シェスティア
リナは一度エルフたちと別れ里に向かうために身支度をしていた。
(ビックリしました。まさかボクからあんな悲鳴が出るなんて、体が女性の物になっているのでだんだんと考えが女性の者になってきているんでしょうか?まあそのことについては考えても仕方ないのかもしれませんね)
リナは考え事をしながら身支度をしているとふと背後からの視線を感じ振り返った。
「・・誰かいるのですか?」
リナが背後に広がっている森林へと声をかけるが返事が返ってくることはなかった。
「気のせいでしょうか・・・」
リナは一応背後を警戒しつつ万が一の事も考えてアイテム袋からあるものを取り出しスカートのポケットの中に入れてエルフたちの待つ場所へと向かった。
「・・・あの、その・・すみません。お待たせ・・しました・・・」
「いえいえ大丈夫ですよ」
リナが身支度を済ませエルフたちが待っていた場所に戻ってくるとエドアルドは笑顔で待ち構えていた。
「何かあったのですか?」
「い、いえ」
様子がおかしいリナを心配してエドアルドが声をかけるがリナは首を横に振ると俯き気味になりながらも笑顔を作って返事をした。
(うぅ~、やっぱり初めての人としゃべるのは緊張してしまいます)
リナの様子がおかしかったのは単純に人見知りが表に出てきてしまったからである、リナは明らかに敵対しているものなどには普通に接することができるのだが、敵などではない相手に対してはなかなか普通に接することができないでいた。
「ま、まあとにかく私たちの里に案内しますのではぐれないで付いてきてください。魔法がかかっていますのではぐれてしまったらリナさんだけでは完全に迷ってしまいますから」
「は、はい」
リナの様子が皆とはぐれてしまった事を考えての事によるものだと勘違いしたエドアルドは安心させようと言葉をつないだ。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。私たちと離れなければ大丈夫ですし、はぐれてしまったとしても私がすぐに見つけますから」
「ありがとう、ございます」
顔を赤くして答えていると不意に後ろから柔らかい物に包まれた。
「そんなに硬くならなくても大丈夫だよ。私が手をつないであげるから」
そういってリナに抱き着きながら「はぁはぁ」とよだれを流していたのは、巨乳のエルフだった。
「え、えっと・・・?」
驚いたリナはスッと巨乳エルフから離れると名前を聞いていなかったので聞こうと言葉を選んでいた。
「あ、ごめんね?私の名前はシェスティア・エルトレーム。皆ティアって呼んでるからリナちゃんもティアって呼んでね」
「え、えっと、はい。・・・ティアさん・・?」
「や~んもう、かわいい~」
恐る恐るリナがティア名前を呼ぶと歓喜の声を上げてティアはリナに抱き着いた。
「うっぷ」
正面から抱き着かれたリナはティアの豊満な胸に顔を沈められてしまい呼吸ができなくなってしまっていた。
リナがティアから抜け出そうともがいているのに気が付いたエドアルドはティアの頭にチョップを叩き込みティアをリナから離した。
「お前はいつもいつもやめろと言っているだろうが」
「だって、リナちゃん可愛いし・・・」
「だからと言っていきなり抱き着く奴があるか」
「うぅ」
エドアルドに叱られたティアはすっかりしょぼくれてしまった。
そんな様子を横で見ていたリナは申し訳なさそうにしていた。
「申し訳ありませんリナさん。どうもこのシェスティアはリナさんのような可愛らしい方を見ると我を忘れてしまうようでして」
「い、いえ。いきなりでなければそんなに気にしていないですから大丈夫ですよ」
「ホントに!?ありがとうリナちゃん」
リナの言葉に気をよくしたティアはリナの手を両手で握りブンブンと振った。
それから一行は里に向かって行ったのだが里に着くまでの間リナの片手にはティアの手がしっかりと握られていた。その時のティアの表情は言うまでもない表情だった。
しばらくすると先頭を歩いていたエドアルドが振り返った。
「すみませんリナさんしばらくの間目を閉じていてもらってもいいですか?」
「は、はい」
リナは戸惑いながらも目を閉じるとティアに握られていた手を軽く引っ張られた。
「どうぞ目を開けてください」
エドアルドに言われ目を開けると、そこには木々でできた美しい里が目の前に広がっていた。
リナがその風景に感動しているとティアが自慢げに言葉をそえた。
「ようこそリナちゃん、私たちの里。エルトレームへ」




