突然の提案
「ボクが記憶喪失・・・」
アルカから語られた衝撃の言葉にリナはうつろな目でまっすぐ前を見つめることしか出来なかった。
その様子を見ていたアルカは両手で手を振ってさっきの言葉を修正した。
「ごめんなさい。消えてるはちょっと言い過ぎたわね。正確にはリナの記憶は封印されているってところかしら」
「封・・印・・?」
「そうね。詳しい事は今話をしても意味がないと言うか今は理解できないと思うから話さないけど封印されてることは間違いないわね」
「どうしてですか?」
理解できないと言うアルカの言葉をリナは鵜呑みにすることはできなかった。
確かに人体の構造について熟知しているわけではないがこの世界はAFと同じような世界だとリナは思っている。たとえ記憶の封印が魔法の作用だと聞かされたとしてもそれを理解できないほど混乱しているわけではなかった。
「正確にいうと魔法じゃあないんだけどね。例えば×××が×××ってわかる?」
「え?」
さっきと同じだったアルカの言葉がリナにはうまく聞き取れない状態で耳に入って来る。
アルカは仕方がないとあきらめるようにリナに話かける。
「大丈夫。じきに思い出せるから」
その言葉は慰めの言葉と言うよりは確信をもっていっているようでリナは一応その言葉を信じることにするしかなかった。
「それでね。私たちの事もリナの記憶に関することだからリナとの関係を教えられなくなっちゃたの」
「は、はい」
アルカ達の事が話せないと聞いてまたもリナの体がこわばってしまう。
「すぐには信じられないかもしれないけどリナに危害を加えることは絶対にしないからそこは安心してほしいの」
リナはその言葉に横目でヴィトニルを見るとヴィトニルもうなずいてそれを肯定していた。
半信半疑ながらもアルカが抱きしめてくれた時に何故か安堵したことや攻撃してくる素振りが全くないことからリナは少し肩の力を抜いた。
しばらく他愛のない話をしてお茶を飲みながら軽く打ち解けつつあった時にアルカからリナがここに来た経緯を聞かれてた。
「ボクは魔法の特訓をする場所を探していてここに来ました」
「何の魔法?」
「制限解放の魔法をうまく扱えるようになろうかと」
リナの力を制御している封印を外していく魔法で現在リナは4つの制限を解放することが出来ていた。
この魔法は実質無詠唱で強力な魔法を行使出来ることから戦闘では重宝できるとリナは考えていた。
魔法の無詠唱は強力な魔法程扱うことが難しいため制限解放魔法ほどの強力な魔法の無詠唱化は全力を出せない今のリナにとっては十分武器になるものだった。
「ちょっと見せてくれない?」
「えっと・・」
制限解放は使うほどリナの魔力が低下していくリスクがある為この状況で切り札を使うことを渋ったリナだったがアルカの無言の圧力に負けて渋々1つ目から現在解放可能な4つ目まで披露した。
「あ、あと1つ解、放、できれば、全部、解放のはず、、です」
リナは息を切らしながらもう少しだと主張したがアルカはそれを真剣な表情で見つめていた。
アルカは何もない空間からメガネを取り出すと、それをかけてリナを凝視した。
「ねぇ?リナその封印後6つあるわよ?」
「え?」
「そもそもそんなに簡単に封印が外れるなら記憶も封印なんてされないわよ。リナはどうして封印が5つと思ったの?」
アルカの疑問にリナは右手を開いて見せた。
リナの右手の指に小指を除いて指輪が着いていた。リナは解放していくごとに指輪が出現していたのでてっきり5つの封印だと思っていたのだがアルカが言うにはどうやら違うらしかった。
「んー。×××。あーやっぱり伝えられないか・・・」
アルカが腕を組んでぶつぶつと悩んでいるとリナに近づいて両肩をつかんだ。
「よしっ、リナしばらく私が特訓を見てあげるわ!!」
「は、はい!・・へ?」
アルカの突然の申し出に勢いでうなずいてしまったリナしばらく狼狽えていたとヴィトニルがあきらめろと言うかのようにリナの足をポンと叩いた。
そうと決まればと特訓を始めようとしたアルカだったのだが、リナがもうすぐ戻らないといけないことを伝えると「じゃあまた明日で」とリナを帰宅させた。
リナが驚いたのが足元に突然魔法陣が現れたと思ったら一瞬でアレント近くまで転移されていた。
「アルカさんっていったい・・・」
その常識外れの魔法にも驚いたのだがアルカの「明日の朝呼び出すからね」と最後に聞こえた言葉に恐ろしさも感じたリナだった。
肩を落としたままアレントに入ったリナを通行人が見入っていたのだが、アルカの事に気を引かれていたリナは全く気が付くことは無かった。
そのまま宿に戻ったリナの姿にティアやトキに指摘されるまで自身の姿の事をすっかり忘れていたリナは恥ずかしさでベットに潜ってしまったのだった。
ちなみに次の日からアレント内で貴族の少女の噂が広まってしまっていた。
リナが帰ったあとダンジョンに残っていたヴィトニルが自身の姉であるアルカにどうするんだと詰め寄っていた。
「どうって、鍛えてあげるのよ?そうしないと記憶も戻らないだろうし」
「だからってアルカ姉が直接って本気か?」
「ええ。あんたがここを維持している間はそのつもりよ?それに・・・」
アルカはどこか寂しそうな表情で手に持っていた結晶を大切に握っていた。
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