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大火災

 族長の家から3人が出るとそこに広がっていたのはあんなに奇麗だった景色はなく家や木々に火が放たれて大火事になっていた。



「ひどい」



 その光景を見たティアが膝から崩れ落ち掌で口を覆い涙を流していると、そこにエドアルドが息を切らせながらやってきた。



「申し訳ありません族長。侵入者です」

「どんな状況じゃ?」

「そこからともなくやってきた人族が突然火を放ち防衛に回った我々に切りかかってきました。相手は13人、その中に魔法使いを二人確認しております。今は何とか戦って抑えてはいますがいつ防衛ラインを越えられるかは・・・」

「そうか、してこの火災の消火作業はどうなっとる?」

「それが、侵入者への防衛で精一杯で手が回らず戦えない者たちで何とか消火しているのですが全く人手が足りていない状況です」

「戦闘員以外の皆は大丈夫なんですか?」



 ソフィアとエドアルドの会話にティアが割って入る。



「それが侵入してきたときに数人捕まってしまったらしく・・・」

「そんな・・・」



 ティアは絶望した表情で絶句した。



「そう落ち込むな、まだこの森から出て行ってはいないはずじゃ、それならまだ助けられるはずじゃ。そうじゃろうエドアルド?」

「はい、しかし相手もそれをわかっているのか、我々の足止めのためなのか、まだ連れ去っていくためなのか未だに里に攻め込んできています」

「そうか・・・わかった。わしもすぐに向かうお主はすぐに防衛へ戻ってくれ」

「はい」



 エドアルドはすぐに踵を返し走り去ってしまった。



「すまんのう。リナよ、そういう事になっておるみたいでの、ここも安全とは言えんからのティアに案内させるからすぐにここから逃げてもらえんかの?」



 ソフィアは今までに見せていなかった族長の顔になっていた。

 あくまで客人のリナには危険な場所からは逃げてもらおうとティアに指示をしているところでリナから声がかかった。



「ソフィアさん、ボクも戦いますよ」

「そう言ってくれるのはうれしいのじゃがあくまでもおぬしは客人じゃ、危険な目に合わせるわけにはいかんからの」

「そうだよ、リナちゃんはお客さんなんだから私たちの問題にわざわざ巻き込まれることはないよ」



 ソフィアは少し困った表情をみせてリナの提案を断った。

 しかしリナはその言葉をいつか言ったようなセリフで否定した。



「大丈夫ですよソフィアさん。これでもボク、結構強いですから」

「リナ・・・」

「リナちゃん・・・ありがとう。でもやっぱり・・」



 二人はそういうリナに感謝しつつもやはり客人なので迷惑をかけられないと思っていたのだがリナはそんな二人の考えをよそに話を強引に進めていった。



「さて、まずはこの火災を何とかしないといけないですね」

「リナちゃん!?」

「皆さんは水の魔法は使えますか?」

「リナ?」

「今は話し合いをしている場合じゃないはずです」



 珍しいリナの強い言葉にソフィアが一瞬驚いたがすぐに答えをかえした。



「そ、そうじゃの、しかし残念じゃがわしらエルフは木々の魔法は得意じゃが水の魔法は苦手での。火をどうにかするには湖から水を汲んでくるしか方法がないのじゃ」

「そうですか」

「すまんのう」

「大丈夫ですよ、そういうことでしたら任せてください」



 ソフィアの不安をよそにリナは簡単に言う。



「魔法を使いますので、少し寒くなるかもしれないので気をつけてくださいね」

「わかったのじゃ」「うん」



 ソフィアとティアがうなずいたのを確認するとリナは魔法の詠唱を始めた。



「『氷精よ、大気の水を我の力に、吹雪の嵐よ、彼の物を運べ、吹きすさべ、大気に満ちよ、ブリザードスコール!!』」



 リナが詠唱を終えると天候が一気に変わり猛吹雪となって家や木を燃やしていた火を鎮火させていく。



「こ、この魔法は・・・」

「すごい・・・」



 二人はリナの魔法に驚きながら消えていく炎を眺める。



「火が消えたらすぐに収まるように調整しておきましたから吹雪による被害はでないはずです」

「そ、そうか助かる」



 ソフィアはリナの魔法の腕のすごさに驚き言葉があまり出ないようだった。



「リナちゃんってすごいんだね」

「そんなことないですよ、魔法の得意な人ならこれくらいは」

「ううん、そこじゃなくっていや、魔法も本当にすごいんだけど、こんなにすごい魔法を使ったのに全然魔力量が減ってないなって思って」

「え?」

「あぁ、言ってなかったっけ?おばあ様が過去を視る力を持ってるみたいに私も他の人の魔力量が細かく分かるの」

「そ、それはすごいですね」



 普通相手の魔力の量はある程度しか把握することができないのだが、ティアはそれが細かくわかるという。それは普通の人にはできない事だった。



「そう?ありがとうって、そんなことより早く皆を助けなくっちゃ」

「そうですね、行きましょう」

「そうじゃな」「うん」



 3人は侵入者が来たという方向へと走っていった。



「リナよ本当に良いのか?」

「何がですか?」



 走りながらソフィアがリナに質問を投げかけた。



「敵とはいえ相手はおぬしと同じ人族じゃ、わしらエルフに加担してもよいのか?」

「あたりまえじゃないですか」



 ソフィアの質問にリナは笑顔で答える。



「相手が誰であれ悪いことをしていることには変わりありません、そこに種族の違いなんか関係ないですよ。それにボクは奴隷とかそうやって人を道具のように扱うことは大嫌いですから」

「そうか、ありがとう」



 ソフィアはそういうともう何も言わずに目的の場所まで黙って走っていた。



「おばあ様・・・」

「そうしたんですか?」

「おばあ様があんな表情になっているのは初めてみるからね、どんなことを考えているのかなって思ってね」



 ティアがそういうのでリナもチラッとソフィアの顔を見る。



「別にさっきと変わってないと思いますけど・・」

「リナちゃんはさっきおばあ様と初めて会ったからわからないと思うけどいつもと全然違うんだよ」

「そうなんですか・・・」



(ソフィアさんどうしたのでしょうか・・・。いえそんなことよりも侵入者の事ですね、この火の周り具合から推測するとなかなかの魔法の使い手ですね。少なくとも火と風の魔法は使えるはずですね。それに先程ソフィアさんが言っていた探知の魔法の使い手もいるはずですからボクたちが近づいていることにも気が付いているかもしれませんから奇襲に気を付けていかないといけないですね)



「とりあえずは」



 リナは奇襲に備えて魔法の詠唱を始めた。



「『氷精よ、我に力を与え守りの力を、アイスシールド』」

「「!!?」」



 突然現れた氷の盾に二人は驚く。



「驚かせてすみません、おそらく敵にはボクたちが近づいていることに気づかれていると思いますので奇襲に備えておきますね」

「そうか、ありがとう」

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