第80話 修理の時間
天井のある大きな駐車場の片隅。俺達3人は、両膝を付いて座り込む舞踏号を見つめて苦い顔をしていた。
返り血は洗い流されてさっぱりしたものの。度重なる戦闘で白い装甲には傷がさらに増え、せっかくの塗装はかなりの部分が剥げ落ちていた。
見た感じ、塗装の白6割。地肌の灰色4割と言ったところだろう。まるで白いメッキが剥がれたようになっており、お世辞にも美しい姿ではない。特に側頭部はサイクロプスの拳が掠めたせいで、顔の横側全体が擦過傷のように塗装が剥げている。そしてもちろん、内部も酷い有様だ。
シルベーヌが手元のバインダに留められた紙束を見て、俺とミルファに言う。
「骨格関係からいくわよ。右手の指関節が6割は破損。じゃんけんが出来ない位ね。それと脇腹の古傷のせいで他の部分に余計な負荷が掛かってて、腰と左腕の付け根に異常がいくらか。今までの改修もあって、足回りは無事なのが幸いかな」
そしてバインダの紙を1枚捲り、再び口を開く。
「次に筋肉関係。グリフォン戦からこっち、まともに触れてないから、人工筋肉の疲労が結構あるわ。それにブランに変な事があってすぐだったから、妙に力んじゃってたのか。脚部はふくらはぎのとこが特に痛んでる。でもこっちはまあ許容範囲。問題は上半身ね。力の入り過ぎた殴り合いのせいで、背筋と二の腕の一部が、ちょっとだけ断裂してる」
もう一枚紙を捲り、今度は大きくため息を吐いてから言う。
「最後にセンサ系ね。戦闘の衝撃で痛んでる物がいくらかあるわ。中でも酷いのが、口元のスリットから返り血が中に飛び込んじゃってて、鼻が効かない感じになってるの。化学系の探知がしにくいと思って良いわ」
そうやって一通り舞踏号の状況を報告し、シルベーヌはやれやれと言った様子で肩をすくめると、座り込む舞踏号を見上げた。その目には手のかかる子供を見るような、どことなく母性のある光が見える。
俺も腰に手を当て、パイロットが散々な状態でもきっちり動いてくれた半身を見上げて微笑んだ。
「人工筋肉はしっかり揉んでやらないとな。それは家から持って来たタンパク燃料がまだあるから良いとして……骨格を弄るには設備が足りないか。一旦腕を外したりするにしろ、クレーン位無いとどうしようもないし」
俺が指折り考えつつ言うと、ミルファがシルベーヌの握るバインダを覗き込んでから不安げに言う。
「これは返り血の当たったセンサは交換ですね。ホワイトポートで手に入るのでしょうか?」
「どうなのかしら? メイズみたいなジャンク市って、こっちにあるのか分かんない。それに、ある程度分解して直したいのはやまやまだけど、もう舞踏会まで日が無いのよね」
そうなのだ。もうあといくつ寝ると舞踏会。予定されている始まり自体は陽が落ちてからだが、俺達は舞踏号を持って行かなければいけない関係上。ギリギリに行くという事は出来ない。
俺は伸びて来て鬱陶しい髪を両手で掻き揚げ、そのまま前髪を抑えてシルベーヌとミルファに聞く。
「時間が無いから出来る事は限られる。か。見た目だけでも綺麗にしとこうか? 塗料くらいなら店舗があるだろうし、最悪普通のペンキでもなんとか」
「うーん……私の意見としては。もう正直、見た目はこのままでいい気がする。大事なのは中身だもん。ちょっとでも直しておきたい。特にブランとの感覚をすり合わせておきたいかな。ラジオ体操とかで分かった事も多いし」
シルベーヌが舞踏号の足を撫でつつ、慈しむような声で言った。
次にミルファが、足元に寄って来た3機のテトラ達に微笑みつつ俺に返す。
「私は、せめて舞踏号の顔くらいは綺麗にしておくべきだと思います。それなりの行事に出席するのですから、それなりの格好をするのが礼儀というものです」
「んじゃ。傷はそのままだけど、せめて磨く位は丁寧に。右手と人工筋肉を重点的にって方針か。舞踏会が終わったら、またきっちり修理って感じで」
俺の適当なまとめに、2人はもうちょっと具体的に、と笑って頷いてくれた。それからは3人で打合せの後。手分けして、舞踏号の整備が始まる。
俺は各部の人工筋肉を外してマッサージ。タンパク燃料を掛けてまたマッサージ。いつもの仕事だ。
無心に手を動かし、ぐいぐいと手応えと質量のある人工筋肉を揉んでいると、何だか頭が回って色々な事に思考が飛ぶ。
あの時。俺は白い子供に声を掛けられて動けなかった。あれは躊躇いとかではなく、もっと奇怪な現象によるものだ。まるで魔法に掛けられたかのように、ただ耳を傾ける以外出来なかった。あれは一体何だったんだ?
白い子供が生体兵器達を操っているのは、物証が無くとも感覚的に感じた事だ。ノイズもその影響なのは間違いない。
ただ。ノイズが聞こえるのが、アンドロイドや機械に限られるというのは妙だ。舞踏号に乗っている間は俺にも聞こえるが、下りれば聞こえないノイズ。生身で聞こえないのは、シルベーヌも確認している。
機械にだけ聞こえて、生身には聞こえない音。仮に白い子供の声が生体兵器達を操っているとして。その影響を強く受ける俺は、じゃあ一体――?
だいじょうぶだよ
不意に誰かの声が聞こえ、俺は手を止めて顔を上げた。
視界に居るのは舞踏号。その右手を修理するシルベーヌ。同じく人工筋肉を揉むミルファ。そして両膝を付いて座ったままの舞踏号に取り付いて、細々した整備を行うテトラ達。他に人影は無い。
「今、誰か何か言った?」
俺が声を掛けると、その場の全員が怪訝そうに俺の方を見る。
「いや。なんにも?」
「口を開いていませんよ?」
シルベーヌとミルファに続き、テトラ達も3機が3機、『寝言は寝て言え』と言わんばかりにビープ音を上げた。
「なーに? 何か色々話したくなっちゃった?」
シルベーヌが視線を手元に戻し、修理を続けながら笑う。
「いや。そういう訳じゃないけど……」
「整備にも慣れて来てるからって、油断しちゃだめよ? 固定が緩くて装甲板飛んだり、いきなり足の筋肉取れたりしたら洒落にならないし」
「車の事故でも、走行中に車輪が取れたりする事がありますね。自分達だけの被害で済めばまだいいですが、周辺に被害が及んだりするのは危険です」
「あぁ、ミルファと昔見た事あるわね。街の中でポンってトラックの前輪が片方外れて転がった事故。怪我人無しだったけど、あんなの怖い怖い。舞踏号で言うなら、いきなり脛の筋肉取れて跳ねまわってる感じでしょ?」
情景を想像したのか、ミルファとシルベーヌがくすくすと笑った。俺も地面で暴れ狂う脛肉を想像して、何だか変な気分になる。
その後も舞踏号の整備を続け、時にちょっとした雑談をしたり、時に真面目に手を動かし。3人と3機の四角い箱が、巨人の痛んだ身体を癒していった。
人工筋肉をある程度マッサージした後は、感覚のすり合わせを少し行う事になる。
俺は舞踏号に乗り込み、地面に座り込んだまま、少し背筋を曲げて左手を床の上に置いた。
猫背で座り込む舞踏号の首元からは太いケーブルが伸びており、その先に端末が一つ。端末は、シルベーヌが今までに見せた事が無いくらいの表情で睨んでいる。
「んじゃ、感度上げるわよ。ゆっくりやるけど、上げ過ぎると空気に触れてるだけでも痛く感じるかもしれないから覚悟してね」
『お、おう』
「行くよ。3。2。1」
シルベーヌが端末のキーを叩くと同時に、左の掌がざわりとした。駐車場とは言え屋内だ。風など拭いていないのに、そよ風が手の平を撫でて神経をくすぐり出す。
その感覚はシルベーヌが端末のキーを叩く度にハッキリとし、そよ風どころか空気の圧力と微細な対流すらも感じられる。埃が左手の上に載っているのも分かり、知らぬうちに飛んでいた、タンパク燃料の小さな飛沫が載っているのも分かる。
『うおおっ……』
思わず呻いたが、自分の口が発した音の振動すらも左手がはっきりと捉えた。音波が空気を振動させた感覚と、自身の骨格を通じて感じる音の振動が、ジリっとした痛みとなって左手を襲った。
思わず左手を動かしたけれど、人工筋肉の収縮が生む振動すらも痛みとなって知覚し、俺は苦痛のうめきを漏らして左腕をよじる。
「やっばい!」
シルベーヌが叫び、感覚が元に戻る。先ほどまで感じ取れていた音の振動や、空気の対流などが遠くなる。左手にあるのは、生身とほぼ変わらない感覚。ほんのり冷たい空気だけだ。
深呼吸をすると、全身のダクトから緊張していた呼気が漏れだした。ダクトの近くに居たテトラが迷惑そうにその場で回転するが、俺は続けて感想も漏らす。
『……っおおー……怖いな、これ! 喋った振動で痛いとか!』
「まるで自分の手足みたいに動かせるシステムの怖い所よね。”自分の身体みたい”なんて、生っぽい感覚が重要視されてるのに、機械だから数値の入力とかでいくらでも弄れちゃうんだもの」
シルベーヌが端末を弄りつつ答え、ぐっと端末に繋がるケーブルを手繰って俺の正面に回った。俺の首筋をケーブルが動き、装甲と擦れる。
「でも、今ので危ない値が分かったわ!」
『おお。じゃあ、今度からはもう大丈夫?』
「そうもいかないかな。今のはあくまで”左手”の感覚だから、おおよその数字は他の部分に応用できても、きちんとした事は細かく調べないといけないから……」
『また何度も、これと似た事をやらなきゃいけないって事か』
座ったままの巨人が、ため息を吐いて肩を落とす。
ちょっとだけ気が重いが、そうも言っていられないだろう。俺と舞踏号の体感覚の一致は悪い事では無いし、酷い怪我が俺に伝播する現象の防止にも役立つのだ。キッチリこなさなければ。
そこでふと。こちらに近づいて来る気配を感じた。
これは人だ。小柄だが確かな重量のある足音が、元気に響くのを感じる。顔を上げて気配の方を見ると、シルベーヌとミルファも舞踏号が向いた方を見た。
少しだけ間があってから駐車場に現れたのは、メイド服を着たシャルロッテさんだ。手には大きな箱が抱えられており、すぐに俺達に気付くと、小走りでこちらに向かいながら明るく言う。
「お疲れ様でございます! ご休憩に宜しいかと、飲み物を持って参りました!」
シャルロッテさんが手に持った箱を置き、中から色々な飲み物を取り出した。ポットに入った紅茶にコーヒー。コーラにサイダー、果汁100%のジュースに水と、より取り見取りである。
シルベーヌとミルファが嬉しそうに飲み物を選び始めたので、俺も舞踏号の背から抜け出してその輪に加わった。
シャルロッテさんは戦いの事後処理なども落ち着いた後。何故か俺達に頭を下げて謝った。
困惑する俺達が聞いてみると、なんでも勝手に期待した上にこんなのは違うと言い、更に守ってくれたのに引いてしまったのが申し訳ないのだと言う。
心底申し訳なさそうな顔からは、真摯な思いが伝わっていた。
「そんな事は気にしなくても良いんですよ」
ミルファがそっと、うつむくシャルロッテさんの手を取り、たおやかに微笑む。
「これから知って頂ければ良いのです。探索者の事も、私達の事も。私としては、貴方は貴重な同年代のアンドロイドですから、仲良くしたいのです」
そう言われたシャルロッテさんの顔に、戸惑いつつも明るい色が満ちていく。
続けて、シルベーヌも腰に手を当てて快活に笑った。
「仲良くしたいのは私もよ! 探索者やってると、周りの女の子が何して遊んだりしてるのか分かんないのよね。そういう事とか、ホワイトポートの事とか。色々教えて欲しいし」
そうやって探索者2人に言われて、シャルロッテさんはパッと顔を明るくしたのだった。
その後は返り血まみれの舞踏号を洗うのも積極的に手伝ってくれたり、俺達の身の回りの事をより一生懸命にしてくれるようになった。ちょっとした雑談も増え、探索者の事や俺達の事を、きちんと知ろうとしているのが良く分かる。
彼女もまた前を向き、自分なりに頑張っているのだ。その言動を見て、俺も頑張らなければと気合が入ったものだ。
そんな訳で。ちょっとした休憩の時には、シャルロッテさんと色々な話をする機会が増えた。
俺達が話すのは街の外の事や、生体兵器の怖いところ。外ではどうやって食事をしたり寝ているのかなどを、シャルロッテさんは熱心に聞いて来る。
代わりにシルベーヌやミルファが街の事を聞いたりすると、今流行のファッションだとか、人気のお店の事などを嬉しそうに話してくれるのだ。
俺も興味が引かれる話題は多いけれど、スカートの話だとか良い美容液の話になると、男ゆえにどうしても置いてけぼりになってしまう。なので、盛り上がる3人をそのままに。ちょっとだけ離れて外で背伸びでもしようかと駐車場の外に出たのだが――。
「どうした少年! ストレッチか!」
明るく大きな声を掛けられ、背伸びしかけていた身体が縮む。
声のした方を見れば、安物のジャージを着た、赤い髪の年配の男性。ガナッシュさんが立っていた。手には何やら分厚いファイルが握られており、よく見ればジャージのポケットからはペンが何本か見え隠れしている。
「少女達はどうした?」
「中でちょっと休憩中です。舞踏号の整備してたら、シャルロッテさんが飲み物持ってきてくれて」
「女子の会話に入れなかったわけだな」
ガナッシュさんは大きな暖かい手で軽く俺の背中を叩き、明るく笑った。しかしグッと顔を引き締めると、分厚いファイルを開いて俺に言う。
「ちょっと聞きたい事があってな。手元にある資料をいくらかさらった結果。メイズに輸入されている武器弾薬の量は、決して歪な変化をしていない事が分かった。だが、それは島の外から入って来るものの話だ。島の中は違う」
「どういう事です?」
「島には様々な資本の武器弾薬工場があるが、1年程前から一部の工場の生産量が歪に増えている。単純に島で生体兵器の数が増えているため、それらに対応する増産という理由らしい。が、戦争という可能性を考えると話は違って来る。探索者諸君なら肌身で感じると思うが、ここ最近武器の価格が変だったりした場所は無いか?」
ガナッシュさんに問われて、俺は今までの事を思い返す。特にハッキリ思い出せるのが、ジャンク市で見た銃弾の価格だ。
「……特には無いですね。店舗によってまとめ買いで割引されたりとか、アフターサービスで色々ついてきたりはあったはずですけど」
「となると、やはり増産は末端価格には影響していないか。極端に考えると、いくらか物品が消えているのか……? 他の物ももう少し調べなければな。経路の資料を集めさせて、裏を取って……」
ぶつぶつと言った後にファイルを閉じ、ガナッシュさんがハッとして俺に微笑んだ。
「ああいや。聞きたい事はそれだけだ。引き続き、細かい裏取りや情報収集はワシに任せなさい。古い慣習だが、天と地と海の神々に誓って、ワシは君達に協力すると約束したのだからな」
そう言うとガナッシュさんは。少女達によろしくな。と言って去っていく。大きな背中には英気が満ちており、凄く頼もしく見えていた。
ガナッシュさんもあれ以後。すぐに書斎に篭って猛烈に様々な事を調べ始めていた。
そしてガナッシュさんと俺達だけになった時。「信頼が少ないからこそ、契約が必要だろう?」と、言い。先ほど言ったように神々に誓いすらしたのである。向こうの善意によって、強力な後ろ盾を得たと言っても差支えは無いだろう。
もっとも。それに甘える事だけはしてはいけない。善意で協力をして貰えているのだ。きちんとした礼節ある行動を心掛けなければ、品格や人間性を疑われ、せっかくの協力の申し出を無に帰すに違いない。
ガナッシュさんの背を見送った後。俺は再び舞踏号の側に戻った。
両膝を付いて座る巨人の側では、3人の少女達が嬉しそうに会話をしており。戻って来た俺の姿認めると、シルベーヌがニヤニヤして俺に手招きをした。
「ねえねえブラン。私の指。1本選んで触って?」
「指ィ?」
「良いから良いから! ほら、1本ね!」
怪訝な声で聞きかえした俺だったが、シルベーヌは大きく指を広げて右手を差し出した。
急かされるままに、俺はシルベーヌの人差し指を軽く触った。するとシルベーヌは心底嬉しそうに、ニヤニヤした顔を更に綻ばせて言う。
「ふーん。なるほどなるほど……」
「な、なんだよ?」
「ブラン。次は私の指を触って下さい。1本ですよ?」
続いてミルファが微笑んで、シルベーヌと同じように右手を広げた。
俺が何も考えず人差し指を触ると、ミルファも納得した様子で顔を綻ばせる。こちらも嬉しそうで、心なしか鼻息が荒く感じられた。
「なるほど。そういう事ですか」
「だからなんだよ? 何かのおまじないか?」
再び俺が聞くと、ニヤニヤしたままの2人をおいて、シャルロッテさんが説明してくれる。
「ちょっとした心理テストというやつ。で、ございます! 触った指で相手をどう思っているかが分かる。なんて。話半分の代物ですけれど流行ってるんです」
「なるほどなあ。んじゃ。今の結果は?」
「それはですね……」
シャルロッテさんが意味深に微笑んで口を噤み、ちらりとシルベーヌとミルファを見た。
ミルファがそれに微笑み返し、俺に向き直ると人差し指を立て、自分の唇に持って行ってから言う。
「結果は秘密です。ですが、私はとても嬉しかったですよ」
「私も! だって。ねえ?」
シルベーヌが元気に続いて、ミルファとシャルロッテさんを見る。3人とも嬉しそうで華やかで、見ていると頬が緩む雰囲気だ。しかし乙女の秘密と言われては、俺は頬を掻くしかない。
そんな俺の足元に、正方形のテトラ。ペテロが近づいてきて来た。
俺の事を気に掛けて近づいて来たのか――などと可愛く思ったのも束の間。ペテロはおもむろに急加速して傾き、器用に俺の脛へ体当たりをぶちかます。
「角が痛いッ!? ッおぉぉ……物理衝撃が骨に沁みる……!」
俺は抗議の声をあげたが、ペテロは『いちゃつくな』と言わんばかりの鼻息のようにビープ音を鳴らし、再び舞踏号の整備に戻って行った。
流石に痛そうだったのか、シルベーヌやミルファ、シャルロッテさんが心配してくれて申し訳ない。
まあ、脛の痛みはともかく。
舞踏会に呼ばれて新しい街に来て。色々な事が分かったり、新しい疑問が生まれたりもした。中でも、あの白い子供。生体兵器を操るというのは、分かりやすい『敵』だ。倒すべきものが見えたと言って良いだろう。
そして、ガナッシュさんという大きな後ろ盾を得れた事は、かなりの進展に違いない。
その大きな後ろ盾に繋がったのは、エリーゼさんやアルさんという人達の繋がりによるものだ。人と人との繋がりをもっと広く見れば、最初に探索者協会の裏で俺達に話しかけてくれた揚げ物屋の店主さん。あの人が始まりだったのかもしれない。
そう思えば。あの太めの店主さんの善意が、俺達をここまで連れて来てくれたのか。
(メイズに戻ったら、あの人のお店に行っていっぱい揚げ物を買おう)
そんな小さな。でも大事な目標を胸に留め、俺は舞踏号の整備に戻ったのだった。
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