど子供ではない。と言う気持ちが芽生えていた。
ハイネはセンテリスで暮らしていた頃は、母親に甘えてずっとくっついて暮らしていたので、自分と歳の近い子の知り合いはいなかった。
しかし、リナ達と出会ってから、自分と2歳しか違わないリナが立派に冒険者として活動してるのを間近で見ていて、ハイネはリナを尊敬して自分もリナと一緒に活躍したいと言う気持ちが強くなっていたのであった。
そんなハイネは今日、自分にも出来ると言う気持ちが勝ってしまいついに、意を決して一人で仕事を受けに冒険者ギルドまでやって来たのであった。
ハイネはまず仕事を受ける為に依頼を探すが、ハイネの身長ではなかなか依頼が張ってある掲示板をうまく見ることが出来なかった。
どうしようかと迷っていると、知り合いの受付嬢メイルがハイネに声をかけてきた。
「ハイネリア様、おはようございます。今日はリナ達や的ティア様と一緒ではないのですね」
と、メイルが挨拶してきたのでハイネもぺこりと頭を下げる。
ちょうどいい所に来てくれたと思い、困っていることをメイルに伝えるとメイルはクスクスを笑いながら言う。
「そうですね。確かリナ様も前にこの掲示板は見づらそうにしていましたからね」
と言って笑っていた。
ハイネは、お姉ちゃんも見難いのならこの掲示板が悪いんじゃないのかと思い始めた。しかしメイルはハイネの手を取って受付カウンターへと案内した。
「あそこに張ってある依頼は、定期的に行わなければならない魔物の討伐などの依頼を主に張っている場所ですので、やりたい依頼がある場合は、私達受付の人間お声をかけて頂ければ、希望に沿えた依頼をご案内いたします。リナ様のような優秀な冒険者の方は定期依頼よりもこちらの依頼を受ける頻度が多いのであまり掲示板を見ることは無くなりましたね」
メイルはそう言って、カウンターの下から分厚いバインダーを取り出した。
「ハイネリア様は今日は依頼をお探しですか?」
「うん」
ハイネは、リナが優秀な冒険者と聞いて自分の事の様に喜びさっきまでの不満は吹き飛んでいた。
メイルはハイネの様子を見て少し大袈裟に一つの依頼書を提示した。
「ハイネリア様。申し訳ありませんがこの依頼を受けて頂けませんでしょうか?」
ハイネは提示された依頼所を見てこの依頼?と言う表情でメイルを見た。
「これ?」
「はい。お願い出来ないでしょうか?」
ハイネがこの依頼を受けるのを渋っていたのは、この依頼が荷物の配達の依頼であり、誰でも出来るような簡単そうな依頼だったからだ。今日のハイネはリナに近づく為に少しでも難しい依頼を受けたかったので、こんな簡単な依頼を受けるのは嫌だったのだ。
しかしメイルはそれを察しているのか続けて言う。
「確かにこの依頼は簡単の様に見えますが、こちらのミスで今日中に荷物を運ばないといけない時間制限ありの依頼になります。ただの荷物運びなら誰でも受けて頂けますが、時間制限がある依頼は私共の信頼を受けている方にしかお任せする事が出来ない依頼なのです」
「信頼?」
ハイネがそう聞き返す。信頼とは言っても自分はこの間Fランクになったばかりの冒険者だ。そんな自分がギルドの職員から信頼を受けるほどの依頼を受けれるとは思っていなかった。
メイルはハイネの疑問を受けているような表情を見て話を続けた。
「はい。ハイネリア様はあのリナ様と同じパーティで活躍されている一人です。それならば私共としては依頼をお願いするには問題のない人材なのです。どうか依頼を受けて頂けないでしょうか?」
ハイネはメイルの言葉に納得した。確かにリナだったらギルドに信頼されていても不思議じゃない。その仲間の自分も同じように期待されているのだとハイネは思った。
それが嬉しくなったハイネは、リナなの顔に泥を塗らないようにこの依頼をしっかりと遂行しようと考えて依頼を受ける事に決めた。
「ありがとうございます。荷物の運び先はこちらになるのですが、まずはこちらのお宅に伺って荷物を受け取りに行ってください」
「わかった」
ハイネはメイルから地図を受け取ると意気揚々とギルドを出ていった。
ハイネが出ていったあと、アマリアがメイルに話しかける。
「ねぇメイルさん。ハイネたんに依頼した仕事って期限そんなに迫ってましたっけ?」
「いえ、まだ余裕のある依頼ですよ」
「だったらどうして嘘を?」
アマリアはメイルが嘘を言ってまで依頼を案内した事が不思議で仕方がなかった。
「それは、ハイネリア様が事を急いていましたからね。リナ様やティア様に認めてもらいたくて今日は独断で来たのでしょう。確かにハイネリア様はもう立派な冒険者ですがまだ12歳一人で無茶な依頼はさせられませんからね」
メイルはハイネの事を考えて簡単な依頼を難しい依頼として受けてもらう事にしたのだった。
「あら?いいんですか?職員が冒険者に肩入れしても」
アマリアはからかうようにメイルに言う。それは普段アマリアがメイルに言われている台詞だった。
それを聞いたメイルは少し赤くなって言う。
「ほら、余計な事は言わないで仕事をしてください!!」
「りょーかいでーす」
アマリアはそれ以上言わずに自分の仕事に戻っていった。
その頃ハイネはと言うと・・・道に迷っていたのだった。
「ここどこ?」
メイルに渡された地図の通りにまっすぐ歩いていたはずなのに地図には書いていない店の名前があたりに書かれていた。
「むぅ。どこかで間違えた」
メイルはそう考え来た道を戻ろうとした時だった。
「おい、お前ここで何をしてるんだ?」
ハイネが声のした方向を見ると、歳は変わらないであろう少年が木の棒をハイネに突き付けながら立っていた。
何者かと思ったがただの子供だったのでハイネは、
「迷っただけ」
と言って立ち去ろうとすると、少年はハイネの腕を掴んだ。
「お前これからどこに行くつもりだ?」
「迷ったから戻る」
「どこに戻るんだ?家か?」
少年がそう聞いてきたのでハイネは自分が今住んでいるのは宿だからと思い、
「家ない」
と答えると少年がさらに質問を重ねてくる。
「お前の親はどこにいるんだ?」
「死んだ」
ハイネは淡々とそう答えると少年はハイネの腕を引いて歩き始めた。
「なに?離して」
「いいからついてこい」
ハイネはこの子供を妖術で倒そうかとも考えたがリナに一般の人を傷つけたらいけないと言われていたので思いとどまった。
リナには自分に危害が加わりそうなら仕方がないとは言っていたが、この少年はどう見てもハイネに危害を加えられるほど強くは見えなかった。
それでも何とか離れようとハイネは抵抗したが、思いのほか少年の握力は強くハイネは少年の手を振りほどく事が出来なかった。
その結果ハイネは少年になされるがまま連れていかれる事になったのだった。
少年に連れられてしばらく歩いていると、それほど大きくないが立派な家に連れて来られた。
少年はそのままハイネの腕を引いて家の中に入っていく。
「ミトさーん、ミトさんいるー?」
少年がそう声を上げると家の奥から20代半ばほどのほっそりとした美人と言う程ではないが顔立ちの整った女性が姿を現した。
「はいはい居ますよ。あら?シバ、どうしたのその子?」
ミトがシバと呼ばれた少年にそう言うと、シバは腕を掴んでいたハイネを前に出して言う。
「こいつ親が死んだってさ。そこの道で迷ってたから連れて来たんだ」
ミトはシバの言葉を聞くと、静かにハイネを抱き寄せた。
「そう大変だったわね。でも、もう大丈夫よ。安心なさい」
と言ってハイネの頭を優しく撫で始めた。
「????」
ハイネは、今何が起きているのかが、理解が及ばすに頭に疑問を浮かべ続けるのであった。
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