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運命の日 後編

 クレフたちは今リナの部屋にやってきていた。

 心配症だったジンの性格は変わっておらずリナを抱きかかえて部屋まで連れて行ったのだった。



「この世界が『ゲーム』とやらの世界で私やユーコ、ジンはお前の友人だったと?」

「はい。あとはネスタさんとロアさんも仲間でした」



 リナはクレフ達に今までの出来事をそのまま伝えた。

 クレフ達とは友人同士で6人でこの国を造り国をみんなで治めるために設定で義兄弟としていたこと、今日6人で集まった時に突然ものすごい揺れに襲われ視界が暗くなり気が付いた時には今の状態になっていたこと。

 最初3人は驚いて聞いていたのだが、今は真剣に聞いてくれていた。



「そうかわかった。詳しい話はあとで聞くから今は少し休め」



 リナが話を終えるとクレフはそう言って部屋を後にした。

 ユーコもクレフの後について出ていきそこにはジンが一人部屋に残った。



「私の事も忘れてしまったのか?」

「いえ、ジンさんの事を忘れているというわけではないんですけど」

「そう・・だったな」

「・・・すみません」

「いや、いいんだ。じゃあ私も失礼するよ。リナはゆっくり休むんだよ」

「はい」

「それと私の事は兄と呼んでくれ兄妹なんだから」



 ジンはそう言い残し部屋から出ていった。

 ジンが出て行ってから何度かメニュー画面を表示させようと試したが何も反応はなかった。



(メニュー表示できない。やっぱりボクはAFの世界に入り込んでしまったのでしょうか。それもボクの知っているAFとは少し違った別の世界・・)



 リナはありえないと考えていたことをもしかしたらと受け入れつつあった。

 ひとまずこれからの事を考えていると窓の外が暗くなっていた。

 一人で考えていても埒が明かないと判断し、今後の事を相談するために皆を探すことにした。



(皆さんどこに居るのでしょうか?)



 少し暗くなった城の廊下を歩いていると、少しだけ扉の空いた部屋から光が漏れていた。。

 かすかに声が聞こえてきたのでこっそりと覗き込んでみると、クレフとユーコが真剣な面持ちで話していた。



「やはり、あの事が原因か?」

「たぶんそうでしょう。リナは嫌がっていましたから」

「しかしリナももうすぐ14歳だ。そろそろ国民の前に出すべきだろうし、婚約の相手だって王族としてはもう決まっていたとしてもおかしくはない」

「でもそれが原因でリナがあのように。私たちの事を忘れてしまうなんて」



 ユーコは悲しみでいっぱいになり涙をながし、クレフも心痛な面持ちになる。

 そんな様子を見ていたリナは少し後ろめたい気持ちになっていた。



「しかしこれは好機ではないでしょうか?」



 二人に対してそう発言したのはネスタだった。



「なんだと!?」

「いえいえ、この国の先の事を考えるとリナ様のレーメン国との婚姻は必要なものだと考えたまでです。それにこれは陛下もお考えになっていたことでは?」

「お前と一緒にするな!私はリナの幸せを考えていただけだ、それに相手はまだ決まっておらん」

「そうですか?では私はレーメンとの婚姻をお勧めしますね。これが決まれば東の国境は安定するでしょうし」

「貴様リナをあんな奴に渡せと言うのか?」



 ネスタが不敵に笑っていると、あんなに温厚だったジンがネスタの襟首に掴みかかった。

 しかしネスタはそれを簡単に振りほどくと冷たい視線でジンに言い放った。



「私はこの国の事を考えて発言したまでですよ。国民の事を考えているのであればこれが一番良い方法なのではないのですか?」

「そうだとしてもリナに妹につらい思いはさせたくはない」

「国民の為、それが王族のするべきことなのでは?」

「しかし・・・」



 ネスタの言葉にジンはそれ以上何も言えなくなってしまった。

 たしかに民の事を考えると長年緊張が続いている東側の問題が解決すれば国民達は安心できるし生活ももっと良くなるだろう。しかしレーメンの王子は評判が悪く何人もの女性に手を出しているらしい。

 ジンはその噂を耳にしてからはリナの婚姻には反対であった。



「まあ私が決めることではありませんのでこれ以上は何もいいません。しかしレーメンとの和睦はみなが望んでいると言うことを忘れないようにお願いしますよ」



 ネスタはそう言い扉へと向かっていった。

 リナはネスタに見つからないように物陰に身を隠して移動すると今は3人に会わないほうがいいと思い自室へと戻っていった。



(王族ですから国民へのお披露目みたいなものがあるんですね。人前に出るのは嫌なのですが結婚なんてもっと嫌です。ネスタさんもやっぱり別人みたいですね。それにあまりいい人には見えなかったです)



 ベッドに飛び込み枕に顔をうずめているとまたも部屋がノックされたのでメイドさんかと思い扉を開けてみるとそこにはネスタの姿があった。



「ネ、ネスタさん」

「姫様少しよろしいでしょうか?」

「な、なんでしょうか?」



 リナがそう聞き返すとネスタは笑みを浮かべて優しそうに答えたのだが、先ほどの様子を見ていたリナは今のネスタにはあまり良い印象を持っていなかったため少し及び腰になる。



「姫様、私と共に来ていただけますか」

「どこへですか?」

「レーメン国へです」

「え?」

「姫様はお忘れでしょうが、レーメン国の王太子殿下とは婚約者の間柄だったのです」

「う、嘘です。クレフさん達はまだ相手は決まってないと言っていました」

「・・・聞いていたのですか」



 ネスタの顔が冷たい表情に変わるとスッと片手をあげた。

 するとどこに潜んでいたのか、大型の犬が数匹その場に現れリナを取り囲んだ。



「姫様、私と一緒に来ていただきます」

「お断りします」

「聞き分けてくださいお怪我をさせたくないのです」

「い、嫌です」



 リナはアイテム袋の中から転移結晶を取り出した。



「そ、それは!?なぜ貴女が」

「ごめんなさい。クレフさん、ユーコさん、ジンさん」

「待ちなさい!!」



 リナはネスタの制止の言葉を聞かずに転移結晶を起動しその場から姿を消した。




「国王陛下!!」

「なんだ騒々しい」

「それが、リナ様をお呼びに行った侍女からなのですが」

「リナに何かあったのか!?」

「リナ様のお姿がなかったと」

「な・・に・・?」



 近衛兵の言葉にクレフは絶句しユーコは放心してしまった。

 しかしそこにいたジンはすぐさまその場にいた近衛兵達にに命令を下した。



「私たちが目を離してからそんなに時間はたっていない近辺を隈なく探すんだ。ほかに怪しい者を見つけたらすぐさま捉えろ!」

「「「はっ」」」

「リナ・・・」



 その日エクラドの姫が行方不明になったことが国民、近隣国へと広まっていった。

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