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美女?と大狼?と少女

今回の投稿前に前回分をほんの一部加筆修正しています。

 リナが自身の死と言う絶望に目を逸らすことが出来ずに無意識に涙を流したその時、部屋全体に明かりがともり赤い瞳の魔物の姿があらわになった。



 赤い瞳の魔物の姿を見た瞬間リナはその姿に息をのんだ。

 魔物の姿は体長10メートルほどの大きな狼型の魔物だった。

 ただの獣型の魔物だったらリナがこのような反応をすることは無かったのだがこの魔物は全身を真っ白な毛に覆われ、そこから神秘的なオーラのようなものを漂わせていた。



 リナがその姿に驚いていると狼型の魔物に話かけられた。



「どうした少女よ?なぜ涙を流す?」



(しゃべった!?いや、え?え!?)




 魔物から突然質問を投げかけられたことに死を頭によぎらせていたリナは完全に混乱してしまった。

 高位の魔物が話すこと自体はそんなに珍しいことじゃない。しかしエリアボスに関しては全くの別だった、基本的に規格外の力を持ちダンジョンの誕生と共に出現するエリアボスは調教師などにテイムされてゲームバランスを大きく崩されないようにように言語を使う事が出来ないように設定されていた。この世界に来てからゼノと言う例外を見てきたリナだったのだが、自身の死の恐怖と想像していなかったこの状態に完全に頭が回らなくなってしまっていた。



(何で魔物が?いえ高位の魔物がしゃべるのは不思議じゃ、でも殺されて、質問に答えないと、でもエリアボスですし、死ぬのは嫌で・・・怖い、嫌だ。・・・早く答えないと、・・何を?しゃべって・・ティアさん、クレフさん、嫌だ。カイ・・助け・・)



 恐怖と混乱でついにリナは頭を抱えて嗚咽を漏らしながら動けなくなってしまった。



 しばらく泣いていたリナは少しずつ落ち着いていき、何故か自分が生きていることにようやく気付くことが出来た。



(あれ?どうして)



「少女よ、もう良いか?」



 リナが冷静になるのを待っていた魔物は顔を上げたリナにそう投げかけた。

 魔物の言葉に冷静になったリナはようやく落ち着いて答えることが出来た。



「はい。大丈夫です」

「そうか、ならば問う。少女よ何用でお前はここを訪れた?」

「ボ、ボクは偶然ここに来ました。ここには来たのは特訓場所を探していてたまたま見つけた洞窟に入ったらここだっただけで・・・」

「ふむ。偶然・・」



 リナの答えにしばらく魔物・・狼は首を傾げるとリナに近づいて行った。

 狼がリナに近づいていくにつれてまたもリナの目から涙がこぼれ始める。至近距離まで狼が近づくとリナの思考は完全に食べられることしか考えられなくなってしまった。



「な、何故また涙を流す!?おい、少女よ?聞いているのか?おい!!」



 狼の最後の言葉は完全に咆哮となってリナに届き呼吸すら満足にできない状態にまでなってしまった。

 さすがにこれでおしまいだとリナが思ったその時、突然なにもない空間から狼の頭上に一人の女性が現れた。



「ヴィトニル、なんでリナを泣かしているのよ!!」



 女性は現れた瞬間そう叫んで狼の頭を叩くとそのまま狼は5メートルほど吹き飛んで行った。



「・・・へ?」



 何が起きたのか理解できないリナは呆然とその光景を見ることしか出来なかった。



「リナ大丈夫?怪我してない?」



 リナの前に着地した女性はリナの体を隈なく触って怪我がないことを確認すると今だ目に涙がたまっているリナの体をぎゅっと抱きしめた。



「大丈夫よリナ。ここは大丈夫」



 そう言って優しく抱きしめられたリナは安堵し名も知らないその女性を抱きしめ安堵の涙を流した。





「落ち着いた?」

「はい。ありがとうございます」



 泣き止んだリナは女性に頭を撫でられながらそう返事をする。その時狼は女性に命令されて姿勢を正して後ろに座っていた。

 ようやく落ち着いて女性を見ると、この女性は人とは思えないほど整った容姿をしていて何より目を引いたのはロングウェーブの髪の色が左右で白と黒で色が違うところだった。それに瞳の色も赤と青のオッドアイになっていた。

 リナが女性に見惚れていると、ふと自身が女性に抱き着く形になっていることに気が付いて女性の腕の中で慌てて暴れてしまった。



「あらら?リナもまだ混乱してるみたいだしゆっくり話でもしましょうか。・・・でもそのまえにリナは着替えましょっか」

「え?・・・あっ」



 そう言われてリナは顔を真っ赤にした。女性に言われるまで気が付かなかったのだがリナはさっきまでのあまりの恐怖に粗相をしてしまっていた。

 慌てて着替えようとしたのだが、さすがのリナでも知らない人の目の前で着替えることは出来なかった。リナが隠れられる場所を探していると女性が指を鳴らして地面を簡易的な更衣場所に変化させた。

 詠唱もなしにこんな芸当ができることに驚きながらも中に入った。



「あの人、誰なんでしょう。あの魔法といいあの魔物を従えているところといい」



 ついつい独り言をつぶやいていたリナはアイテム袋の中に着替えが入っていないことを思い出した。



(そう言えばティアさんが洗濯してくれてました)



 どうしようかと思っていると更衣場所の中に衣服と『これに着替える事』というメモが目に入った。



「こ、これは・・・」



 さすがにどうかと思ったが選択肢のないリナは仕方なくメモに従って着替えを行った。



「うんうん、やっぱり似合ってる」



 着替え終わったリナが更衣場所から出てくると女性は満足したように手を合わせると、リナの後ろにまわってどこから取り出したのか真珠のようなものが付いたネックレスをリナの首に取り付けた。



「うん。綺麗よリナ」



 リナに渡された衣装は肩が出ている青色のロングドレスで幼い容姿のリナには少し大人びた印象を与えるものだった。女性にかけられたネックレスも何か付与されているのかリナの体調も良くなっていった。

 着慣れない衣装に戸惑いながらもいつの間にか用意されていたテーブルにつくと女性がゆっくりと口を開いた。



「さて、落ち着いたところでまずは、初めましてリナ。私はそうねアルカと呼んでちょうだい。こっちの馬鹿はヴィトニルさっきは驚かせてごめんなさいね」



 女性、アルカがそう言うと隣に控えていたヴィトニルもぺこりと頭を下げた。

 ヴィトニルは驚いたことにさっきまでの大きな姿とは違って今は大型犬くらいの大きさまで小さくなっていた。



「は、初めましてボクはリナと申します」



 リナはそう挨拶をしてある違和感を覚えた。



(・・あれ?ボクの名前)



 リナが感じた疑問をぶつけようと口を開いた瞬間、アルカが先に口を開いた。



「リナ、私たちがリナの名前を知ってる理由が気になるんでしょ?」



 自分の言葉を先に言われて驚いたリナの様子を見てアルカが微笑む。



「まずはそうねリナ、貴女3、4ヶ月くらい前の事覚えてる?」

「え?」



 アルカが口にしたのはリナがこの世界に来てしまった時期の事についてだった。

 リナはその一言に期待と驚きで大きく動揺してしまった。この女性は知っているのか、この世界の事について自身がこの世界に来てしまった理由について。

 やっと見つけた手がかりにリナは興奮を隠しきれない様子でその質問にうなずいた。



「そっか、どこまで覚えているの?」

「は、はい、えっと仲間の人たちと会議室にいたら急に大きな地震が来て目の前が真っ暗になりました。光が戻ってくると会議室には人が・・」

「ちょっと待って」



 リナが説明しているとそれをアルカが遮った。



「えっと・・」

「ごめんなさい。ちょっと話が合わないみたいだから止めさせてもらったけど、リナ前にティルブエって場所の近くの森に行ったことない?」

「・・あります」

「そのときの事を聞きたかったのよ」



 その言葉に期待していた事とは違った事に落胆しながらも当時の事を思い出しながらアルカの質問に答えた。



「あの時は転移結晶を使って森の中に移動してそこで新しい魔法を覚え・・て?それからガラドに着いてボクはその時、ボロボロでマチさんに助けられて」



 リナは軽い頭痛を感じながらも当時の事を語った。

 アルカは黙ってそれを聞いていたのだがリナの質問が終わると真剣な表情でいくつかリナに質問をした。



「ありがとう。いくつか聞きたいんだけどいいかな?」

「はい」

「ガラドではマチって人の所にいたの?」

「はい」

「なんでボロボロになっていたの?」

「・・たしか魔法の練習をしていてだったと思います」

「じゃあ転移結晶で移動してからガラドに着くまでに何日かかったの?」

「・・・わかりません」

「いつどこで新しい魔法を覚えたの?」

「・・・っ」



 思い出そうとするとリナの頭が絞めつけられるような痛みが走った。



「どうして使えていた(・・・・・)はずの魔法が(・・・・・)使えなく(・・・・)なっているの?貴女の封印は(・・・・・・)いつ誰にされたの(・・・・・・・)?」



 アルカの質問にリナは一切答えることが出来なかった。

 質問された事で初めてリナは聞かれた事に疑問を感じた、いや疑問を感じることが出来た。

 アルカは質問されたリナが頭を押さえているのを見て最後に一つと前置きをして口を開いた。



「ねえリナ。×××ってわかる?」

「えっと?」

「あれ?×××、×××・・・」



 アルカが何を言っているのかリナは理解出来なかった。アルカ自身もまともな言葉になってない単語を何度も口にしていた。

 何度かそれを繰り返していたアルカは何かをあきらめたような表情になってリナを見つめた。

 その表情に何か悪いことをしてしまったのかとリナは感じてしまった。



「どうしたんですか?」

「どうやって伝えればいいのかな?」



 アルカは少し悩むとリナを見つめて簡潔に語った。



「そうね。まずはリナ、貴女の記憶の一部消えちゃってるわね」

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