第87話 宴の後
舞踏会が終わった翌日の朝。
ウーアシュプルング家の御屋敷の中。貸して貰えている部屋で、俺は目覚ましが鳴るよりも早く目が覚めた。額が痛み、左腕がズキズキする。
怪我の具合は散々なものだ。
額の傷は、左の眉頭の上辺りから、眉尻を掠めてこめかみの辺りまでバックリと切られており。顔に対して大きな切り傷である。左腕は肩と二の腕、そして前腕に傷があり。ナイフが歪な軌道を描いたせいか、切りつけた上に僅かに傷を抉られたようになってもいた。
他には左右の手に小さな切り傷があったり、後頭部や背に軽い打撲がある位。傷こそ多いかもしれないが命に別状は無く、体機能の重大な欠損も無い。問題は少々血が流れ過ぎて貧血気味なくらいだ。
自分では傷を見て何針か縫う必要があるかと思ったけれど。医療の進歩もあり、そこまでしなくとも良いのだとか。ただ、ひょっとしたら傷跡が残るかもしれないと言われ。綺麗に治したいならきちんと養生しなさいと医者に微笑まれた。
ベッドから抜け出して、大きく背伸びをする。身体を動かすと傷が痛く、痒くもあった。
そんな俺の足元に、部屋の隅から黒く四角い箱が床を滑るように近寄って来る。3機居るテトラの1体。正方形のペテロだ。
「おはよう。ペテロ」
俺が挨拶をすると、ペテロは小さくビープ音で返事をしてくれた。そして自身の四つ角から手足を展開して、ベッドの傍に置いてあった部屋着を俺に差し出してくれる。
「ありがと。助かるよ」
俺は笑いつつ、ペテロから部屋着を受け取る。
当のペテロは「早く着替えろ」と言わんばかりにビープ音を鳴らし、そっぽを向いて部屋の隅に戻って行く。脛に突進して来ないあたり、ペテロはペテロなりに俺の事を心配してくれているのだろう。
朝食の時間なんかには少々早いが、俺は部屋の大きなカーテンを開けて、広いバルコニーへと歩み出た。
晴れである。気温が低くて、息が白い。
僅かに見える朝日がとても煌びやかで、思わず目を細めた。
昨晩の事に想いを馳せる。
目出し帽の男や、白い子供……エミージャとの邂逅の後。俺は一度トレーラーまで運ばれ、着替えなどをさせられた。
シルベーヌとミルファはすぐ舞踏会へ戻って行ったけれど。代わりにガナッシュさんとエリーゼさんの付き人として来ていたシャルロッテさんが、俺の面倒を見てくれた。
シャルロッテさんの手を借り。上着を着替えたり額の傷を隠すニット帽を被らせてもらった後は、周りを見張ってもらいつつ、ほんの少しだけトレーラーで眠る。
揺り起こされた時にはもう舞踏会はお開きになっており。何か大きな事も無く、あくまで穏やかに終了したらしい。俺が足早に舞踏号を回収した時には、ベイクと武烈号も先に撤収していた。
それからはお屋敷に戻ると。治療をしてもらってからまた昏々と眠り。今に至るのだ。
「色々話さないとな。何があったのか全部。格好悪い事も、情けない事も」
ぽつりと呟き、俺は笑顔になる。
なんせ見栄を張ったって仕方ないのだ。エミージャの言う通り、俺は弱くて歪で、不透明な奴なのは間違いない。舞踏号や銃を与えられ、それを振るうだけの半端者。その指摘だって合っているはずだ。
でも、それがどうしたというのだ。
感情の起伏はあったけれど、俺はその通りだと理解して指摘を呑み込んだ。後はそれらを糧に、これからの自分を変えていくしかない。そういうある種の開き直り。あるいは芯のようなものが、俺の頭をクリアにさせている。
今まで出会って来た色々な人達の生き方や信念。あるいは愛であったり策謀だったり。色々な物事に出会って蓄積してきた経験が、あの時燃え上がった感情で精錬されたと言うべきだろうか。
ともかく、俺は依って立つ何かを胸の内に創り上げたのは確かだ。言葉にするのは難しい、曖昧だけれど確かな物。自分自身で獲得した、尊い寄る辺だ。
背後で窓越しに、ペテロのくぐもったビープ音が聞こえた。
俺が振り向くと、部屋の中にシルベーヌとミルファが立っていた。多分、2人の来訪に気付いたペテロが招き入れたのだろう。2人とも部屋着のままで、何だか安心した笑顔で俺を見てくれている。
2人はいそいそとバルコニーに出てくると、朝の挨拶の後に俺の前に立ち、白い息を吐く。
「良かった。ブランは元気そうね?」
「おう! 何て言うか、スッキリしたんだ」
「スッキリですか?」
シルベーヌの問いに俺が明るく答えると、ミルファが小首を傾げた。
「泣くついでに、色んな迷いとか悩みも燃えた感じ。で、だ。朝からで悪いけど、何があったのかちゃんと話したい。今から良いか?」
「もちろん! 折角朝焼けが綺麗だし、ここで良いわよ」
俺が聞くと、シルベーヌが笑って答えてミルファに寄り添った。寝ぐせのあるぼさぼさの金髪と、ある程度整えられた銀色の髪が、互いに摺り寄せられる。
そんな2人を見つつ、俺は昨晩の事をゆっくり話していく。3人が3人共、それぞれが知らない事を補うように全てを話し終えると、ミルファが俺に聞く。
「白い子供の名前はエミージャと言うのですね。そしてエミージャは、ハッキリと戦意を告げたと」
「ああ。それも生体兵器だけじゃなく、人と人ともやるって」
俺が答えると、シルベーヌが腕を組んで小さく唸った。
「生体兵器だけじゃなくて、人と人ね……。昨日の舞踏会の警備が変だったのも、あの場で色々としてたからなのかしら?」
「だとすると。やはり騎士団が関わっているのは確定です。それもエミージャに協力か、あるいは利用されているという形でになるでしょう」
「最悪のシナリオを考えると。生体兵器が街を襲って来るのに合わせて、街を守るはずの騎士団も街を襲うって事か……?」
ミルファの予想を聞き、俺がもう少しその先を考えて言ってみた。
シルベーヌとミルファは、僅かに首を捻ってから言う。
「その可能性は薄いのかも? わざわざ騎士団が生体兵器と一緒に人を殺す意味が無いもの。もうメイズの統治者としては君臨してるし、色々安定もしてる。無差別に人を殺したとして。得る物が無いじゃない」
「騎士団は体面を非常に気にしているというガナッシュさんのお話も考えると、大手を振って大量殺戮などは行わないと考えるべきでしょう。そうなってくると考えられるのが、組織内部の分裂です。騎士団の一派が、何かの目的を持ち。わざわざ危険を冒して生体兵器と手を組んでいる……のでしょうか?」
2人に言われ、俺も首を捻る。だが、すぐにいい考えが浮かぶわけでもない。
深呼吸を一度。俺は白い息を吐き、2人に笑いかける。
「まだ分かんないな! 後でガナッシュさんにも話して、情報収集とかを頼もう。こういうのはあの人の方が得意だろうし、年上の意見の方が参考になるはず」
「それもそうね。今はここまで!」
「はい。とりあえず、次に私達がやる事は決まっていますしね」
そう言った後。シルベーヌとミルファは自分の頭の上に手を回し、兎の耳のようにピンと立てて笑顔になった。
そんな2人に俺も笑っていると。シルベーヌが姿勢を戻し、慈しむような笑顔で俺の方を見る。
「ねえブラン。ありがとね。私なんかはともかく、ミルファのために怒ってくれて」
「何を言ってるんですシルベーヌ。貴方はとても大切です。私は貴方を侮辱されれば、憤りを覚えます。ブランを侮辱されたのも同様です。私は怒りを覚えます」
ミルファが心配そうな顔でシルベーヌを見て、次に俺を見て言った。
「ありがとう。でも、俺のした事は褒められるような事じゃない」
俺はいささか憂鬱になりつつも、自分の胸に手を当てる。
「俺は、話し合いが出来る相手に手を出すのは善くないと思う……感じるって言った方がいいか」
「相手が喋る生体兵器でも?」
きょとんとした様子でシルベーヌが聞き返した。
「おう。ましてやあいつは、エミージャは意思疎通が出来て、きちんと会話が出来る相手だったんだ。もちろん、話を断られたら戦わなきゃいけない。そもそも力が無かったら、話し合いにすらならないのも真理だと感じた」
俺が激昂してエミージャに掴みかかり、ゴブリンに突き飛ばされた事を思い出す。あの時ゴブリンを押し留めるか、あるいは倒せていたら、エミージャがどう思おうと胸倉を掴めはしただろう。
「だけど、力の使い方は考えなくちゃいけない。相手をぶん殴って言う事を聞かせたりするのは善くないと感じる。でも正確に言えば、それもありだとは思う。一つの手段として割り切ればね。けど俺は、そんな事は嫌だと感じるんだ。される方はたまったもんじゃないしさ」
力で動きを抑えられ、延々と自身や周囲を否定され続ける悔しさ。
俺がエミージャとゴブリンからそんな仕打ちを受けたからこそ、抑圧される側の事を、多少なりとも感じられる。知性があるからこそ、力で抑えこまれると自分の無力さと情けなさに打ちのめされ、相手に憎悪を抱くのだ。
話を聞いていたミルファが俺に聞く。
「大きな矛盾ですね。力を使わなければ話も出来ないのに、力を使わずして対話をしたいと」
「おう。でもその矛盾のバランスというか、天秤が大事なんだ」
俺は両手の平を空に向けると、軽く肘を曲げて天秤のように構えた。
「矛盾の天秤を極端に傾けるのは、一番簡単に迷いを無くす方法だと感じる。でも、それは良い手じゃない。自分に迷いが無くても、自分が生きる世の中は一色じゃない上に歪んでて、色んな人の色んな想いで出来てるんだ。そんな世の中を生きるのに、片寄ってはダメなんだと感じるからで……」
そこまで言って、俺は自分の言っている事が歪になっているのを自覚した。
2人に伝えたい事はいっぱいある。けれどその想いを言葉にするのに、頭と口が付いて来ていないのだ。きちんと考えをまとめないと延々と話してしまいそうで、不学さを痛感する。
俺は一度言葉を区切り。はにかんでから再び口を開く。
「まあ結局さ。俺は矛盾をいっぱい抱える半端者なんだ。そんな半端者が、自分が嫌だからって戦争を止めようと考えてる。規模の大小こそあれ、世の中を動かそうとしてるんだ。身に余る大仕事だろうし、誰かに踊らされてる気もする」
視線を落とし。自分の両手を見つめた。
「でも。世の中を動かすなら、俺は自分に問い続けないといけない。今している事は正しいのか、自分は納得しているのか、周りは納得しているのか。色んな事を自分で考えて、色々な人と話もして、責任を持ってやり切らなきゃいけない。それも事態は始まってるし、中途半端は許されない。どんな結末を迎えるにしろ、踊り切らなきゃいけない」
ぎゅっと拳を握り、俺は顔を上げた。
シルベーヌとミルファが、俺を真っすぐに見つめてくれている。曇りの無い瞳が、俺の姿を鏡のように映している。
深呼吸を一度。俺は2人を見つめ返し、真っすぐに言う。
「だから2人とも改めて、俺と一緒に歩いてくれたら嬉しい。本当に助かるし、何より俺は、2人の助けが欲しいんだ」
ほんの少しの間、沈黙がこの場に満ちた。
自分勝手ではないかと自問し、心臓がぎゅっとなる中。シルベーヌが腰に手を当て胸を張り、明るい笑顔になった。
「もちろんよ。言ったでしょ? 私はブランの味方だもの。私のパイロットが行くって言うなら、技術屋が付いてないと駄目じゃない。例え地獄の果てでも一緒に行くわよ」
「私も当然です。真っすぐ前に進むのは良いですが、足元や後ろを見ないとこけてしまいますから。用心は私にお任せください。私も共に参ります。貴方の肩に乗って」
続いてミルファが姿勢を正し。たおやかに微笑んで言ってくれた。
「2人とも。ありがとう」
確かな想いと、背を押してくれる言葉、明るい笑顔。これ以上の特効薬は無いだろう。不思議な程心身に元気が満ちていく。
その嬉しさに、思わず抱きしめようと手を伸ばしかけ、両腕を広げかけたところでピタリと止めた。勢いのまま抱き付いても良いのだろうか。2人は嫌に思わないだろうか。そういった考えが頭を掠めたのだ。
そんな俺を見て、シルベーヌとミルファはくすくすと笑う。
「やっぱりヘタレね?」
「とってもヘタレです」
2人に笑顔で言われ、ぐうの音も出ない。
けれど2人は、同時に腕の中に飛び込んできてくれた。胴に手が回され、3人の身体が密着する。
人の暖かい体温と柔らかさ。微かに薫る安堵する香り。そして全身に感じる2人の慈愛に、つい頬が緩む。2人をぎゅっと抱きしめ返すと、2人もまた力を込めて抱きしめてくれた。
色々と小難しい事を言う口よりもはるかに雄弁な、優しく温かい言葉だ。それだけで気力が満ち、何だってやってやろうという想いが湧き上がる。
「ありがとう。本当に」
俺がそう言って目を瞑ると同時に。ぐぅっ。と、エンジンのように大きな音が響いた。
全員が顔を見合わせる。轟くエンジン音の発信源は、俺の腹である。
それを理解した瞬間。3人同時に笑い出す。
「怪我人のお腹が空くのはいい事ね!」
「はい。空腹のままでは傷も治りません」
ゆっくりと身体を離しつつ2人に笑われ、俺は頬を掻いた。
すっかり顔を出した朝日が俺達を照らす。これからの道を照らすような、生気が漲る太陽の光だ。
「よし! まずは朝飯! それから身支度を整えて、ガナッシュさんと話もして。舞踏号の整備と装備の点検。やる事は沢山ある!」
そして3人同時に、明るく気合を入れたのだった。
さて。やる事が多いとは言っても、物事には順番と機会というものがある。
食事に身支度までは良かったが、ガナッシュさんとの会話は、昨晩あった事の確認だけで終わってしまった。理由は簡単。ガナッシュさんが忙しいからだ。
ガナッシュさんはメイズ島有数の大商会の頭目と言う事もあり、普段の業務は数多い。色々な事に顔を出したり会議を持ったりしなければいけない。そこへ更に舞踏会の後と言う事も相まって、新しく知り合った事業主や経営者など。色々な人から是非お会いしたいという話がぎっちりらしい。
「立場と地位ゆえのものだな。すまない少年少女達。ある程度見切りをつけて時間は作る」
三つ揃えのシックなスーツを綺麗に着込なし。赤い髪と髭を整えて言う姿には、御年60を超える男性とは思えない程のエネルギーが満ちている。
戦争が起きるというのが確定した今。ガナッシュさんも平和な人々を守る為にやる事が多いと言って、燃え上がっているのだ。
「今日明日は忙しいかもしれないが、終わる頃には他の情報収集の報告も来るはずだ。少年少女達! それまで英気を養い給え!」
ガナッシュさんは屋敷から出て行く際にそう言って笑い。車に乗り込んだのだった。
と、なると。俺達がやる事は、自然と探索者らしい事になる。
半端だった舞踏号の整備を進めるのと、自分達自身の装備も点検だ。
車庫で3機のテトラ達が舞踏号の修理を続ける中。俺達は今後の武装を考えていた。
正式にウーアシュプルング商会から「屋敷近辺の安全確認と警戒」という依頼を受けたのだ。書類上も、きちんと探索者協会正規の依頼である。
サイクロプスとの戦いがあった後。いつの間にやらガナッシュさんが探索者協会へと連絡を付け、きちんとした仕事という体裁を整えてくれていたのだ。曰く。「仕事という名目で俺達にやりたい放題してもらうため」らしい。
協会から送られて来た依頼書は、急いだ形跡こそあるものの完璧な上に。大猫の肉球の拇印が押されていたのに驚いたものだ。
「さて。拳銃弾とライフル弾の補充と、ミルファの火器が欲しいわね。機関銃は壊れてそれっきりだし」
戦闘服を着込み。追加腕を背から生やした4本腕の魔人のようなミルファを見て、シルベーヌが言った。
シルベーヌの手元には、必要な銃弾の口径などが書かれた物騒な買い物メモが握られている。
「追加腕がある今。ライフル4丁を持つことも可能です。武装の選択肢は広がっていますよ」
「1人でライフル4丁か。なんかすごい弾幕張れそうだな」
同じく戦闘服を着た俺が言うと、ミルファは自慢げな顔になった。
「マチェット4振りで接近戦も大丈夫ですし。持ちようによっては腕で機関銃を構えて、追加腕でライフル2丁を構える事も出来るでしょう。支援射撃等ははお任せください」
そう言ってミルファたおやかに微笑み、4つの手をわきわきさせた。
シルベーヌがそれを見て笑い。俺の方を見る。
「生体兵器が掘ったっていうトンネルの調査だから。ブランにも何か欲しいわね。どんな場所になるかは分かんないけど、ショットガンくらいあったら良いのかも?」
「新装備か。いいかもなぁ」
「シルベーヌにも武装が必要ですよ。今までは拳銃だけでしたが、念のためにサブマシンガンくらいは持っていた方が良いと思います」
3人で会話をしながら、シルベーヌがメモに色々な事を書き込んで行った。
一通り人間の武装を確認し終えた後は、正座して座り込む舞踏号を3人で見上げると、シルベーヌが言う。
「問題はこっちかしらね。舞踏号用の武装って言うと、今あるのは手斧くらい。前から銃を買おうと思ってはいたけど……」
アルさんの依頼では銃は要らなかったし。エリーゼさん救出の時は買って行く余裕などなかった。グリフォンと戦った時は、そもそも舞踏会に行くのが目的だった。その後のサイクロプス戦は散歩の途中であったし、何だかんだ舞踏号で銃を握っていない。
「307小隊みたいな機関砲が良いのかな? 航空機用のを調達して改造するか、戦車砲みたいなのを使うかってとこかしら。うーん……?」
「生身でも普段使ってるのがライフルだけど、取り回しとか考えるとまた変わって来るよなあ」
「データ不足ってやつね」
「パイロットとしては、片手で持てるような武器がもう1つ欲しいかな。それこそ、ミルファのマチェットみたいなのか。人型機械サイズの拳銃とか」
俺がそう言うと、ミルファは置いてあった超硬度マチェットを鞘から抜き放った。
堅牢な合金製の、艶の消された黒色をした、片刃の分厚い鉈である。牛の首だってスパッと落とせますよと微笑むミルファが、少々怖いくらいの逸品だ。
シルベーヌがぼさぼさの金髪を掻き、苦笑いする。
「いっそ歴史の資料でも漁って、剣と弓の時代の人の武具でも調べよっか。過去に倣うのは大事でしょうし、舞踏号を鎧を着た大きな人って見ると、割とありな気もする」
「槍などの武器も良いでしょうしね。持ち運びを考えると大変そうですが」
「前チラッと言ってたけど、槍みたいなシャベルとか?」
そんな話を笑いつつしていると、パタパタとした元気な足音が響き出す。
笑顔で俺達の所にやって来たのは、メイド服を着た球体関節のアンドロイド。シャルロッテさんだ。
「皆さま! 鉄砲などが置いてある店舗を調べてきました! 道のご案内や、運転をさせて頂こうと思います!」
「ありがとうございます、シャルロッテさん。」
俺が笑って礼をすると、シャルロッテさんはメイド服の裾を直しつつ微笑む。
「ついでに、ちょっとした観光案内もいたしますよ! さあ、あちらのワゴン車へ! 私のお気に入りのお店などもご案内します! 凄く良い所。で、ございます!」




