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エルトレーム南の森

「リナちゃんもっとゆっくり進もうよ~」

「いえ、今日中には山の麓についておきたいので少しでも早く進みましょう」



 リナとティアの二人は早朝にエルトレームを出て南にあると言う山に向かって進んでいた。

 今はすでに昼頃になっており若干疲れが見え始める頃合いだった。



「リナちゃんそろそろお昼ご飯食べよ~よ」

「・・そうですね。ではこのあたりで食べましょう」



 ティアの疲労具合いを見てリナはここで少し休憩することに決めた。

 ティアには周りに魔力の反応がないか確認してもらい休憩することになった。

 お昼にはソフィアに貰ったお弁当を食べていた。



「てもティアさんの能力はすごく便利ですね」

「魔力感知の事?」

「はい」



 ティアは自身の力の事を魔力量が詳しくわかる程度と言っていたのだが、実際にはティアを中心にして一定の距離内に魔力を持っている者がいるかどうかの確認をすることが出来るしそれを隠蔽するようなものであっても複雑でない限りは見破ってしまう。

 こういった魔物がいつ出てくるかわからない場所ではかなり重宝される力を持っていた。

 先程もグレートウルフに囲まれていることにすぐに気が付いたティアのおかげで難なく対処することが出来たのであった。



「でもリナちゃんも感知くらいできるんじゃないの?」

「いえボクには感知はできないですよ。ボクは魔力の澱みを魔法で確認して危険がないかの確認くらいしかできないです」

「あれ?でも最初にあったときに私たちに気が付いてなかった?」

「あれは勘みたいなものなのでティアさんみたいに確信が持てる物じゃないんですよ」

「そうなんだ」



 そう言った雑談を交えながら昼食を終わらせるとリナたちはすぐに南へと足を進めた。

 のだがリナはすぐにでも山に向かいたいところだったのだがティアが進むスピードに難色をしめした。



「リナちゃんもうちょっとゆっくり進まない?」

「え?どうしてですか?」

「だってそんなに急いで進んでいたら周りにいる魔物に気が付かれたりして大変じゃない」

「そこはティアさんの力で確認していただければ」

「いや、私の力は集中しないと使えないからこんなに急いでるとわからないよ。昨日言ったけどこの辺にはギガントスライムとか危険な魔物も沢山いるんだからもっと慎重に進まないと」



 ティアが難色を示したのはこのあたりが危険な地域で今の速度で移動していると危険な魔物たちに気が付かれたりしてしまって命の危険があったためである。

 しかしティアの言葉にリナはなんでもないかのように言葉を返した。



「大丈夫ですよ。ギガントスライムくらいでしたらボク一人でも相手できますし問題ありません。それよりこの森の中で夜を過ごす方が危険だと思うんですが」

「えっとまあ、そうだけど・・」

「そう言うことです」



 リナはそう言って笑顔を見せるとティアの手を取って先を急いだ。




 日も傾き始めた頃リナとティアの前にはとても大きな影が立ちふさがっていた。



「リ、リリリ、リナちゃん・・」

「はい?」

「はい?じゃ無いよ。これギガントスライムだよ!!私言ったよね?あんなに速く進んでたら気づかれるって、早く逃げようよ!!」



 リナたちの目の前に現れたのは5メートル以上の大きさはある巨大なスライムだった。

 そのスライムは緑色や紫色の混ざった色をしていてスライムの通ったの草木は枯れてしまっていた。

 ギガントスライムはエルトレームの者たちにとっては斬撃や矢は効かず頼りの木々の精霊たちに力を借りる魔法も効かない出会ったら逃げるしかない最悪の敵であった。のだが・・・



「大丈夫ですよ。見ててください。『氷精よ、大気の水を我の力に、凍てつく氷よ、吹き抜く風よ、全てを切り裂け、全てを突き抜け、全てを蹂躙せよ、ブリザードカタストロフィ!!』」



 リナが魔法を唱えるとギガントスライムはみるみるその体を凍らせて魔法によって切り刻まれていった。



「・・・あれ?そんなにあっさり倒せるの?」

「はい。ギガントスライムは物理攻撃には凄く強いのですが魔法、特に火の魔法や氷の魔法には弱くって動きの遅い魔物ですから魔法の詠唱も簡単ですし中級クラスの魔法を使ってやるとすぐに終わりますよ」

「そ、そうなんだ・・・」

「はい。これで予備の核が手に入ったらいいんですけど」



 ティアはケロっとしているリナに対して苦笑いを見せるしかなかった。エルトレームの者には木々の魔法以外に魔法を使える者はいなかった為、ギガントスライムは危険な敵として認識していたからであった。

 森の外の世界でもギガントスライムはBランク以上の魔物に指定されている為、簡単に討伐できるはずのない魔物だった。しかしAFでは物理耐性が高いだけで魔法攻撃で倒せるギガントスライムはそこまで危険性の高い魔物ではなかった。

 だが、森の外の世界をの事を知らないティアは、この世界の基準をAFの世界の基準と同じように考えているリナが原因で魔物に対しての認識が大きくずらしていくことになってしまったのだった。

 そんな呆然としていたティアをよそにギガントスライムの素材を確認していたリナだったのだが残念ながら核を手に入れることはできなかった。

 そんなことがあった道中だったが、なんとか山の麓まで到着したリナ達は安全に一泊できそうな岩場の影を見つけることが出来たのでそこを一時的な拠点として夕食を取ることにした。



「明日には霊鳥に会って尾羽を手に入れたいと思います」

「うん」

「どうかしたのですか?」

「やっぱり山に登るんだなぁと思ってね」

「なにか不安なことでもあるんですか?」

「正直に言うとね。本当は途中で引き返してもらおうと思っていたんだ」

「どうしてですか?」



 突然のティアの告白に驚くリナ。



「南の魔物は特に危険な魔物だらけでね、リナちゃんもそれを見たらすぐに引き返すと思っていたんだけど簡単に倒しちゃうからね。予定が狂っちゃったんだ」

「そうでしたか。でもボクが戦えるってわかったからそんなに暗くなる必要はないんじゃないですか?」

「そうなんだけどここの山にはぬしがいてね。そのぬしは森の中の魔物よりも強くて危険な魔物なんだ」

「ぬしの魔物?」

「うん。グレートウルフなんだだけど」

「え?でもグレートウルフくらいなら今朝も相手しましたし、ティアさんでも簡単に・・・あっもしかして変異体ですか?」

「うん。そうなんだ。それもとっても危険な変異をしてるんだよ」



 魔物の変異体、それはAFの頃から存在していた魔物だった。

 たとえば通常個体のスライムなら初心者のプレイヤーでも簡単に倒すことのできる魔物なのだが、それが変異体となると熟練のプレイヤーが束にならないと相手をできないほど危険な魔物になってしまう。

 リナはこの世界で変異体がどういった扱いを受けているのかはわからなかったがティアの反応を見ると警戒していたほうがいいだろうと判断した。



「そうですか。だったら明日は警戒を最大にしながら山に登りましょう。せっかくここまで来たんですしこのまま帰るのはもったいないですよ」

「そうだよね。うん頑張ろう」



 リナとしては霊鳥の尾羽を手に入れるまでは帰るつもりはなかったのでもしここでティアに反対されたとしても一人で山に向かうつもりでいた。



「そうと決まれば明日に備えて今日は休もう!リナちゃん一緒に寝よ~」

「いえ、さすがに交代で見張りをしないと・・」

「そ、そうだよね~」

「ボクが先に見張りをしますからティアさんは先に休んでください」

「わかったよ。何かあったらすぐに起こしてね~」



 すぐに気分を入れ替えたティアは岩場の奥に入るとすぐに眠りについた。



(ティアさんは本当に明るい人ですね。いつも抱き着いてくるのは少し困りますけど。いい人に出会えてよかったです)



 リナも警戒を続けながらアイテム袋からグランオーガ戦で見せた空色に輝く宝石の装飾がされた杖を取り出した。



「明日は頼みましたよ。『レーヴァテイン』」

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