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運命の日 中編

「いったい何が・・・」



 激しい揺れが収まり真っ暗だった視界が少しずつが元に戻ると会議室にはリナ以外の面々の姿が無かった。

 会議室の中にリナ一人が机に突っ伏しているような状態だった。



(皆さんはどこに?それにさっきの揺れといい、いったい何があったのでしょうか?)


 部屋の中を見渡してみるがやはりそこには誰もいない。



「クレフさん、ジンさん、ユーコさん、ネスタさん、ロアさん!誰もいないんですか?」



 声をかけても反応がない。


 リナはみんなにメッセージを送ろうとメニュー画面を開こうと手を縦に振ったのだがメニュー画面が表示されなかった。



(あれ?メニューが開けない?)



 何度か試してみるがメニューが開かない。

 リナは一時的なエラーだろうと考えたのだがメニューが開けないということはログアウトができないと言う事に気が付き、だんだんと不安になり、他の5人を探そうと会議室の外へ出ていった。

 部屋を出て廊下を歩いていると、リナは何か自分の中に疑問のようなものを覚えたのだが、今優先することを考えその疑問を捨て去ることにした。

 しばらく廊下を歩いているとNPCの兵士が城内の警備をしていたのでクレフ達の居場所を聞こうと声をかけた。



「すみません兵士さん」

「ん?どうし・・。も、申し訳ございませんっ」



 リナの声に反応した兵士はリナの姿を見ると突然姿勢を正し顔面蒼白になっていた。

 兵士のその様子を不思議に思いつつもリナはそのまま質問を続けた。



「クレフさんやジンさんがどこに居るのかわかりますか?」

「はっ、国王陛下はただいま謁見の間にてティルブエ国の使者の方と面会中です。ジン様もご一緒に面会されています」

「謁見の間で面会中ですね。ありがとうございます。引き続き警備のお仕事頑張ってください」

「はっ、ありがとうございます」



 兵士からクレフの居場所を聞き出したリナは面会が終わるまで待つことに決めて城にある自分の私室へと向かった。




 リナが去ったあとその兵士はしばらく放心していたのだが、同僚の一人が大丈夫かと声をかけた。



「俺、リナ姫様としゃべっちゃったよ」

「なにぃ?本当か?」

「陛下を探してるみたいだった」

「なんだ、そんなことか」



 その同僚が近くを歩いていたメイドにそのことを伝えるよう言づける。



「お前まだ呆けてるのかよ」

「ああ、姫様が俺にお仕事頑張ってくださいって言ってくれたんだ」

「なにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

「・・・俺もう死んでもいいよ」



 兵士は感激に声を震わせこの日の出来事を神に感謝していた。




(さっきの兵士どこか少し変でしたね。話しかけた時もそうでしたが別れ際もNPCらしくなかったと言うか、気のせいでしょうか)



 私室に到着しその扉を開くとリナは自分の目を疑った。

 リナの私室はよくも悪くもシンプルな部屋で机とベッド、本棚と道具箱のみの部屋だったのだが、今リナの目の前に広がっているのはとても豪華な部屋で天蓋付きのベッドに高級そうなソファーなど見たことのない家具に変わっていて壁紙といったところから何もかもがお姫様の部屋となっていた。



(あれ・・?部屋を間違えたのでしょうか?)



 間違って他の部屋に入ってしまったと思いそこから出ていこうとすると、部屋の端に見覚えのある道具箱が目に入った。

 道具箱といっても大きな宝箱みたいなもので蓋の部分にはリナの名前が彫ってあった。



(これはボクの道具箱ですね。ということはここはボクの部屋なのでしょうか?)



 リナは疑問に思いつつ道具箱の中を確認してみるとやはり自分のしっている中身であった。

 道具箱の中身を確認していると一部のアイテムがなくなっていることに気が付いた。

 もしやと思い腰につけているアイテム袋に手をあてて中身を確認してみると、袋の中身はそのままの状態で残ってあった。



(よかったこの中は無事ですね、でもアイテム袋は問題ないのにメニューだけ表示されないとは、やはり一時的なエラーのようなものなのでしょうか)



 システムの一部は生きていると知って少し安堵したのだがその反面、未だにメニューが開けないことに不安が積もっていく。

 リナは少しでも気を紛らわせようと見慣れない部屋を見ていると扉をノックする音が聞こえてきた。



「リナ様、クレフ陛下がお呼びです」



(さっきの兵士さんが伝言してくれたのかな?)



「はい、今行きます」



 扉を開けるとそこには少し年配のメイド服を着た女性がいた。

 こんな人いたかなと思ったもののまずは現状の解決だと思い、リナはメイドにクレフのいる場所まで案内してもらうことにした。



 廊下をしばらく歩くとまたもリナが見たことのない扉がそこにあった。



「すみません、こんな部屋前からありましたか?」



 リナがそう聞くとメイドは少し困った表情を見せた後にすぐに答えた。



「私がクレフ陛下にお仕えする以前からあったと記憶しております」

「仕える?」

「はい。私がお仕えしたのはリナ様が御生まれになる前から。お仕えしておりますのでもうすぐ20年ほどになります」



 メイドのその言葉にリナは今まで感じたことがないようなすごい衝撃を感じた。



(20年?ボクたちがこの国を造ってからまだひと月のはずです。それにボクが生まれる前って・・・)



 その場で考え込んでしまったリナだったが、メイドが部屋の扉を開けるとそこに見知った顔を見つけた。



「クレフさん!ユーコさん!」



 扉の先にはクレフとユーコの姿があった、クレフはいかにも王様のような恰好をし、ユーコに至ってはすごく落ち着いた豪華なドレスを身にまとっていた。

 リナは目を覚ましてからずっと不安になっていたため二人の服装やその様子を気にもせずに二人に駆け寄った。



「おいおい、急にどうしたんだ?」



 クレフがそうと問いかけるとリナは普段は見られない早口で口で開いた。



「クレフさん、さっきの揺れからずっとメニュー画面が開けないんです。それにログアウトもできないし運営のエラーでしょうか?それに城にいるNPCのみんなもどこか少し変ですしボクの部屋の中も変わっていたんです」



 リナがそう捲し立てるとクレフはスッと目を細めるて口を開いた。



「落ち着きなさい」

「でも、いったい何が起こっているのかボクさっきから不安で」

「リナ!!」

「でもクレフさん」

「それもだ、リナ」

「え?」

「『めにゅー』やら『ろぐなんとか』の意味もわからんが自分の両親を他人行儀で読んだかと思えばボクだと?いったいどうしてしまったんだ?」



 クレフの言葉にさっきよりも強い衝撃をまたも受けたリナはその場に崩れおちた。



「「リナ!?」」



 クレフとユーコは崩れ落ちたリナの姿を見て駆け寄った。



「だ、だいじょうぶです」

「そ、そうか?なんなら医者を呼ぶが」

「ほ、本当に大丈夫ですから」

「そうか」



 リナは大丈夫だと伝えたのだが二人は心配してリナをベッドまで運んだ。

 そんな二人の様子を見ていたリナは今までの二人とは明らかに別人だと思い自分の身にいったい何が起きているのか考えてみることにした。



(二人の様子からボクの知っているクレフさんやユーコさんではないですね。ボクの事を娘だと思っているみたいですし。それにさっきの揺れからもう3時間ほど経ってますけど未だにメニュー画面が開かないこと、NPCの人たちの言動があまりにも自然すぎること、エラーや何かの原因で目が覚めない状態なのだとしてもこんなに意識がはっきりしている状態なのですから夢だとは思えません。このことからもしかすると・・・)



 リナが考え出したある可能性、それはゲームの世界に似た異世界に来てしまったという可能性であった。

 もともとリナはそう言った小説などは愛好していたので可能性として考えていたのだが本心ではこれは夢だろうというのがリナの小さな願望でもあった。



「リナ?リナ聞いているのか?」

「え?は、はい。何でしょうか?」

「まったく、本当になんともないんだな?」

「リナ、少しでも体調が悪いんだったたら無理せずにちゃんと言うのよ?」



 考え事に夢中になってしまっていたために二人に呼ばれていることにまったく気が付かず余計に二人を心配させてしまった。

 心配する二人に何と言ってごまかそうかと考えていると、突然部屋の扉が開かれた。



「父上、リナは大丈夫ですか?」



 クレフを父と呼ぶジンの登場だった。

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