瞬殺
「この先に反応があるよ」
ティアが森の奥に魔闘士の男の魔力を感じ取っていた。
「まずわしが様子を見てくるから二人はここで隠れていてくれ」
「わかりました」
ソフィアは二人を置いて先に偵察に向かった。
残された二人は自身の装備の確認や先程までの戦いの傷の具合を確認していた。
「リナちゃん、体は大丈夫なの?」
「ありがとうございます。ティアさんから頂いた最上級ポーションのおかげで体は大丈夫ですよ」
「そっか、でも無理しちゃだめだよ」
「はい」
二人が会話していると偵察に出ていたソフィアが戻ってきた。
「戻ったぞ」
「おばあ様、どうでしたか?」
「この先に小屋があった。おそらくさらわれた者達もこの中にいるじゃろう。魔闘士の男は小屋の前で見張りの者と何やら会話をしていたの」
「見張りの数は?」
「見える位置からは二人確認がとれたの、他にもいるのかはわからぬの」
リナが敵戦力の確認のため詳しい情報を聞こうとしたが、残念ながら詳しい情報を得ることはできなかった。
「どうしますか?敵の数がわからないのでしたら敵の奇襲も視野に入れて正面からは避けたほうが良いですよね?」
「いや、森の精霊に聞いてみたところ森の中には他に人はいないみたいでの、敵がいるとしても小屋の中じゃろう」
「でも小屋の中に二人以上いたらこっちが不利じゃないの?」
ティアが弓の調整をしながらソフィアに問う。
「そこでじゃ、ティアには木の陰から小屋の入り口を警戒してほしいのじゃ、魔闘士の男の実力はわしがわかっておるからそこまで警戒することは無い、残りの二人の見張りじゃがリナの魔法でどうにかならんかの?」
「見張りの人たちは魔法使いですか?」
「いや、槍を装備している者と剣を装備している者の二人じゃったから魔法使いではなさそうじゃの」
「でしたら不意打ちにはなりますが倒すことは可能です」
「ならそれで頼む」
「わかりました」
ソフィアの言葉にリナは首を縦に振り役目を受け入れた。
「でもおばあ様ってその魔闘士の人との戦いで苦戦していたんじゃないの?」
ティアがソフィアに質問をする、その疑問に関してはリナも気になっていたことなので心配するような表情でソフィアの顔を見上げた。
「大丈夫じゃ、さっきの戦いでは生け捕りを目的で戦っておったから苦戦しているように見えたようじゃが本気で戦えば問題はないの」
「そうだったんだ・・そうだよねあのおばあ様が苦戦するとは思えないもんね」
「わしの心配はいいから自分の仕事をしっかりとこなすんじゃよ。情報はすでに捕らえた者たちから聞くことにするから残りの者に関しては始末してしまってもかまわんからの」
「了解です。じゃあ私は先に狙えそうな所に向かうね」
「頼んじゃぞ」
「お気をつけて」
「リナちゃんもね、無理しちゃだめだよ」
「はい」
ティアはスッと気配を消すとリナたちのそばから離れていった。
「ではリナわしらも向かうとするかの」
「はい」
リナとソフィアは姿を隠しながら小屋へと近づいて行った。
小屋に近づいていくと、ソフィアの偵察してきた情報と同じように見張り二人と魔闘士の男がそこにいた。
魔闘士の男と見張りの二人は会話をしているというよりも何やらもめているようだった。
「だから全員やられたんだって言ってるだろうが!!」
「おまえの任務はまだ達成されていないだろう?」
「だからそれを旦那に報告するっつってんだろうが!」
「主は今は忙しいのだ。報告は任務を達成してから戻ってこい」
その様子を陰から観察していたリナは相手の戦力を確認していた。
(あの見張りの二人もそこそこの使い手みたいですね。足止めとなるとそれなりの魔法を使った方がいいですね)
「ナ、リナ!聞いておるのか?」
「え?あ、はい。大丈夫です」
「さきの作戦で変わりなくいくがよいかの?」
「はい。ボクが魔法を発動させた同時に出てくださいうまくいけば無理なく突破できるはずです」
「わかった。ではゆくぞ!!」
ソフィアの合図とともにリナは魔法の詠唱を始めた。
「『氷精よ、大気の水を我の力に、凍てつく氷よ、吹き抜く風よ、全てを切り裂け、全てを突き抜け、全てを蹂躙せよ、ブリザードカタストロフィ!!』」
リナの魔法の発動と同時にソフィアが走って行った。
「ぐわっ!?」
「な、なんだ!?」
突然リナの魔法に襲われた。見張りの者たちは魔法によって足の腱を切られその場に倒れ込んだ。
「追ってきやがったのか?」
「すまんのう。お主はここで終わりじゃ」
ソフィアが魔闘士の男の背後に回り込むと剣を抜き放った。
魔闘士の男もソフィアにすぐさま反応し裏拳を放つがその場にはソフィアはもういなかった。
「なに!?」
魔闘士の男は驚きの表情を見せるがソフィアは正面に回り込みもう一太刀魔闘士の男に放つと、魔闘士の男は首と胴体が二つに分かれその場に斃れ込んだ。
「その者たちは生きておるのか?」
「はい。両足の腱を切っているので動くことはできないはずです」
「そうか・・・しかしここまで物音が立っておるのに中の者は出てきすらしないか」
かなりの戦闘音が出ていたはずなのだが小屋の中にいるであろう者が出てくる気配がなかった。
「・・・なかに皆が捕まっているはずじゃ」
「でも危険ですよ?」
「それでも行くしかあるまいて」
「わかりました」
リナとソフィアは覚悟を決めて小屋へと足を進めた。




