エルフ
「貴様何者だ!この森で何をしている!!」
リナの目の前に現れた外套をまとっている一番背の高い者が声を発した。
(人間?・・いえオーガのゼノも話せていましたし油断はできません)
質問を投げかけてきた者の正体がわからないこの状態でリナは警戒を解かずに杖を握りしめて質問に答えた。
「ボクはリナといいます。この森には何かをするために来たのではなく偶然この森に来ただけです」
リナは転移結晶の事は明かさずに魔法でこの森に来たことにしようと決めてそう答えた。
「嘘をつくな!!偶然でこの森に入ってこれるはずはない。何が目的だ?」
外套を被った者たちはリナの言うことは聞かずに警戒を増していく。
「ブッ」
リナはこの状況では埒が明かないと魔法を使って逃げようと杖を動かしたところで、突然リナの死角から一本の矢が飛来し足元に突き刺さった。
「怪しい動きをするな、我々はお前の一挙一動を見逃すことはない」
(全然気づきませんでした・・・でもすぐに殺されないと言うことは少しは話が通じるかもしれません)
リナは今の事で外套の者たちが自身に対して警戒はしているが殺気はそれほど出していないことに気が付いた。リナは殺気がないことで少し落ち着き今の状況を把握することができた。
「・・・ボクがこの森に来たのは本当に偶然です。出て行けと言うのならば出ていきます。でもボクはこの森がどこにあるのかも知らないので出ていくことができません。もしよろしければ森の外まで案内していただけないでしょうか?」
リナは構えを解き出来るだけ相手を警戒させないように話した。
「・・・嘘と言うわけではないみたいじゃの」
(えっ?この人?達はうそを見分けられるのでしょうか?)
どこからか聞こえる言葉ににリナは動揺した。
「・・ブハッ」
「少女よ一つ良いかの?」
リナの背後から突然人の気配が現れてリナに先程の声の者が話しかけてきた。
「っ!!」
リナは突然の事に吃驚して後ろを振り向くと、そこには綺麗な金色の長髪で背中に弓を背負った20歳前後のとてつもない美女が立っていた。
リナはその美しさに驚いていたのだが、もう一つ驚くポイントがあった。それは美女の耳だった。美女の耳はピンっと長く横に伸びていてそれはリナも知っている有名な種族の特徴だった。
「エルフ・・・」
リナがそう呟くとその美女はカラカラと笑いそっと手を振り何かの合図をだすと、そのままリナに近づいてきた。「・・イイ」
「はっはっは、エルフを見るのは初めてかの?」
美女エルフがリナの頭に手をやろうとしたその時、一番初めにリナに話しかけてきた外套の者が美女エルフとリナの間に割って入った。
「何をしておるのかの?」
「危険です」
「そうは見えんがの?」
そう言って美女エルフはリナに目をやる。
「この者の目的もわかっていません」
「それを今から確認するんじゃろうが」
「ですが族長が直接視る必要はないではないですか」
「わしの他に視る力が強いものはここにはおらんはずじゃが?」
「ですが!」
「大丈夫じゃ、わしを信じろ」
美女エルフの言葉にしぶしぶ外套の者はその身を引いた。
「すまぬの、えっとリナじゃったか?」
「はい」
「失礼するぞ」
美女エルフはそういうとリナの頭に手をやり目を閉じると何やら「ふむふむ、なるほど」とか「なんと、そんなことが」などと独り言を呟く。
しばらくすると何やら納得した様子でリナの顔を覗き込み笑みを浮かべると、うんうんと何度もうなずいてから近くで控えていた外套の者に声をかけた。
「この娘、リナを里まで連れて行くぞ」
「!?」
「・・・ヤタッ」
外套の者は美女エルフの言葉に心底驚いている様子だった。
「この娘の言っていることは本当の事じゃ本当に偶然ここに来たらしい」
「・・・」
「そんなに心配するな。決して悪しき者ではない。それにこの娘はあの事を解決する手立てを持っておる可能性もあるしの」
「ほ、本当ですか?」
「わしが間違えるとでも?」
「い、いえ」
「ま、そう言うことじゃ。わしは先に帰っとるからの、リナの案内は任せる。・・・丁重にな」
「了解しました」
美女エルフはにっこりと笑顔をリナに向けると風が吹きリナが目を庇っている隙にいつの間にか姿を消していた。
「リナ殿」
「っ!!はい?」
外套の者がリナに話しかけながらその外套を脱ぎ捨てると、リナを包囲していた他の者たちも外套を脱ぎ捨てた。
そこに現れたのは男女入り混じったエルフたちだった。
エルフたちはみんな美男美女で話をしていた外套の者は20歳前後の銀色の長髪の美形の男性だった。
「先程はすみませんでした。族長がお呼びですのでぜひ我らの里に来てください」「・・ヤッタヤッタ」
「は、はあ、えっとあなたは?」
「これは失礼しました私はエドアルドと申します」
「リナです。よろしくお願いします」
エドアルドと握手を交わすがエドアルドの様子が少しおかしかった。
しかし先ほどまで敵対していたようなものだったから仕方がないとリナは割り切ってしまうことにした。
そう考えた時だったリナの視線の端に気になるものが映ってしまった。
「ん?どうしたのですか?」
「い、いえ」
リナは言い淀みながらも気が付いてしまったある一転を見つめた。エドアルドも視線をリナと同じ方向に向けるとそこには鼻から大量の血を流しながら「はぁはぁ」と肩で呼吸しているエルフがいた。
そのエルフは族長と呼ばれていた人と同じ金色の長髪で、その長い髪を途中で編み込んで後ろに流している16,7歳くらいの女性だった。そのエルフの見た目は族長とそっくりなのだが、族長よりも主張が激しく大きく盛り上がっている胸部が特徴的なエルフだった。
「・・・すみません。あれは放っておいてください」
「え?でもさっきからずっと・・・」
実はリナが包囲されてから気にはしていたのだった。巨乳エルフがリナを見る視線や言動が異様な熱をもっていた事に。そしてその不気味とも言える視線に本能が避けろと言い聞かせていたのだった。
しかしこうやって友好的に接してくると、とても無視できるような事柄ではなかった。
「ヤタヤタ。リナちゃんだっけ?早く連れて帰って一緒にご飯食べて一緒にお風呂に入って一緒のお布団で寝てそれからそこから・・ブフゥ」
また鼻血を流していた。
「えっと・・・」
「すみません」
「あの人はいつも何な感じなんですか?」
「いや、いつもは少しマシなんですが・・」
「?」
エドアルドが言いよどんだのでリナはどうしたのかと首をかしげる。「ブハァ・・・最っ高」・・・また盛大に鼻血を吹いていた。
リナが対応に困っているとエドアルドがリナから視線をそらしながら原因を口にした。
「えっと、その貴女の恰好が原因かと」
「へ?」
リナはエドアルドに言われてやっと気が付いたのだった。自分が何も着ずに歩き回っていたことに。
「きゃあああああああああああああああああああああああああ」
それはリナとして生きてきて初めて出た絶叫だった。




