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もう一つの戦場 前編

 一方ソフィアは、槍を持った大男と戦っていた。



「糞が、お前ぇ、なかなかやるじゃねぇか」

「お主もな」



 ソフィアと大男との力の差は若干ながらソフィアの方が上回っていたのだが、大男の持つ槍のリーチの長さからソフィアがうまく攻め込めない状態になっていた。



「しかしせっかくリナが魔法使い共を相手してくれておるのにのぉ、わし等がこの調子じゃと申し訳ないわい」



 ソフィアがそう呟くと大男の口角が上がり下品な笑みを見せる。



「へぇ、あのチビ、リナってのか?あいつ人族だろう?お前らの奴隷か?」

「失礼なやつじゃのう」



 大男の言葉にソフィアは眉をひそめる。



「奴隷じゃねぇのかよ?だったらあいつは何なんだ?」

「お主には関係ないっの!!」



 気を悪くしたソフィアは丸い盾の形状を利用して槍をそらすと大男の懐に踏み込む。



「遅えよ!!」



 しかし大男も場数を踏んでいるのかうまく槍を回しソフィアの前進を阻止ししながら返り討ちにしようとする。

 ソフィアはそれをギリギリのところで躱し一呼吸入れる。



「おっと、わしとした事が冷静にならんとのぉ」



(しかしこれは少々まずいの。こやつも中々やりおるが、他の者もこやつとそう実力はそれほど差がないと見える・・)



 ソフィアは一瞬だけ大男から視線を逸らすと、他のエルフたちが戦っている者を確認した。

 一人は武器を持たずに戦う男だった素手でエルフたちの剣撃や矢を弾いているところをみると魔闘士だと思われた。

 魔闘士とは、呼ばれる無手で戦う者たちの事で、普通なら魔法を使う際には詠唱を行い魔法を発動、魔力を放出させるのだが、魔闘士は魔力そのものを放出せず自身に纏わせ全身を鍛え上げられた武具の様に硬く強靭にし相手を屠る武術でこれを扱える武闘家はなかなかいないと言われ、無手での接近戦だと最強の技と伝えられているものだった。

 もう一人は、全身真っ黒の姿で顔をも仮面で隠してあり一言も言葉を発さない謎めいた人物で長直剣を使う者だった。

 長直剣は直剣よりも長い剣でその分扱いが難しい武器ではあるが上手く扱える者なら中近距離での戦闘をかなり有利にこなせる武器と言われている。

 そしてこの謎めいた剣士は長直剣を使いこなし周囲を囲うエルフたちを寄せ付けずに戦っている。この者と戦っているエドアルドもなかなかの長剣の使い手ではあるのだがその実力は拮抗しておりなかなか攻め込めないでいた。



「おっとよそ見してると痛い目みるぜ?」



 目線をそらしたソフィアに大男が襲い掛かる。



「おっと」



 ソフィアはすぐに視線を戻し大男の攻撃をそらし事無きを得てすぐに距離を取った。

 



「戦闘中によそ見をするなんて余裕があるじゃねぇか」

「いやいや、そんなことはないぞ?これでも族長なのでな、周りが気になるだけじゃ」



 ソフィアがそう言うと大男は攻撃の手を止めた。



「やっぱりお前がここの族長だったのか」

「それがどうしたのじゃ?」

「いやぁ間違い無えなら別にお前には関係ねぇよ!!」



 大男は会話をすぐにやめるとさら速い動きで槍を突き出す。



(そういえば先程こやつらわしに用があるようなこと言っておったのぉ。旦那とか言う者に何を言われたのか聞きたいところじゃが、皆の者も気になるしすぐにでも決めるかのぉ)



「お主、賊にしては腕が立つではないか」

「あぁ!?油断させるつもりか?」

「いやいや、これは本音じゃよ?」



(ふむ、油断せぬか・・・)



 そんなソフィアの言葉に気が立ったのか大男の動きがさらに速くなり槍を突きさす動きに加え槍に回転をさせて襲い掛かる。



「オラオラオラァ!!」



 過激になる攻撃をソフィアは上手く逸らしなが攻撃を躱す。



(激しいのぉ。これはまともに受けるとまずいのぉ)



「じゃが受けに回っておっても好転せぬし、それに何よりそんなに時間をかけるわけにもいかんからのぉ、一気に決めさせてもらうぞ!!」



 ソフィアは盾を床に置くと細剣を裏手に持ち替え構えを低くする。



「お?なんだ?あきらめたわけじゃあ無さそうだな」



 大男の方もソフィアの構えが変わったところで攻撃の手を止め、槍を両手で構えるとソフィアのあらゆる動向を見逃さないように見つめる。



「では、ゆくぞっ!!」



 ソフィアは不敵に笑いながらそう言い放つと、先ほど見せた素早い動きで大男との距離を一気に詰める。



「甘いわぁ!!」



 大男は完全にソフィアの動きを見切っており迎撃の構えを見せたその時だった。



「『木々の精霊よ、発光!!』」



 ソフィアがそう唱えるとちょうど大男の目の前を漂っていた木々の精霊が強く発光し大男の目をつぶした。



「な、なに!?」



 あまりにも速いソフィアの詠唱と突然の目潰しに驚く大男だったが。



「すまんのぉ」



 ソフィアはそう言いながら大男の首を掻き切った。

 大男の首は引き裂かれ、出血も多くすぐにでも死にそうだった。



「武士としては正々堂々と戦いたかったのじゃが、今は緊急時じゃ。お主のような使い手相手にこのような姑息な手を使ってしまって申し訳ないとは思うが・・・」



 ソフィアが細剣を持った手を上に挙げる。



「ち、ちぐ・・しょう・・・」

「今回は容赦せん」



 冷酷な表情に変わったソフィアは挙げた手を振り下ろし細剣を大男の頭に突き刺した。

 大男の息の根は完全に止まりその場に斃れ動かなくなった。



(まずは一人目じゃのう。リナは大丈夫かの?・・いや今はこっちじゃ、少なくとも一人は生け捕りにしたいところじゃが、この手はもう使えんじゃろうしのぉさて、どうしたものやら)



 ソフィアは再び二つの戦況を確認する、その表情はいつも通りの表情に戻っていた。



(エドアルドの方は、・・まだもちそうじゃな、ならわしはこっちに行くか・・)



 黒男の方はエドアルドが何とか持たせていたのでソフィアは盾を拾い上げ魔闘士側へと足を進めた。

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