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初依頼

「ティアさんそっちに行きました」

「任せて!!」



 リナが追い込んだボーンラビットの頭にティアの放った矢が突き刺さった。



「よし、これで依頼完了」




 リナとティアは初めての依頼の為にアレントの近くにある森の中にボーンラビットを探しに来ていた。

 この森は比較的弱い魔物しか現れないので初心者の冒険者の集まる場所になっていた。実際数名の冒険者と道中すれ違ったり魔物を狩っている場面に遭遇したりと人の出入りが多い森になっていた。




「それにしてもやっと見つけられたね」

「いろんな冒険者が狩りに来るので警戒心が強いのかもしれませんね」



 リナはボーンラビットを袋に詰めながらそう答える。ちなみに今リナが使ている袋は、アイテム袋だと目立つだろうと思ってトキに貰ったただの大きめの袋だった。



「これからどうする?もう帰っちゃうの?」

「そうですね依頼も終わりましたし、特に用事もありませんしね。もう戻っても問題はないと思いますよ」



 二人の今回の依頼品は狩れたのでもうアレントに戻っても問題はないし時間もボーンラビットの捜索に手間取って2時を過ぎる頃になっていたので、良い頃合いだとリナが判断していると、ティアが手を上げて一つ提案した。




「はいはい!だったらさちょっとこの辺の探検してみない?」



 ティアはそう言って目を輝かせていた。

 最近ずっとギルドの合否を心配していたティアはこんなに楽しそうな笑顔を見せることがなかったので、その表情にリナは微笑みがらそれくらいならとティアの提案に乗ることにした。



「探索はいいですけど気を付けてくださいね。この森の奥は崖になってて落ちたら助けられないってトキさんも言っていましてので」

「わかってるって、ささ行こ行こ?」



 ティアはリナの手を引いて森の奥へと足を踏み入れていった。

 少し森の奥へと進んでいくとリナも見たことがない植物が群生していたり魔物や動物が生息していたりと中々楽しい探索になっていた。

 途中で他の冒険者とすれ違ってこの奥の崖に気をつけろと教えて貰ったのでせっかくだからと二人はその崖を見ていくことにした。

 森の奥への道中は強い魔物の出現もなく本当に初心者向きの森なんだなとリナが感心しながら歩いていると、奥の方から強い光が見えてきた。



「あれ森の外かな?」

「たぶんあの先が崖だと思いますのでゆっくり行きましょう」



 おそらくそこが森の外でトキの言っていた崖だろうと二人は光に向かって歩いて行った。



「うわぁ、すごいねぇ」

「はい・・・」



 森の外、崖まで出てきた二人の眼前に広がっていたのは地平線の向こうまで広がっている広大な森だった。

 二人が立っている崖の下は少なくとも300メートルはある崖なのでたしかにここから落ちたら助からないだろう。しかしこの絶景は再び見に来たいほどには素晴らしい物だった。



「ねぇリナちゃん、この下って行けたりするのかな?」

「いえ、地図で見てみるとこちらから降りることはできないみたいです。行くとすればあの地平線の向こうから来るしかないみたいですね」

「そうなんだ。よかった~」

「なにかあったんですか?」

「うん。うっすらと視えるんだけどこの下にいる魔物の魔力がありえないくらい大きいんだよ。これはリナちゃんよりも大きいと思う」



 ティアが言うにはこの崖の下に生息している魔物はどの個体も大きな魔力を持っていて襲われでもしたら皆死んでしまうだろうという事だった。



「でもそんなに強い魔物がいるのでしたら空を飛ぶような魔物がいたら危険な気もしますけどアレントは問題ないのですかね」

「そうだね。あとでメイルにでも聞いてみよっか」



 二人はそんなちょっとした疑問を抱きつつもこの絶景を堪能することにした。



「ティアさん、これを」



 リナが取り出したのは以前購入した串焼きだった。アイテム袋に入れていたので出来立てのまま食べることが出来る。



「ありがとー」



 ティアはそれを受け取ると串焼きを頬張った。



「リナちゃんのそれって便利だよね~」



 食事を終えたティアがリナのアイテム袋を見ながらそう言葉をこぼした。



「私もそれほしいんだけどどこかに売ってるのかな?」

「えっと、どうでしょう。ボクはお店ではみたことがないですね」

「リナちゃんはどうやって手に入れたの?」

「え、えっと・・」



 ティアの質問にリナは自分の事やまさか初めから持っていたなどと言うわけにもいかずにどう答えればいいのかと悩んでいるとティアは何かを思い出したかの様に声をもらした。



「あっ、そう言えばリナちゃんってお姫様だったっけ?それならどこに売ってるかも知らないよね~」



 ティアはリナがお姫様だから自然と手に入れる事が出来たのだと勝手に納得してその場に横になった。



「ティアさん食べてすぐ横になると体に悪いですよ」

「ああ、うん」



 もうすでにリナの言葉は聞こえておらず小さな寝息が聞こえてきた。



「テ、ティアさん・・・」



 リナはティアの寝つきの良さに呆れながらも大きめの布を取り出しティアにかけてあげた。



(まったく・・・ここが森の中だからでしょうか?少しティアさんの気が抜けすぎてる気がします。・・・それにしてもここなら)




 リナは崖の下を覗き込みながらティアを起こさないように魔法を唱えて簡単な実験を行う。

 しばらく試行錯誤を重ねて問題がないことを確認してからそろそろアレントに戻ろうとティアを起こした。

 アレントに着くころには日も傾き始めて夜の店が準備を始める頃だった。

 街の番兵にギルドカードを見せて街の中に入ると少し慌ただしい雰囲気が立ち込めていた。



「何かあったのでしょうか?」

「そうだね。いつもより騒がしいみたいな・・」



 慌ただしい街の様子を見ながら冒険者ギルドに戻ってくるとギルドの中もいつもより騒がしい状態だった。

 人をよけながらカウンターに行くとちょうど受付をしていたメイルの元に依頼完了を告げに行った。



「はい。ボーンラビットの討伐はこれで完了ですね。登録を行いますのでギルドカードの提出をお願いします」



 二人はギルドカードを渡しながらこの慌ただしい状況をメイルに尋ねた。



「ねぇ、何かあったの?街に戻ってきてから何か慌ただしいというか、ギルドの中も少し荒れてるみたいだし」

「えっと、今日のお昼ごろになるのですが、アレントの南の平原でバラカの軍隊が国境へ向けて進軍していくのを多くの冒険者達が目撃したみたいで戦争があるんじゃないかと皆さま心配しているのですよ」

「え?戦争!?」



 不穏な単語が出てきたのでティアが驚くとメイルが慌てて間違いを訂正する。



「い、いえ戦争ではありません。国境の辺境伯様の領地で何やら問題が発生したみたいで王都の軍が出ることになったと先程王都のギルドから報告がありましたので直にこの騒動も収まるでしょう」

「そうなんだ。よかった~」



 ティアは戦争ではないと聞いて安心していたのだが、リナは他の事が気になっていつものリナとは思えないほどの声量で質問した。



「そ、その問題って何が起きたんですか?」

「申し訳ありません。問題の領地には冒険者ギルドの支部がありませんので何が起きたかまでは把握できていない状態です」

「そうですか・・」



 リナはこの世界に来てから騒動に巻き込まれっぱなしだったので早く問題を把握して巻き込まれないようにしておきたかったのだがそれはうまくいかなかった。



(なんでしょうか。どうも胸騒ぎがするというか・・・) 



 リナは何かが起りそうな不穏な予感を感じながらも登録が完了したカードを受け取ってギルドを後にした。



「はあ~、でも戦争とかじゃなくって良かったね」

「・・・・」

「リナちゃん?」

「え?はい?なんですか?」

「どうかしたの?」

「い、いえなんでもないですよ?」

「ホントに?」

「ほ、本当ですよ。・・あっ明日はどうしますか?約束は午後からでしたよね?午前中は何か依頼を受けますか?」

「え?うん。それでいいよ」



 リナが突然話題を変更したのにも関わらずティアはその話に乗って明日の依頼を何にするかを考え始めた。

 そんなティアの単純な部分に感謝しながらもリナは今後のトラブル回避のために何か手を打てないかと頭を悩ませながら帰路について行った。

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