決着と二回目
グランオーガが剣を振り下ろした勢いは凄まじく辺りに砂埃が吹き荒れ、リナとグランオーガの姿を隠した。
「リナちゃん!!」
マチはグランオーガに襲われれ姿の見えないリナへと呆然と視線を送っていた。
「リナさま・・・」
その姿を見ていた騎士たちもその場に立ち尽くし身動きの取れない状態になっていた。
しばらくすると砂埃が収まっていきグランオーガの姿がうっすらと見えてきた。
その場にいた人間はグランオーガの剣の先に無残な姿になっているリナを覚悟し視線を送るとそこには尻もちはついているが傷一つないリナの姿があった。
「どうなってるんだ?」
冒険者の一人がそうつぶやく。
それもそのはずリナを襲ったグランオーガの剣筋の跡がリナの真横を通り過ぎるように地面をえぐって残っていた。
「どうして外したのですか・・・」
皆の視線の先で誰にも聞こえないような細い声でリナがつぶやく。
「・・・なに気まぐれだ」
「!!?」
返事があるとは思っていなかったリナは驚いた。
グランオーガは声色は低いがしっかりとした発音でリナの問いに答えた。
「話せたんですか・・・」
「当たり前だろうが、魔物だからって喋れねぇとでも思ってたのか?」
「・・・」
「それは失礼ってやつだな」
グランオーガは「フンッ」と鼻を鳴らすと振り下ろしていた剣を懐に収めた。
「とどめを刺さないのですか?」
そんな様子のグランオーガにリナは質問を投げかける。
「気まぐれって言っただろうそれに・・」
そう言って何もかも見透かすような視線でリナを一瞥すると、
「手を抜いている奴にとどめを刺しても詰まらねぇよ」
「気が付いてたんですか・・」
「馬鹿にするんじゃねぇそれくらいわかる」
グランオーガは興味をなくしたのかリナに背中を向けるとそのまま立ち去ろうとする。
「退いてくれるんですか?」
「ああ、もう飽きた。それに面白そうなのも見つけたしな」
グランオーガは肩越しにリナを見つめる。
「嬢ちゃん名前は?」
「・・・リナです」
「そうかリナ、俺はゼノ、オーガのゼノだ」
「オーガ?グランオーガじゃないんですか?」
「グランオーガ?それならさっきのお前の魔法で吹き飛んだ奴がそうだが?・・・まあいい、お前とはまたいつか戦ってみてぇな、そん時は今日みたいにお互い手加減なしでやりてぇもんだな」
ゼノは言いたいことを言い残すとその場から立ち去りその姿を消した。
「リナちゃん大丈夫かい」
ゼノが立ち去った後、マチと冒険者たちがリナへと駆け寄った。
「マチさん・・」
「リナちゃん。怪我はないかい?」
「はい。大丈夫です」
「そうかよかった。それにしてもあのオーガいったいなんで帰っていったのかねぇ?」
「・・・」
リナはゼノと会話したことを皆に黙っておくことにした、それはリナが元AFのプレイヤーだから魔物と会話できるのかもと言う考えもあったのだが、それ以上に魔物と会話したことで皆から奇異の目で見られるかもと恐れたからだ。
「まあいいさね。オーガたちはいなくなって町は平和になったそれでいいじゃないか」
「そうだな、平和になったならそれでいいや」
「全部リナちゃんのおかげだぜ」
マチの一言に冒険者達は勝利に喜んだ。
「たしかにこの勝利はリナちゃんのおかげだよ」
「そんなことありません皆さんがオーガを抑えてくれていたからですし」
「そんに謙遜しないでさ。皆リナちゃんの魔法で助かったんだから素直に喜びな」
「はい。ありがとうございます」
マチの一言で心の奥から何か達成感のようなものを感じたリナだった。
「よし、今日はみんなで飲むか!!」
「「「おおお」」」
冒険者達が盛り上がっていたところで騎士の一人がリナに話しかけた。
「リナさま」
リナが振り返るとそこには姿勢を正した騎士が一人とその後に整列している騎士たちの姿があった。
「なんでしょうか?」
「私はエクラド騎士団の副団長をしているロドリグと申します。リナさまには城への帰還をお願いしたく参上いたしました」
副団長のロドリグは他の騎士とは違い少し豪華な装飾の着いた鎧を身にまとっていた、その兜から見える顔は顎髭を伸ばした凛々しい表情の中年くらいの男性だった。
ロドリグは恭しく頭を下げるとその場で膝をついた。
その様子を見ていたマチはやっぱりかと言った表情で他の冒険者の皆は驚いたような表情で二人を見ていた。
「申し訳ありませんがボクは城へは戻りません」
リナは正直にまっすぐロドリグを見ながらそう返した。
「リナさま!!」
「なんど言ってもボクは戻りません」
ロドリグは立ち上がりリナに食ってかかる。
「ごめんなさい、皆には帰らないとだけ伝えてください」
リナはそう言って踵を返す。
「リナさま、我々はリナさまが拒むようなら実力行使もやむなしと命が出ております。その際には多少の手傷もやむなしとのこと我々はリナさまに剣を向けたくはありません。どうかここは我々と共にエクラドへの帰還をお願いいたします」
ロドリグは深々と頭をさぜるがリナの返答は変わらなかった。
「ごめんなさい。ボクはエクラドには戻りません」
「ご意志は変わらないと・・・?」
「はい」
「わかりました・・・リナさま手荒くなりますがご勘弁を」
ロドリグがそう言うと後ろにいた騎士たちが皆抜刀しリナへとそれを向ける。
「リナちゃん!!」
その様子を見ていたマチや冒険者たちはリナを援護しようと武器を構える。
「皆さんは手を出さないでください!!」
「どうして!?」
「皆さんの迷惑になりますから」
リナは笑顔でそう答えると騎士たちに向き直し杖を構えた。
マチ達がリナを援護すると騎士たちの邪魔をしたとしてマチ達に罪に問われると思いリナは援護を拒否したのだった。
「リナさまは魔法使いだ。いかに魔法が協力であろうと魔法の詠唱さえさせなければ恐れることはない行くぞ!!」
「「はっ」」
騎士たちはロドリグの号令とともにリナへと迫っていく。
「くっ・・『氷精よ、我に力を与え三つの礫を、アイスバレット!!』」
襲い掛かってくる騎士たちに比較的殺傷能力の低い魔法で対応していく。
「怯むな、この状況では威力の低い魔法しか飛んでこない!!皆で抑え込むぞ」
騎士たちはリナの魔法を物ともせずリナを取り囲む。
「『氷精よ、我に力を与え守りの力を、アイスシールド!!』」
リナは氷でできたシールドで騎士たちの進行をしのぐがこれも一時しのぎでしかない。
すぐにシールドを壊されると騎士たちはリナへと飛び掛かった。
リナは間一髪身を引いてそれを躱すがすぐに騎士たちが迫ってきていた。
(ここまでかな・・・)
リナは何かをあきらめた表情をしたかと思うとふだんのリナとは思えないほどの大きな声で叫んだ。
「マチさん!!ごめんなさい。いきなりですけどお別れになります。でもいつかいつか必ず会いに来ますのでそれまでお元気で」
「なに言ってんだい!?」
リナはそういうと騎士へとスッとした表情で向かいあいアイテム袋からあるものを取り出した。
(最後の一つですけどしかたがないですよね)
「ん!?あ、あれはネスタ様が言っていた・・いそげリナさまを捕まえるんだ」
リナが取り出したものを見たロドリグは急ぎ捉えるように命令を出すが騎士たちがリナに近づくことはもうできなかった。
「『第四制限・解放』」
そう言ったリナの前には分厚い氷の壁があり騎士たちはそれを越えることはできなかった。
「さようなら皆さん」
転移結晶を起動したリナは一瞬にしてその場から姿を消すとリナを覆っていた氷の壁も崩れ去った。
「リナちゃん・・・」
消えてしまったリナの後をマチは見つめることしかできなかった。




