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王都バラカからの依頼

 リナ達が修業を始めてから1か月の月日が経っていた。

 夕暮れ過ぎに魔物討伐の依頼を終えてギルドに戻って来たリナ達はいつもより賑やかなギルド内に多少の疑問を感じながらも依頼完了登録の為にカウンターに向かった。

 カウンターに着くと一つ空いているカウンターがあったのでそこに向かうと見知った人が受付をしていたのだがそれを見た二人の表情が全く違っていた。

 リナは受付嬢を見た瞬間少し顔をしかめ、逆にティアは満面の笑みで受付嬢に話しかけた。



「アマリア、依頼終わったから完了登録おねがーい」

「りょーかーい、じゃあ討伐部位出して」



 受付嬢アマリアの指示通りに討伐部位を提出して登録を行っていると、アマリアが下品な表情でティアに話しかけた。



「ティアちゃんティアちゃん。昨日入ってきた新人の子なんだけどなかなかの美人さんですぜ」

「え?・・ホントに?」



 ティアはチラッとリナを見ると声を潜めるようにアマリアとこそこそと話し始めた。

 リナは呆れたように溜息をつくと二人を放っておいて討伐した魔物の素材の買取をギルドの隣に隣接されている買取場に行った。

 魔物の買取を完了させたリナがカウンターに戻ると二人がメイルに叱られていた。



「アマリア!貴女は業務中に何をしているのですか!ティア様も公共の場であのような会話は控えて下さるようにお願いします!」

「「すみませんでした」」



 リナが戻って来たことに気が付いたメイルは完了登録を早く進めるようにアマリアに命令してからリナに頭を下げた。



「先日は申し訳ありませんでしたリナ様。まさかアマリアにあんな趣味があったとは思いませんでした」

「い、いえ気にしないでくださいそれにこちらもティアさんが迷惑をかけてしまって」



 先日の事件の事で二人して頭を下げていると、登録を終えて戻ってきたアマリアがティアと一緒になって抗議するが、メイルの一睨みですぐに黙り込んだ。

  


「そ、そうだ何かギルドが賑やかになってるけどなにかあったの?」



 ごまかすようにティアが問いかけるとメイルが少し困った表情で答えた。



「それが、先程王都の方から依頼が届いたんですけど、それが大きな依頼だったもので」

「どんなの?」

「前に王都の軍隊が国境に出ていたのは覚えていますか?」

「えーと」



 ティアは忘れえていたのだがリナは覚えていたのでティアに耳打ちした。



「私が冒険者になりたての頃・・・そんなことあったかな?・・まあいいや、でそれがどうしたの?」

「その軍隊が王都に戻ったのですが、その報告で国境の街、センテリスが崩壊していたそうなのです」

「崩壊ってなにがあったの?」

「依頼を含めて説明致しますので少々お待ちください。アマリア依頼書を持ってきてください」

「かしこまりました!!」



 すぐに依頼書を抱えて戻ってきたアマリアからメイルが受け取るとそれをかカウンターに広げた。



「依頼書の内容によると軍隊がセンテリスに着いた時にはすでに魔物によって崩壊していたそうです」

「魔物ですか・・」

「はい。魔物によっての崩壊になるので国からギルドへ討伐の依頼が来たのですが、規模が規模ですので魔王が出た可能性があるとの噂が出ているのです」

「魔王ってなんなの?」

「魔王とは基本的には魔物を操り統べている王の事をそう呼びます。例えばゴブリンの王等のその種の王にはその名はつかないのですが複数種の魔物が統率されている場合は魔王と呼称されます。今回は国からの報告によるとセンテリスにはスケルトンやゾンビなどのアンデッドやスペクターやレイスなどの通常は単体のみで行動する魔物等も発見したとのことですので魔王の可能性があるとの事です」

「へ~魔王ってすごいんだね」



 ティアは危機感をあまり持っていなかったのだが、魔王はその個体によって強さが大きく変わり弱い個体ならBランクの冒険者数人で討伐することが可能だが強い個体だとそれ以上のランクの者が複数必要になる程力の違いがあった。

 今回センテリスに現れた魔王は魔物の規模からAランクの可能性があるという事でギルド内部は騒がしくなっていた。



「そのような危険性がある為、高ランクの冒険者のみが魔王の討伐依頼を受注できることになっています。今回は低くてもBランクの冒険者からの受注となります」

「でもBランクだとほとんどの冒険者は依頼を受ける事も出来ないんじゃないの?」

「いえ、魔王の討伐は難しいですが辺りに出現している魔物の討伐の依頼がありますので参加することは可能なのですが」

「なにかあるんですか?」



 言葉を詰まらせたメイルにリナが問いかける。

 メイルが回答を渋っていると隣にいたアマリアが代わりに答えた。



「それはねセンテリスにいる魔物が討伐してもほとんど価値のないスケルトンとかが中心だからだよ」

「アマリア!」

「いいじゃないですかホントの事ですし、それにティアちゃんやリナたんだったら聞かれても問題ないと思いますし」

「それはそうなのですが・・」



 受付嬢二人の反応である程度の事情が読めたリナは、ならばなぜギルドが騒がしくなっているのかが疑問になったのである可能性を考えて二人に質問をぶつけた。



「あの、その魔王はセンテリスからここにせめて来たりするんですか?」

「いえ、魔王は放っておくとその場を離れてあたりを襲うのですが生まれてから2、3年は力を溜める為にその場に留まる事がわかっています」

「で、ではどうして皆さんが騒がしくなっているのですか?」

「それは、」

「それはね、魔王が出現した場所では稀に貴重な魔道具が手に入ったりするのですよ。でも滅多に出る事はないから今回のセンテリスには行っても装備を消費するだけかも何だけど、アレントにはBランクの冒険者はいないから他から冒険者が来るまでに行けばチャンスがあるかもってパーティが揉めているのですよ」



 メイルの言葉を遮ってアマリアがドヤ顔をして説明を入れたのだが、パチパチとリナに向けてウィンクをしていたのでリナはげんなりとしてしまった。

 しかしティアは貴重な魔道具と聞いて目を輝かせてしまっていた。



「リナちゃん、センテリスに行きたい」

「え?」

「だって宝物だよ。私たち冒険者になってからまだ魔物の討伐くらいしかやってないしそろそろお宝探しやってみたかったんだ~。ね?ね?いいでしょ?」



 ティアのおねだりにリナが答えを返す前に反対の声が上がった。



「駄目です!危険すぎます」



 声を上げたのは意外にもメイルだった。



「周囲の魔物の討伐とはいえそこは魔王の拠点です万が一遭遇でもしたらお二人では対応しきれません」

「でも依頼を受ける事はできるでしょ?Dランクパーティ以上って書いてあるし」


 この一月でCランクにギルドランクを上げていたティアはリナと二人でもDランクパーティとして認められていた。



「ですが、魔王以外にも不穏な噂があるのです」

「不穏な噂って?」

「・・実は魔王が現れる前のセンテリスにかなり腕の立つ旅人が辺境伯の屋敷に出入りしていたらしいのです。もしその旅人まで魔王に倒されているのならその危険性は高い物になりますから・・・」



 メイルのその言葉を聞いてリナはすぐさま反応した。



(腕の立つ旅人・・・可能性は否定できませんね)



 リナはその旅人がこっちに飛ばされたプレイヤーかもと考えた。



「で、でもチャンスかもってアマリアも言ってるし・・」

「そうですね。その依頼受けましょう」

「リナ様!?」



 リナが依頼を受けると言い出した事にメイルは驚きを隠せなかった。

 今までリナの事を観察していたメイルはリナの事を、おそらく戦闘の実力はあるがそれを見せようとはしない程引っ込み思案で、冒険者としては珍しい全く危険な依頼を受けない消極的な性格の持ち主と思っていた。

 そんなリナが危険度の高い依頼を受けることが不思議で仕方がなかった。



「ど、どうしてでしょうか?」

「そ、それは・・。す、少しでも周囲の魔物の討伐をしておけば魔王討伐もスムーズに出来ると思いますので、それにティアさんとボクでしたら魔法と弓で遠距離から戦えるので危険なことがあればすぐに退避できますので問題ないと思いまして」



 咄嗟に出てきた言い訳だったので苦しい答えになったのだがリナの援護を得たティアが強引に話を進めて何とか依頼を受注することが出来た。

 怒っているのか少し言葉が砕けているメイルは指を立てて二人に注意をした。



「いいですか?絶対に無茶はしないように、問題があったらすぐに戻ってくるように」



 メイルとアマリアに見送られてギルドを出たリナ達は明日の朝の馬車に乗るために手分けして以来準備に取り掛かった。

 リナはポーションなどの消耗品を補充してからアルカにしばらく依頼で来れないことを伝えるために崖下のダンジョンへ向かった。

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