平原
リナ達はエルトレームの里から二日かけてようやくエルトレームの森から出ることが出来た。
「わぁ~、これが森の外か~・・・って何もないね」
「そうですね」
二人が森を出たその先にあったのは多少の起伏があるもののほかに目新しい物もない平原が広がっていた。
「それでこれからどうするの?」
「そうですね。とりあえず町を探そうと思います。町でしたら冒険者ギルドがあると思いますのでそこでここがどのあたりの地域にいるのか確認したいと思います」
「冒険者ギルドって何?」
ティアはリナから聞く初めての言葉に首を傾げる。
「冒険者ギルドって言うのは仕事を依頼されたものを受注してそれをこなすと言う仕事を請け負っている場所ですね。ボクも冒険者ですからボクの仕事先になりますね」
「リナちゃんはお姫様でしょ?」
「それは忘れてくださいって森の中で何度も言ったじゃないですか」
「そうだった、ごめんごめん」
ティアはわざとらしく舌をだして謝った。
リナはそんなティアにため息を吐きつつも「これからは言わないでくださいね」と念を押してそれを許した。
「そっか~、リナちゃん冒険者なんだよね~。ねぇリナちゃん、冒険者って私もなれるかな?」
「なれますよ。ギルドの登録には特に制限はありませんから」
「よ~しじゃあ私も冒険者になるぞ~」
ティアは元気よく握りこぶしを上げると「お~」と一人で盛り上がっていた。
「よ~しそうと決まればリナちゃん町に着くまで冒険者の事詳しく教えてよ」
「良いですけど登録の時にまた聞くことになりますよ?」
「いいのいいの」
「わかりました。では基本的な所から、まずギルドにはランクというものが決められていてそれに対応したランクを所持している冒険者が仕事を受注するという流れですね」
「ランクって?」
「ランクはギルドで決められている冒険者達の基準ですね。例えば低いランクの人だと採取などの簡単な依頼を中心に受けるんですけど、ランクが高くなると難しい依頼、強力な魔物の討伐などの難しい依頼を受けることが出来るようになります。もちろん危険な依頼程報酬が良くなっていきますね」
「なるほどなるほど」
ティアはリナの説明を真剣な表情で首を縦に振りながら聞いている。
「リナちゃんは今どれくらいのランクなの?」
「えっとEランクです」
リナはアイテム袋からギルドカードを取り出してティアに見せる。
「Eランクか~、これってどれくらいすごいの?」
「Eランクは下から二番目のランクですよ」
「・・・え?」
ティアは表情を固まらせてリナを凝視していた。
「?ですから下から二番目ですよ?」
「えっとランクって3段階くらいしかないんだよね?」
「いいえ?ランクはFランクからSランクの7段階ですね」
リナがそう言った瞬間ティアは背中に大量の汗を流していた。
ティアはリナほどの実力者が冒険者としては7段階の下から二番目のランクと言うことに衝撃を受けていた。
ティアの戦闘力はエルトレームの里では高い位置にいたのだがそれでもリナに勝てるとは思っていなかった。そのリナの実力は下から二番目と言う。ティアはリナの言葉で初めて外の世界に恐怖を感じていた。
もしかするとこの世界では自身の力は全く役に立たないのではないかとティアは複雑な気持ちになっていた。
リナは突然黙ったティアを横目に町に着くまでに適当な魔物でも狩ってこれからの資金にしないとと考えていた。
リナの手持ちでは2人分の宿をとるにも心もとないほどしかなかった。
リナはAFでは大量の資金をもっていたのだがそれはデータだったので現実には出せなかった。リナは何とか地道に資金を貯めていたのだがそれでも大銀貨3枚と端数くらいしか持っていなかった。
この世界では鉄貨→銅貨→銀貨→大銀貨→金貨→大金貨の順で価値が高くなり元の世界の基準だと下から10→100→1000→10000→100000→1000000というのがリナの感覚だった。
リナは考えをまとめティアに道を探しながら平原を進み途中で魔物がいればそれを狩りながら進むことを伝えるとティアが魔物は私が狩ると言い出したのでリナは首を傾げながらもそれを了承し二人は平原を進んでいった。
「これで、6匹目!!」
ティアは空を飛ぶ鳥の魔物に弓矢を命中させると落下してきた魔物を拾いに走った。
「リナちゃん、これもお願い~」
ティアは鳥の魔物、ラビーバードを手にもって戻ってきた。
リナはラビーバードを受け取るとそれをアイテム袋に入れる。
リナたちは森を出てから半日まっすぐ進んでいるのだがまだ道らしき道を見つけることが出来ずにいた。
「これでラビーバード6匹、ライトスライム3匹ですね。そろそろボクも狩りましょうか?」
「ううん平気。私に任せて」
「ティアさんなんかすごく気合入ってますね」
「え?そ、そんなことないよ」
リナにそう指摘されて慌ててそれを否定するが気合が入っていることは誰の目から見ても明らかだった。
ティアはこの世界の冒険者の実力が自分の想像もできないようなものだとリナのランクを聞いて勘違いしていた。
リナはそんな勘違いをしていることなど全く知らず凄く気合が入っているな~などと楽観的な気分でティアの事を見ていた。
「そ、それにしても道みたいなのは全然ないね」
「そうですね。まあすぐに見つかるとも思っていませんので無理せず進んでいくしかないですね」
などと話をしているそんな時だった。
リナたちのいる場所から起伏になっている方向から大きな物音がなった。
「リナちゃん」
「はい。行ってみましょう」
ティアは静かにうなずきリナを先頭に起伏の陰からそっと覗き込んだ。
二人が覗き込んだその先には魔物に襲われている一台の馬車があった。
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