攻防戦
敵の魔法使いの魔法をリナは軽い身のこなしで回避する。
「ちっ!あのちっこいのいい動きしやがるな!!」
「落ち着け!!この距離ならお前の魔法の方が早い。いつもと同じ手はずでいくぞ!」
「そうだな。やってやる!」
風の魔法使いが悪態をつくがすぐに火の魔法使いがそれを窘め冷静さを取り戻させた。
「ではいくぞ!!『火精よ、我に力を与え敵を貫け、ファイアランス!!』」
「おう!!『風精よ、我に力を与え突風を、ウィンドブラスト!!』」
火の魔法使いの放つ火の槍が風の魔法使いの魔法で加速しリナに襲い掛かる。
「『氷精よ、我に力を与え守りの力を、アイスシールド!!』」
リナも氷のシールドを出し攻撃を防ぐが、加速している火の槍は簡単にシールドを突き破った。
これにはリナも驚き自身の身に危険を感じたが何とかシールドのおかげで狙いがそれ火の槍はリナの足元に突き刺さった。
「外れたか、もう一発行くぞ!」
「了解!!」
(これは予想以上に厄介ですね)
再び敵の魔法使いが同じ魔法を詠唱し始める。
「ここは一か八か試してみましょう。『氷精よ、我に力を与え姿を隠せ、アイスミスト!!』」
リナが魔法を唱えると霧が発生しリナの姿を隠していく。
「無駄だ!!『火精よ、我に力を与え七つの刃よ、敵を切り裂け、ファイアソード!!』」
「『風精よ、我に力を与え突風を、ウィンドブラスト!!』」
七つの刃が霧で消えていくリナの影へと襲い掛かる。
風と火の着弾で起きた爆風で霧が消えていく。
「どうだ?」
風の魔法使いがリナを確認しようと目を凝らすがそこにはリナの姿はなかった。
「ど、どこに行きやがった!?」
風の魔法使いが声を漏らしたその時だった。
「『氷精よ、我に力を与え三つの刃よ、敵を切り裂け。アイスソード!!』」
リナの魔法が空中から飛んでいく。
それは攻撃の担当であるであろう火の魔法使いを狙ったものだった。
「何?上からだと!?」
リナの魔法に気が付いた火の魔法使いはすぐに身を引きそれを躱すが、片腕に傷を負った。
「くっ」
火の魔法使いは手傷負ったが風の魔法使いは未だ健全ですぐにリナへと魔法を放つ。
「馬鹿め、空中に浮いては躱せまい『風精よ、我に力を与え風の刃を、ウィンドカッター』」
宙に浮いて身動きの取れないリナに向かって風の刃を放ったのだが、
「『氷精よ、我に力を与えよ、アイスキューブ!!』」
リナは空中に大きな氷のブロックを魔法で出現させとそれを足場にしてさらに高く跳躍し攻撃を躱した。
「な、なに!?」
風の魔法使いが驚いているところに更なる追撃のために詠唱を始める。
「『氷精よ、我に力を与え三つの礫を、アイスバレット!!』」
敵の二人は警戒し防御を固めるが、これは追撃と見せかけた陽動で敵との距離を詰めるためのものだった。
「これで魔法での距離による差はなくなりました」
敵の魔法使いの近くに飛び降りたリナはそう言うと、杖を構えて新たな魔法を詠唱する。
「『氷精よ、大気の水を我の力に、彼を切り裂け、薙げ散らせ、力を持って、吹きすさべ、ブリザードランス!!』」
「なに!?大魔法だと?」
風の魔法使いが慌てだすが、火の魔法使いは冷静に対処を始める。
「『火精よ、大気の炎を我の力に、ここに収束し、炎よ逆巻き、我を守りて、壁となれ、フレイムウォール!!』
火の魔法使いが使った魔法が炎の壁となり、リナの攻撃をすべて溶かしつくす。
(やっぱり、あの人とは相性が悪いですね、それに詠唱のスピードが早い、ボクの魔法に合わせて魔法を使ってくるなんて)
「さすがだ、相棒!助かったぜ」
風の魔法使いが称賛するが火の魔法使いはそれを無視しリナに話しかけた。
「おい女。お前の名はなんと言う?」
火の魔法使いは攻撃の手を止めリナに名前を聞く、リナは一瞬それを罠かと思ったのだが、火の魔法使いの真剣な目を見てそれを改める。
「リナ・・です・・」
「リナか、良い名だ」
火の魔法使いは小さく笑顔を見せると言葉をつづけた。
「俺の名前はジャック。こいつはジョニー。リナお前は人族だろう?なぜエルフの味方をする?」
「・・・ボクも聞きたいです。なぜ貴方ほどの腕の魔法使いがこんなことを?」
ジャックの質問にリナは質問で返す。
「俺たちは、まあ、依頼されてきたんだ。だが勘違いしないでくれよ?あいつらとは一緒にはしてくれるなよ?」
ジャックはそう言って、ソフィアたちエルフと戦っている男たちを指す。
「そう・・ですか。ボクは悪いことをしているのを見逃すほど出来た人間ではないので、今回は貴方たちがエルフたちに仕掛けてきた、だからエルフたちに加勢しているただそれだけです」
リナの言葉を黙って来ていたジャックから思わぬ言葉が投げかけられた。
「・・ならリナよ。俺たちと来ないか?」
「え?」
「実際俺たちの仕事はもう終わったようなものだからこれ以上エルフを攻撃することは無い、それにお前程の腕なら即戦力だ。手を組むって言うなら俺たちはもう引くどうだ?悪い話じゃないだろ?」
そう言ってジャックはリナに近づいてくる。
(確かに、この人たちが引いてくれるのは助かりますけど、でも)
「お断りします。それに」
リナの一言でジャックの足が止まった。そこで、
目を離していたジョニーの方向からリナの首を狙った魔法が飛んできた。
「そんな罠には引っかからないですよ」
リナは杖を回すと会話の途中で小声で唱えていた魔法を起動した。
「『アイスシールド!!』」
(なんとか防ぐことはできましたけどさっきの傷は完全に治っていますね)
ジャックは会話をしながら手に負っていた傷を癒していた。
完全に攻撃から身を守ったリナを見たジャックはさっきまでの紳士的な態度とはうって変わって下品な表情で大声で笑った。
「はははははは、お前が初めてだよ、引っかからなかったのは、これからお前を捕らえるのが楽しみになってきたぞ。おいジョニーこいつは殺すな、俺がもらう」
「ったく。わかったよ、手加減すればいいだろう」
ジョニーが悪態をついたその時だった。
「『火精よ、大気の炎を我の力に、奈落の底から這いあがれ、地獄の炎よ焼き焦がせ、すべてを焼き尽くし、焦土となして、爆ぜ駆けよ、フレイムバースト』」
「なっ!?」
ジャックの放った魔法はリナがこの世界で見たどの魔法使いが使った方よりも強力なものだった。
(中級魔法のなかでも上位の魔法、こんな魔法を使える人がこんなところにいるなんて)
突然の事だったので完全にリナの動作は遅れ炎の魔法がリナを包み込んだ。
「相棒、あの女は捕らえるんじゃなかったのか?」
「これで死んだならそこまでの女だったってことさ」
ジャックは確実にリナを殺すつもりで魔法を放っていたのだった。
「で、あの女はっと」
魔法が消えていきリナの死体を確認しにきたジョニーだったがそこにリナの死体がなかった。
「また上か?」
ジョニーは空を見上げるがそこには誰もいない。
「どこに行きやがった」
ジョニーが辺りを見渡している時にはすでに木の影にリナはいた。
「助かりました」
「どういたしまして」
リナを助けたのは大きな胸を張るシェスティアだった。




