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到着!アレント

 モルガンの馬車は今アレント近くの森の近くに停車していた。



「いいか私の作戦通りに動いてくれ」

「わ、わかりました」



 リナはそう頷くと御者台に座るモルガンの隣に座った。



「では、行くぞ」 



 モルガンの操縦する馬車はゆっくりとアレントへと近づいていった。

 リナもローブを着込んで頭も隠すようにフードを被った。

 馬車がアレントの街に着くと小屋の中から出てきた番兵の者が馬車を制止した。



「待て、何か身元の分かるものは持っているか?ってなんだモルガンの旦那じゃないか戻って来たのか」



 番兵はモルガンの顔を見ると緊張を解いたのか砕けた喋り方になっていた。



「よう、マルコ。こっちは何か問題なかったか?」

「いや、特に問題はなかったな。それよりも旦那、護衛もなしに王都から帰って来たのか?」

「護衛ならいるぞ?ほれ」



 モルガンは隣に座るリナに指を指すとリナもぺこりと頭を下げた。



「この坊主御者じゃなかったのか。しかしこんなに小さい坊主に護衛なんてできるのかねぇ。まあいいや一応決まりだから何か身元の確認できるものを出してくれ」



 番兵の言われるがままリナはギルドカードを取り出すとそれを番兵に手渡した。番兵はギルドカードを受け取るとこの小屋に取り付けられている石板のようなものにかざした。

 すると石板が光だし文字のようなものが浮かびあがっていたがリナからは何が書いてあるのかは見えなかった。



「ふむ、冒険者ね。よし特に犯罪歴もなさそうだし大丈夫だな」



 番兵はそう言うとリナにギルドカードを返した。



「旦那一応決まりだから荷物も確認させてもらうぜ?」

「ああ、構わない」



 モルガンはそう言うと御者台を降りると番兵と共に荷台へと向かって行った。



(ふ~、あとは合図が来るのを待つだけですね)



 リナは今のところ作戦どおりに進んでいることに少し安堵したがすぐに気を引き締めた。



(まだ駄目です。ここからが本番なんですから。それにしても、必ず番兵の方が気を引かれる物があるって言ってましたけど何なのでしょうか?・・・)



「うわっ、こりゃすげぇあの坊主こんなに魔物を倒したのか。はあ~見た目からは全然わからねぇもんだな」



 リナが疑問に思っていると荷台の方から番兵の声が聞こえてきた。



「で、こっちは王都で手に入れた素材か・・やっぱり王都にはいいもんがあったか」

「ああ、こっちと違っていいもんがそろっていやがる」

「やっぱりそうか、でこっちの木箱は・・・」



 そこでリナたちに緊張が走った。木箱の中にはティアが隠れているからである。もちろん木箱の中にいるティアにも番兵の声が聞こえているのでどうなると構えたところでモルガンの合図が始まった。



「そうだ思い出した、おいマルコ」

「なんだ?」

「王都の掘り出しもんってか収穫なんだがちょっと見てみろ」

「・・・・お、おい旦那これって」

「おう、王都のだ。もうちょっとあるけど、見るか?」

「・・・」コクン



 番兵は静かにうなずくとモルガンと共に小屋の方へと歩いて行った。



「お~い、先に行っといてくれ」



 歩きながらモルガンから声がかかったので慣れない手つきでリナは馬車を前に進ませた。

 馬車を進めていると木箱に隠れているティアから小声で声を掛けられた。



「ねえ?これってうまくいったのかな?」

「たぶん、そうだと。すみません今ちょっと手が離せないです」

「あ、ごめんね」



 リナは初めての馬の操作をしていた為にティアの言葉に返事をする余裕がなかった。



 モルガンが二人に提案した作戦は案外単純なものだった。ティアを木箱に隠してそのまま街に入ろうという事だった。

 もちろんそんなことは不法侵入になるからと最初はリナは反対したのだがモルガンに諭されてしぶしぶその作戦に乗る事になったのだった。

 リナも参加することになったためティアも特に反対はせずにモルガンの作戦に乗ったのだった。

 作戦はまずはティアが隠れる、番兵に荷物を調べられることが分かっていた為、気を引き付ける必要があるという事だったがそれに関してはモルガンが自身があると言い張っていたのでそれに頼ることになった。それが何なのかリナとティアが聞くともモルガンは歯切れが悪くなりながら言葉を濁した為それ以上二人は追及しなかった。

 問題になったのは次の行動だった。モルガンが気を引いているうちにリナが馬車を操ってアレントに入ることだったのだが、リナが全く馬の操作の仕方がわからなかった為だった。何とか付け焼刃で操作を教えられたリナだった。不安が少しばかり残るがこれが今回の作戦だった。



 そして現在リナは恐々馬車を操作していたのだがその速度はものすごく遅いものだった。リナは馬が少し鼻を鳴らすだけで小さな悲鳴を上げながら操作していたところで後方からモルガンの声が聞こえてきた。



「おーい・・・おーーい」

「リナちゃんモルガンさんの声がするよ?」



 ティアがこっそり教えてくれるがもちろんリナにもその声は聞こえていたのだがどうやって止まればいいのかパニックになっていたのでわからなくなっていた。



「リ、リナちゃん大丈夫?」

「だ、大丈夫・・・・じゃないです」



 リナには珍しくその声は若干泣き声のように震えていた。

 どうしようとリナが慌てていたところで馬車に追いついたモルガンが御者台に上がった。



「大丈夫か?リナちゃん」

「モ、モルガンさん」

「いやぁ助かった。ここまで遅かったおかげですぐに追いつけたし乗ることもできたよ。ははは、よかったよかった」



 モルガンはそう声を上げて笑いながら馬車を操作しアレントの中心街へと進んでいった。

 リナは緊張が解けたのかほっとため息を吐いて御者台に背中を預けた。



 しばらく馬車を進めると大きな建物の奥の大通りから陰になっている場所に馬車を止めた。



「ティアちゃんここならもう出てきてもいいよ」

「ホントに?ああ~疲れた~」



 ティアは木箱の蓋を開け飛び出してくると大きく背伸びをした。



「で、ここはどこなの?」

「ここは私の店の裏だよ」

「ここがモルガンさんのお店なんだ。すごい大きいね」

「そうですね。大きいです」



 リナたちが見上げた店は、少なくとも4階くらいはある高さでこれ以上大きさの建物はリナはエクラドの城しか見たことは無かった。



「ああ、自慢の店だ。っと、それはいいとして二人はこれからどうするんだ?」

「はい。まずはティアさんの冒険者登録と宿探しですね」

「今日くらいは私の所で泊まって行ってもいいんだぞ?」

「ありがとうございます。でもティアさんが倒した魔物の買取も急ぎたいですしギルドに行こうと思います」

「そうか、ならもう止めねえ、魔物はこの袋にでも入れていけばいい」



 モルガンはそう言って大きな袋を手渡した。

 リナはそれを受け取るとティアと協力して魔物を袋に詰めていった。

 二人で詰めていった袋は大きく膨らみリナが3人は入れるほど膨れ上がっていた。



「よし、これで全部だね」

「・・・ティアさんこれ持てますか?」

「持ってみるね。よっと・・」



 ティアは持ち上げようとするが少し浮いてすぐに地面に落っことしてしまった。



「重ーい。これは無理だよ」

「どうしましょうか」



 この大量の魔物の死体は二人で持っていくには厳しい重量になっていた。もちろんリナのアイテム袋を使えば問題なく持てるのだが今ここでそれを使ってしまうとアイテム袋のことがモルガンに知られてしまう為使うことが出来なかった。



 リナたちが困っているといつの間にかいなくなっていたモルガンが店の奥から台車を押してきた。



「これ必要だろ?」

「ありがとうございます」

「いいよいいよ、今度来るときに返してくれればいいさ」



 何とか魔物の入った袋を台車に乗っけるとリナたちはモルガンに頭を深く下げた。



「モルガンさんいろいろとありがとうございました」

「いいよいいよ。それよりも私もちゃんとお礼をしたいから必ずまた来てくれよ?」

「はい」

「でもモルガンさん私がアレントに勝手に入るの手伝って大丈夫だったの?」

「ああ、ティアちゃんは冒険者になるんだろ?私は全く心配してないけど一応冒険者の登録の時に犯罪歴の確認もされるからね、万が一私をだましていてもそこでバレるさ。感謝と言うなら今度ここへ来るときに冒険者カードを見せてくれればいい」

「うん、私頑張って冒険者になるからね~」

「よし、その意気だ。頑張れよ!またな」

「はい」「またね~」



 そうしてモルガンと別れたリナたちは冒険者ギルドへと向かうのだった。



「よ~し頑張って冒険者になるぞ~」

「はい。頑張ってください」



 そうして二人はアレントを歩いていくのだったが、二人が冒険者ギルドの場所がわからないことに気が付くのはしばらくしての事だった。

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