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見習い卒業依頼

「リナちゃんこれ見てみて!!」



 リナとハイネが宿の食堂で朝食を食べていると、ティアがものすごい勢いで食堂の中に入ってきた。

 ティアはリナ達が座っているテーブルに一枚の紙を広げた。



「『武闘大会開催決定!!力に自身がある者よ集え!!』って、これなんですか?」



 リナは広げられた紙に書いていた文言を読むと、ジト目でティアを見つめた。

 ティアはそんなリナの視線を気にも止めずに説明を続けた。



「ここ、ここ見て。優勝者にはアイテム袋進呈だって。それに優勝できなくてもいろいろと景品があるみたいだから出てみようよ」



 ティアは興奮気味にそう言う。

 リナとハイネはあまり興味がなかったので話半分で聞いていたのだが、そんな二人の態度にティアが言う。



「ほらハイネちゃん。武闘大会が開かれる町でお祭りがあるみたいだからおいしいお菓子もたくさんあるかもしれないよ?」



 ハイネはティアの言葉にピクリと反応する。



「リナちゃんも、前にアイテム袋の手に入れ方を知りたがってよね?もしかしたら聞けるかもしれないよ?」

「うっ・・・」



 ティアはリナとハイネが釣れるような言葉を並べて大会に参加しようと進めていく。

 しかしリナが紙に書かれていた参加条件の部分を指摘した。



「ティアさん、ここに参加資格は三人のパーティで一般人は不可。と書いてあるじゃないですか。ボクとティアさんは冒険者だから条件を満たしていても、ハイネはまだ一般人じゃないですか」



 リナはそう言って参加は出来ないと言う。

 この紙に書かれている一般人と言うのは基本的に非戦闘の仕事をしている者の事を指す。冒険者や騎士、軍人はもちろんの事、武芸者なども参加資格は有りと判断されるのだが、見習い冒険者のハイネはまだ非戦闘者として考えられる為、大会の参加は出来ないはずだった。

 しかしティアは別の紙を取り出してリナの言葉を否定した。



「ほら、これ見て」



 リナはティアの取り出した紙を見ると、ハイネのFランク昇格依頼の用紙を取り出した。



「これは?」



 リナが出された紙に驚いているとハイネが思い出したかの様に言う。



「あ、メイルが昇格出来るって言ってたからお願いした」

「え?」

「お姉ちゃんに言うの忘れてた」



 ハイネはそう言って朝食を食べる作業に戻った。



「という事だから、ハイネちゃんのランクが上がったら大会に参加しに行こうよ」

「と、とりあえず大会までは一ヶ月以上ありますから今後考えるとして、まずはハイネのランクの事です。昇格の依頼ってなんなのですか?」



 リナがそう言うと、食堂の奥からトキが現れた。



「ハイネへの依頼はワタシから出したにゃ」



 そう言いながら、テーブルに頼んでもいないデザートを置く。



「トキさんが依頼を?でもどうして?」



 リナがそう聞くとトキはハイネの頭を撫でながら言う。



「んにゃ、前にハイネが二人の力ににゃりたいって言ってたからにゃ、実力もある事だしメイルと相談して決めて来たにゃ」



 トキはそう言って胸を張る。

 ハイネが来てからトキはずっとハイネを可愛がっていた。同じ獣人でこの街では珍しい方だからか、ハイネには異常に積極的にかかわるようにしていたのだった。

 ハイネもトキを気に入っていたので、仲は大変良くリナの次になついていたのだった。

 それを知っていたリナはその背後でこんなことを進められていた事に「甘過ぎなのでは?」と肩を落とすしかなかった。



 気を取り直してリナは依頼書を見る。



『バイタルボア一匹の討伐。クロッキー二羽の討伐。共に肉は冒険者宿で買い取りの為、討伐時注意』



 と、書いてあった。



「バイタルボアとクロッキ―ですか、Fランクでも難しい依頼なのでは?」



 リナがトキにそう言うとトキは、



「大丈夫にゃ。この依頼はハイネだけじゃ無くて、ワタシもついて行くからにゃ」

「トキさんも?」

「心配にゃらリナもついて来るといいにゃ。これはハイネが戦えるのかを見るのがメインだから一人で行く必要は無いにゃ」



 トキが言うように実際Fランクになる為には試験などは無いのだが、12歳以下の子供に関しては一定の実力を示さなければFランクになることは出来ない。

 今回はトキが同伴者としてその能力の見極め係になったと言う事だった。

 ティアは事前にそれを聞いていたので同伴を決めていたのだが、リナは今まで聞いていなかったので説明が急な話になったのだった。



「で?リナちゃんどうする?この後ハイネちゃんの依頼に行くけど、ついて来る?」



 ティアが悪戯顔でそう言うとリナは、顔を赤くして言う。



「行きます。行きますよ!!」



 流石のリナも保護者としてハイネの依頼について行かない選択肢は無かった。



 こうしていつもの三人にトキを入れた四人は、アレントの西部に向かう事になった。

 アレントの西部は南の平原ほど見晴らしが良いわけではないが、それなりに見渡せる程度には視界を遮る木々は少なかった。

 ここにはバイタルボアもクロッキ―も生息している地域なのでまずはバイタルボアを狩ることに決まった。



「バイタルボアってどんなの?」

「バイタルボアは普通のボア系の魔物よりもより活発に動いているのが特徴ですね。その頭部にはこぶがあって、そこをぶつけあって縄張り争いをしている魔物ですね」



 ハイネの質問にリナはすらすらと答える。



「ちなみにクロッキーは大型の鳥で名前とは違って色鮮やかな鳥ですね。どちらの魔物もお肉がおいしいらしいですよ」

「お肉、はやく食べたい」



 ハイネはリナの説明で魔物よりもその肉の味に関心がいってしまっていた。そんなハイネが肉に思いをはせていると、ティアがバイタルボアを見つけた。



「あっちにバイタルボアがいるけど、どうするの?私がやる?」



 ティアがそう言うとトキがティアを制止した。



「待つにゃ、まずはハイネに戦ってもらうってから難しそうにゃらワタシ達も手伝うにゃ」

「了解。ハイネちゃんは大丈夫?」



 ティアがそう聞くとハイネは、



「大丈夫、余裕」



 と、言ってバイタルボアに接近していった。

 リナはそんなハイネをハラハラしながら見守っていたのだが、その心配は杞憂だった。



 ハイネはバイタルボアの近くまで行くと、数体のスケルトンを召喚してバイタルボアと戦わせた。

 スケルトンはバイタルボアの攻撃一撃で潰されてしまうが、ハイネは次々とスケルトンを召喚していく。

 そして、バイタルボアの動きが止まった時にハイネはバイタルボアに駆け寄っていった。



「炎剣」



 ハイネは妖術で手に炎を漂わせると、それが剣の形を模り始める。完全に剣の形になった炎をバイタルボアに突き立てるとバイタルボアはその場に倒れ込み絶命していた。

 残った三人はハイネのあまりにも華麗な攻撃の流れに言葉が出なかった。



(最近、ヴィトニルさんと何か練習していると思っていましたが、これの練習だったのですね)



 ハイネはトコトコとリナ達の方へ駆け寄ってくると、



「バイタルボア倒したけど、重い」



 と言って自分が見習い冒険者としては異常な成果を出した事は気にも止めずにそう言った。

 リナとティアはある程度ハイネの実力がわかっていたので、すぐに反応したのだが、トキは何拍か置いてから、



「にゃ、にゃ、にゃんでこんにゃに強いんにゃーーー!!???」



 と、我に返ったトキの叫び声が辺りに響き渡った。

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