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リナとティアの共闘

 二人の視界から隠れたリナとティアは小声で話し合っていた。



「おばあ様達とは大分引き離されちゃったみたいだね」

「はい。あの人たちが遠くへとボクを誘導するかのように攻撃してきましたから、ところでティアさんが相手をしていた敵の弓兵はどうなったのですか?」

「もちろんちゃんと倒してきたよ。これでいつでもリナちゃんに加勢できるようになったよ」



 自慢げに胸を張るティアだったのだが若干怪しい微笑みの表情がリナのある種の危機を知らせるセンサーのようなものが反応していた。



「あ、ありがとうございます」



 リナが返事を返すとティアは真剣な表情に変わり木の物陰に隠れながら魔法使い二人に視線を送った。



「・・苦戦してたみたいだったけど、あいつ等強いの?」

「はい、あの黒いローブを着ている男の方が火の魔法の使い手で実力はかなりのものです。もう一人のマントを付けた男の方は風の魔法使いで火の魔法使いの攻撃の補助をしてきますが、あの人もおそらく実力はあると思います」

「了解。それで?何か手は考えてあるの?」

「一応はあるんですが、使いたい魔法が相手に直接触れないと使えないので、今の状態では難しいですね」



 リナの使おうとしている魔法は相手を傷つけずに捕らえる魔法である。

 リナは今回の侵入者達には何か裏があると考えているため出来るだけ生かして捕らえその内容が知りたいという気持ちが強かった。

 ・・・のだが実際には今まではこの世界はゲームの中の世界だったのだが今ではここがリナにとっての現実世界、その世界で人を殺すことにリナはまだ抵抗があったのだった。



「じゃあ私が二人を引き付けるからリナちゃんはその魔法の準備をしてて」



 そんなリナの気持ちを知ってか知らずかティアは笑顔でそう提案する。



「ダメです、危険すぎます」



 ティアの提案をリナはすぐに否定する。リナの考えでは姿を見せた瞬間にジャックの魔法がジョニーの魔法に乗って回避できない攻撃が来るはずだから、今隠れられている隙に何とか二人を引き離したいところだった。



「ティアさん、まずはあの二人を引き離して各個撃破していった方がいいと思うんですが何かいい方法はありませんか?」



 リナの作戦を聞いてティアは草の影から二人を見る。



「んん~難しいと思うな。あの二人はさっきから絶対にお互いを目線から外さないように私たちを探してるから、この二人を引き離すのは流石に無理なんじゃないかな」

「そうですよね、だったらティアさんは遠距離から二人の後方に向かって弓を放ってください。二人の気がそれたその隙にボクが行きます」

「それは危険すぎるから却下だよ」

「でもこのままでは・・・」



 リナがそう言うとティアが何かを思いついたのかリナの耳元で作戦を伝える。



「ティアさんそんなこともできるんですか?」

「まあ相手の動きが完全に止まっていたらだけどね、これなら失敗してもとりあえずは安全でしょ?」

「そうですね。その作戦で行きましょう」

「じゃあ私はポイントに行くからすぐに魔法の準備を始めてね」

「わかりました。気を付けてくださいね」

「うん」



 ティアはとびっきりの笑顔を見せるとすぐにリナの視界から消えていった。



「さてやりましょうか!!『氷精よ、大気の水を我の力に、吹雪の嵐よ、彼の物を運べ、吹きすさべ、大気に満ちよ、ブリザードスコール!!』」



 ティアに言われた時間通りに魔法を放ちリナも作戦の時を待った。



「ちくしょうあいつどこに隠れやがった!!」



 ジョニーはなかなか見つからないリナに苛立ち始めていた。



「落ち着け、俺たちから逃げているということはまずは無い。必ず出てくるその時に一気に決めるぞ」

「お、おう。そうだな」



 ジャックのその言葉でさっきまで苛立っていたのが嘘の様にジョニーは冷静さを見せていた。

 そんな時だった。



「ん?雪?」



 突然雪が降ってきたかと思うとそれは吹雪となり二人を襲った。



「なんだ?なんだぁ?」

「狼狽えるな!これはあいつの魔法だおそらく俺たちの視界を潰して魔法を放ってくるはずだ、この吹雪に足を取られないようにしっかり耐えろ!」

「お、おう」



 ジャックは吹雪の中でも冷静に状況を判断しジョニーに伝える。

 しかし今回はそれが裏目に出た形となってしまった。



「影打ち!!」



 ティアが死角から放った二本の矢はジャックとジョニーの影を完全にとらえていた。

 ティアの放った影打ちとは、完全に停止している者の影に矢を打ち込むことによってその者の動きを数秒封じる物だった。



「う、うごけねぇ」



 ジョニーがそう唸った時にはもう遅かった。

 ティアの矢が視えた時に駆け寄っていたリナはすでに二人に近づいていた。



「ティアさん、ありがとうございます。『氷精よ、我に力を与え氷結の牢獄を、彼の者の動きを止めよ、アイスロック!!』」



 ティアの力を借り二人に接近したリナは魔法を詠唱し二人の体に触れた。その瞬間二人の体は氷に包まれ始める。



「お、おい、嘘だろ!?」

「ちっ」



 瞬く間に二人の魔法使いは完全に氷の中に閉じ込められていった。



「お疲れリナちゃん」



 リナのすぐ近くに降りたったティアは声をかけつつもすぐさまリナの頭を撫でる。



「いえ、ティアさんのおかげでうまくいきました」

「この人たちは死んだの?」



 ティアは完全に凍り付いている二人を見て言う。



「いえ、死んではいません。氷の中で仮死状態になってるんです」

「かしじょうたい?」

「えっと、ほとんど死んだ状態なんですけど、ボクがこの魔法を解けばそのまま中の人は生き返ります」



 ティアはわかったようなわからないような表情を見せる。



「この氷は解けたりしないの?」

「絶対に解けないとは言えませんが簡単には解けないと思います。ボクが魔法を解除すればもちろん解けますが・・・あとは、上級以上の炎の魔法で溶かすとかでしょうか」

「上級以上??まあいいや、とりあえずは安心なんだよね?」

「そうですね、とりあえずこの二人はこれで大丈夫ですから早くソフィアさんの所へ行きましょう」



 リナがそういった瞬間だった。



 突如背後から物凄い高温を感じてリナたちが振り返ると、ジャックを覆っていた氷が溶け始めていた。



「リナちゃん」

「はい、これは・・・」

「まだおばあ様の所へは行けなさそうだね」



 ジャックは自信を覆っていた氷が溶け始めるとすぐさま魔法の詠唱を始めた。



「『火精よ、大気の炎を我の力に、奈落の底から這いあがれ、地獄の炎よ焼き焦がせ、すべてを焼き尽くし、焦土となして、爆ぜ駆けよ、フレイムバースト!!』」



 ジャックの放った魔法はリナたちへ放たれた魔法ではなく、隣で氷ついているジョニーに向かって放たれたものだった。



「なるほど、この魔法では溶けないか」



 ジャックの放った魔法は中級の魔法だったのでジョニーの氷を溶かすことはできなかった。



「まあいい、お前を捕らえればいいだけだしな」



 ジャックは、そう言い放ちリナを鋭い眼光でにらみつけた。



(この威圧感、さっきとは別人ですね)



 リナがそう感じた時だった。ジャックから溢れ出る凄まじい熱風が周囲の家や木々を吹き飛ばし始めた。



「リナちゃん、この人さっきと全然違うよ?」

「そうですね、さっきまでとは全くの別人のようです」



 ジャックの放つ熱風を堪えながら戦闘態勢になるリナとティアしかしそんな二人に小さな子供の泣き声が聞こえてきた。

 二人が声のする方へ視線を向けると吹き飛ばされた家の中に逃げ遅れていたエレフの子供がいた。



(エルフの子供!?ここにいては戦いの余波に巻き込まれてしまいますね・・・)



「ティアさんあの子を逃げている皆さんの所まで連れて行ってくれませんか?」

「でもリナちゃんは?」

「あの人、ジャックさんと決着をつけます」

「だったら私も」

「ボクたちの戦いの余波にあの子が巻き込まれるかもしれません。最優先はあの子の命です」

「・・・わかったよ。すぐに戻ってくるから死なないでね」



 ティアはそう言い残しすぐさま子供のエルフの元に駆け寄り抱え上げるとその場を離れた。



「さあ、邪魔者は消えた!さっそく再戦といこうじゃないか!!」



 ジャックもティアがいなくなるのを待っていたのか嬉々として声を上げリナを見据える。

 リナもそれに怯まず杖を構えた。

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