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モルガンの企み

「へ~モルガンさんは魔道具を取り扱ってるんですか~」



 リナたちは街に着くまでの間、馬車に乗せてもらう代わりに護衛を引き受けて旅をしていた。

 出会ってから一晩過ぎて今日街に着くとモルガンから聞いていた。

 この道中危険な魔物との遭遇は無く比較的簡単に倒せる魔物との戦闘が多かった。

 そんな魔物との戦闘は今日はすべてティアが引き受けていた。



 リナはすることがなかったので情報収集をとモルガンの話を聞いていた。



「しかしすまないね。こうやって討伐してくれている魔物をこちらで引き取ることが出来なくて」

「いえ大丈夫ですよ。モルガンさんの所では取り扱っていないんですから素材は冒険者ギルドで買い取ってもらいます。それにこちらこそすみません素材を運んでもらっちゃって」



 ティアが討伐した魔物の素材はすべて馬車の荷台に積むことになっていた。

 リナの持つアイテム袋はこの世界では珍しい物でリナは今のところ自分以外の者がアイテム袋を持っているのも見たことがなかった。



「そう言えばこの先にある街って名前はなんていうんですか?」

「ああ、そういえば言ってなかったね。この先にあるのはアレントと言う町でバラカ国では魔道具で有名な街なんだよ」

「魔道具ですか。もしかしてモルガンさんのお店も有名なお店なんですか?」

「自分で言うのもなんだがアレントでは一番の店と思っているよ」



 モルガンは自慢げに胸を張ると、御者台の横に置いていた箱の中から写真立てのようなものを取り出した。



「こいつを見てくれ」



 手渡された写真立てを見るとそこにはモルガンさんと一緒に並んで奥さんらしき人と娘さんらしき小さな女の子が写っていた。



「これは?」

「これはね私が作り出した、その場の風景をそこに閉じ込める魔道具なんだ。簡単に絵を掛けるから貴族たちに人気な物なんだよ」

「凄いですね。絵を一瞬でですか?」



(本当に凄いですね。まさかこの世界で写真を見ることが出来るとは思いませんでした)



 リナが驚いて見せるとモルガンは小さく笑いながらそれを否定した。



「いやいや、さすがに一瞬では無理だよその場に十分ほどそれを置いておくんだ。そうするとゆっくりとその魔道具に風景が写り込んでいくんだよ」

「十分もじっとしておくのですか?」

「そうだよ。これでも絵に比べるとかなりの時間が短縮されているからね。時間の短縮と正確な絵が描けるってことでも人気なんだ」



 リナはそのあともその魔道具の事について聞いてみたところ。

 魔道具一つにつき一つの風景しか取り込めないこと。この魔道具は現在モルガンしか作ることが出来ないことなどが分かった。



「そうだ、お礼にはならないけど二人に一つずつあげよう」

「そんな貰えませんよ。貴族の方に売っている物なんでしたらお高いんじゃないんですか?」

「まあ、確かにそれなりにするけどこれは余ったものなんだ良かったら貰ってくれ」



 モルガンはそう言うと魔道具二つをリナに押し付けるかのように手渡した。



「そう言えばモルガンさんはどうしてアレントから出てたんですか?」

「私は仕事で王都バラカまで行っていてね。今はその帰りと言うわけだ」

「と言うことは王都までの道は危険なものなんですか?」

「いや、そこまで危険ではないよ。王都までの馬車道は一応あるんだけどねそこを通って行くと片道でも五日ほどかかるんだよ。それにその道も魔物が出ないわけではないしね」

「だったらどうしてモルガンさんはあんなに危険な魔物に襲われていたんですか?」

「いや、王都で雇った護衛の者たちがねここの道は安全だと聞かなくてこっちを通ることになったんだよ。こっちからなら三日ほどで到着するからね。今思えば護衛達は何を考えてこっちの道を選んだのか不思議でならないな」



 モルガンは目を細めると何やら考え事を始めたのでリナは邪魔にならないように荷台であたりを警戒しているティアのもとへと向かった。



「どうですか?」

「あ、リナちゃんこっちは大丈夫だよ。ウィードワームみたいな魔物も出てこないし」

「そうですね魔物の数も減ってきていますし街が近いんじゃないでしょうか」



 リナがそんなことを言っているとモルガンから声がかかった。



「リナちゃん、ティアちゃん。見えてきたよ、アレントだ」



 その声に従って二人は視線を前に移すと遠くに街があるのが視えた。



「うわ~、街ってすごいね~。いろんな建物があるよ~」



 すこし街に近づいて行くとティアがそんなことを呟いていた。

 それは無理もなくアレントの街は広くその町並みは城下町のような賑わいになっていた。



「本当にすごいですね」

「そりゃそうよ、さっきも言ったがアレントは魔道具で有名でなアレントにはいろんな職人に弟子入りしに来るものやわざわざ他国から移住しに来る者もいるくらい便利な街だからな。そりゃいろんな家や店が立ち並ぶってもんよ」



 モルガンはまたも胸を張り自慢げになっていた。




(モルガンさんよっぽどアレントの事が好きなんだな)



「そういや二人はアレントに着いたらどうするんだ?」

「ボクたちは宿をとってしばらくは滞在するつもりです」



 リナたちはアレントでしばらく冒険者の仕事をして資金を貯めようと考えていた。

 それににリナ自身は自分を鍛え直したいと考えていた。それはエルトレームでの一件の事があったからである。リナは実力がありながら対人戦などで苦戦を強いられることが多かったことから戦闘訓練をしておきたいと考えていた。

 ティアも同じ考えで目の前にいるリナに追いつき助けになりたいと考えていて、まずは冒険者として自信をつけたいと考えていた為、リナの提案には賛成していた。



「それなら私の家に来るか?妻と娘がいるが部屋は余っているぞ?」

「いえ、冒険者として依頼を受けるつもりですので出発や帰宅が不規則になりますので迷惑はかけられませんよ」



 以前お世話になっていたマチの宿でもそのような生活になっていたのでおそらくアレントでも同じような生活になるだろうと考えモルガンの提案を断った。



「そうか、私はそんなに気にはしないがリナちゃんが言うのならこちらも強制するつもりはない。・・・が私の店には顔を出してくれよ?」

「はい。ありがとうございます」



 そんなリナの様子にモルガンも気分を悪くすることもなく笑顔でリナにそう言った。



「そう言えばボクたちはアレントに入れるでしょうか?」

「冒険者のカードがあるだろ?アレントには入街税は無いから身分の確認が出来れば問題はない」

「それがボクはカードがあるんですが、ティアさんはまだ冒険者になっていませんのでカードが無いんですよ」

「そうなんです~」



 それを聞いたモルガンは少し考え込むような素振りを見せると頭を下げ何やらぶつぶつと呟いていた。



「ふむ、どうするか・・アレントに隠れて入れる場所なんて私は知らないし。こうなったら強行突破か?いやそれでは意味がない。う~ん・・ん?もしかしてあれならいけるか?番兵があいつらの内だれかなら・・・よし」



 モルガンはティアをチラッと見ると何やら納得したようにうなずくとリナ達二人に向かって顔を上げると「いい案がある。私に任せろ」と胸を叩いた。



 二人は首を傾げながら目を合わせるとどうするんだろうとお互い首を傾げ。二人は不思議になりながらモルガンに視線を戻していた。

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