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第70話 小さく動く

 汎用作業機械群。宇宙空間や深海、恒星のそばや人の入れない狭い隙間など、人が活動しにくい場所で活躍するロボット達の総称だ。その多くが四角形(テトラゴン)な立体であるから、大体はテトラと呼ばれている。

 そんな四角い人類の友達は、先日我が家で起動してから八面六臂の大活躍をしていた。

 今日も冷えるガレージの中、シルベーヌが足元に居た正方形のテトラに声を掛ける。


「んじゃペテロはトレーラーの足回りの再チェック。よろしくねー」


 正方形のテトラ。ペテロは返事代わりにその場でグルグルと回転した後。地面を滑るのではなく、底面の四隅から真っすぐで鉄の棒のような”足”を伸ばして歩き出した。カタカタと音をさせながらトレーラーの車輪に近寄って行けば、今度は上面の2辺が少しだけ外れ、足と同じく鉄の棒のような腕になった。その先で3本指の”手”が展開され、まるでマジックハンドのようだが、その動きは緻密で正確で、人間の手とそう変わらない。


 シルベーヌ曰く。あの手や足こそ汎用作業機械群の良い所なのだとか。テトラ達は四角い箱のような姿をしているが、その実態は折り紙のように緻密に折りたたまれた構造になっているとも聞かされた。

 ”手”や”足”は、その折りたたまれた身体を一部展開した状態の応用で、他にもいろいろな事が出来るとの事だ。全くもって未知の技術すぎるが、稼働するテトラが高価な理由の一つでもあるらしい。


「ヤコブとヨハネは、舞踏号のお色直し! 装甲板に塗料塗ってね! 細かい部分は前見せた通りに!」


 次にシルベーヌがそう言うと。少し横長の長方形、ヤコブは小さなビープ音を鳴らして足を展開させた。

 同様に少し縦長の長方形、ヨハネもビープ音を鳴らすと、ヤコブと共に腕を展開させて塗料の缶を持ち、自分の上に塗料の缶を乗せる。そして2個の四角い箱はハケを持つと、ガレージの隅で座り込む舞踏号の脚部を塗料で丁寧に塗り始めた。

 テトラ達が出来るのはこれだけではない。きちんと指示を告げれば、舞踏号の装甲板を外して皮膚カバーを捲り、内部の修繕や手入れだって出来る。本当に汎用性のある作業機械群達なのだ。


 そして舞踏号は白い塗料で塗られつつある。全体は白を基調に、目元の紅い戦化粧やや肩の紅いラインはそのままに。立ち姿が見栄え良くなるように、同時にスポーティーになるように彩られる予定だ。

 色彩に関しては、安売りされている塗料に白が多かったのが大きいと言わざるを得ない。人型機械ネフィリムを兵器として見た場合、白というのは目立ちすぎてどうかとも思ったが、どうせ今回は騎士団主催の舞踏会用のドレスのような物なのだ。目立つのも仕事に違いない。


「何て言うか、一気に3人分の人手が増えたみたいで助かるなあ」


 せわしなく動く3個の箱を見つつ、俺は呟いた。

 テトラ達は本当になんでもできると言って良いだろう。今のように機械の事はもちろんだが、家の掃除や洗濯物を干したりも出来る。特に整理整頓や片づけは得意なようで、家の共用スペースは日に日に綺麗になっていく次第である。

 ただし。彼らは料理が苦手だった。そもそもコーヒーを飲んだりパンを食べたりする俺達”ヒト”を不思議がっており、テトラ達の言葉が分かるミルファが代弁するには『何故食事というプロセスを経てエネルギーを得るのか理解に苦しむ』だそうだ。

 ちなみに彼らテトラは、コンセントから電気を吸って稼働している。時折部屋の隅や廊下の隅で、その四角い身体から尻尾のようにケーブルを伸ばして壁のコンセントに繋げているのを見た。


 シルベーヌがテトラを見つめながら微笑み、俺とミルファに言う。


「ほんと。ブランとミルファに、あの子たちをお迎えしてもらって良かった! 改めてありがとね」

「いいんですよ。それに今朝もあの子達と話していたところ、野外での警戒や警備も出来ると言っていました」


 ミルファが答えた言葉に、俺は若干驚く。あの四角い身体でそこまで出来るとは思っていなかった。つい聞き返すと、ミルファは頷いてから俺に教えてくれる。


「はい。これから仕事で野営する際などは、あの子達が私達を守ってくれるそうですよ。それと。皆私達を好いてくれているようです。シルベーヌは命の恩人だと言っていましたし、私は話の分かるお姉さんだと言ってくれました」

「そんな大袈裟に思ってくれなくていいのにね。ミルファが話の分かるお姉ちゃんなのは、なんとなく分かるけど。で、ブランの事は何て言ってた?」

「ブランは私達2人に近づく”バグ”だと言っていました。お邪魔虫だという、あの子達なりの冗談なのでしょう」


 くすくすとミルファが笑い、シルベーヌも明るく笑った。俺はもう頭を掻くしかない。

 しかしまあ。今の発言もそうだが、膝や脛に衝突されたりと、どうも俺はテトラ達に酷い扱いを受けている。朝筋トレしているとタオルを持ってきてくれたりするので、嫌われている訳ではないようだけれど、やはり女子2人に比べて乱雑な扱いだ。畏まられるよりは気楽で良いのだけれど。どうにも腑に落ちない。


 ともあれ。この3個、3機、あるいは3人の四角い友達たちによって、俺達は自由にできる時間が増えたのは事実だ。舞踏号の塗装やちょっとした整備はもちろんだが、トレーラーや軽トラも見違えるほど綺麗にしてしまうので、細々した事に時間を取られずに済むようになった。本当にありがたい。

 きびきびとしていて、それでもどこか愛嬌のある動きで働くテトラ達を見つめた後、シルベーヌが腰に手を当てて告げる。


「んじゃ、舞踏号の塗装とかはテトラ達に任せて。ちょっと出かけましょ?」

「出かけるったってどこに行くんだ?」


 俺が聞きかえすと、シルベーヌはいささか真面目な顔になった。


「ダースさんにお礼を言いに行きたいんだけど、これは建前。旧市街で回収して、私が解析しきれなかった変な機械覚えてる? あの半壊したやつ。あの人にその解析を頼もうと思ってるの。テトラのソフトウェアを直すので分かったけど、その道の専門家みたいだしね」

「なるほど。でも、どうなんだろう。ダースさんを疑う訳じゃないけど、あの機械の事も、色々な事に関わってそうだろ? ダースさんを巻き込む事になるんじゃないか?」

「そう。そこだけは本当に心配なの。何の関係も無い人を巻き込む形になる訳だし……。ブランとミルファはどう思う? 流石に私の一存じゃ決めれなくて」


 どんどん言葉がたどたどしくなるシルベーヌ。ミルファも悩んでいる様子で、小首を傾げて自分の頬に手を当てていた。

 でも俺は、不安げなシルベーヌを元気づけるように言う。


「旧市街から一度戻った時や、エリーゼさんの件でも改めて分かったけど。ダースさん含めて、うちに来てくれる整備員の人達は本当にい人達だよ。あの人達に甘える形になるけど、協力してくれるならそれは心強いしさ。俺から話してみるよ」

「ありがとブラン。けど、もちろん私からも言うわよ! 私の提案なんだしね」

「ブランとシルベーヌの心が決まっているのでしたら、私が言う事はありませんね。早速参りましょう。軽トラをまわして来ます」


 シルベーヌに続いてミルファがそう言って微笑むと、銀色の髪を揺らして家の裏手に向かい出す。


 俺の胸中には、前にミルファに言われた『何もかも受け手なのは、流石に甲斐性が無さ過ぎる』という言葉がある。全くもってその通りで、俺はいつまでも受け手で居てはいけないのだ。

 気合を入れ直して頬を叩くと、ミルファが丁度軽トラに乗って家の前に戻って来た。俺はひらりと荷台に飛び乗ると、荷台に立ったままテトラ達と舞踏号に言う。


「んじゃ、行って来ます!」


 3機の四角い箱達が、甲高いビープ音で返事をしてくれた。




 そうして向かったのは、久しぶりの307(サンマルナナ)小隊駐屯地である。

 流石に手ぶらではいけないので、ちょっと高そうな店舗で保存が利いて美味しいお菓子を購入しておいた。

 俺達の来訪は急ではあったが、以前エリーゼさん救出の際世話になったからとダースさん達に面会を求めると、少しだけ待たされた後にすんなりと通してくれた。顔を知られているというのもあるようで、門の衛兵の俺達への対応は、どこかフランクな雰囲気だ。

 無論。門を通る前に衛兵から、小隊責任者のフレイク大尉の伝言が告げられた。『私は忙しいので応対出来ませんが、仕事の邪魔にならない程度にゆっくりしていってください』との事だ。

 以前ここに来た時と違うのは、案内役の騎士団員が居る事だろう。以前は訓練を受けるついでに人型機械ネフィリム運用のデータ取りという仕事があったけれど、今回はあくまで”お客様”なのだと実感させられる。


 案内役に連れられて応接室に着いた後。一息つく間もなく、どたばたした足音が扉の向こうまで駆けて来た。その足音は一度扉の向こうで止まると、数十秒だけ間を空けてから扉をノックする。


307(サンマルナナ)小隊整備班員代表! ダース! 入ります!」


 大仰な名乗りが扉の向こうから聞こえ、ゆっくりと扉が開かれた。

 長袖の作業着を着た、カメラ頭のアンドロイド。ダースさんが部屋に入り、綺麗な敬礼をして俺達を見る。入れ替わりに案内役の騎士団員は部屋を出て、静かに扉を閉めた。

 扉の締まる音と同時に、ダースさんがいつもの気楽な雰囲気になり、軽く片手を上げて笑う。


「ちょっと前ぶり! だけど珍しいね! どうしたんだいオレ達に用って!」

「ダースさん達整備の皆さんに、先日のお礼です。これ。お菓子の詰め合わせですけど。結構美味しいと評判だそうです」

「おっ。タイガーストアの羊羹かい。分かってるじゃないかブラン君! 親父さん……カレド班長がこれ好きでねえ。機嫌良くなっちゃうよ」


 俺がお菓子の詰め合わせが入った紙袋をダースさんに渡すと、ダースさんは中身をちらりと見て何度も頷いた。店舗でお礼の品に良い物は無いかと聞いて、言われるままに買った羊羹セットだったが正解だったようだ。

 ひとまず低いテーブルを挟んで向かい合わせに置かれたソファに、俺達3人とダースさんが向かい合わせに座ると、今度はシルベーヌが真面目な声色でダースさんに言う。


「先日の救出作戦のお礼もですけど、テトラのソフトウェアについて助言を貰えた事についてもお礼を言いたくて。ありがとうございます」

「あの資料役に立ったかい! いやー良かった! 技術屋冥利に尽きるよ!」

「はい! とっても! ダースさんの腕前の片鱗が見えました! それでですね、少しというか。かなり大事な話があって、今日はここに来たんです」


 気楽な雰囲気だったダースさんは、シルベーヌの声色と真面目な表情から何かを察したようだった。彼も真面目な雰囲気になり、ソファに座ったまま少しだけ身を乗り出す。


「3人とも、明るい話って訳でもないみたいだね。どうしたんだい?」

「はい。決して明るい話ではありません。それどころか、あまり心地の良い話でもありません。聞くと後悔してしまうかもしれませんが――」


 ミルファが深刻な表情で言いかけたのを、ダースさんが軽く手を出して止めた。カメラ頭がゆっくりと俺達を見回し、真面目だけれど、どこかにこやかな表情になる。


「何を今更! わざわざオレに会いに来てくれたって事は、オレの事とオレの力を信じて来てくれたんでしょ? だったら何も言わずに応えるのが男ってもんさ!」


 ダースさんはさらりと言いのけ、俺達を再び見回した。その顔には疑いや躊躇いなど無い。俺達への好意と、求められたからには応えたいという高潔な志があるだけだ。この人は善い人なのだ、本当に。

 更に続けて、この気のいい裏方の騎士は言う。


「それにさ。オレ達と3人の仲じゃないの! 水臭いのは無しで良いって! 機械の相談から人生相談まで! バックアップはプロのオレに任せなさい!」

「ダースさん……!」


 何故だろうか。俺はどうもこの人のこういう言葉に、不思議と目頭が熱くなってしまう。旧市街から戻った際に駆けつけてくれた時もそうだった。この人には心配など杞憂だったのだ。

 若干涙ぐむ俺を置いて、ミルファとシルベーヌは同時に頷くと、事の次第を話し始める。喋る生体兵器モンスターの事、メイズで起きている妙な動き、壊れた機械の事。もし戦争が起きそうなら止めたい事。

 ほぼ全ての事情を話し終えると、ダースさんは腕を組んでぐぐぐと唸った。


「奇妙な事が起きてるのは間違いないんだろうねえ。でもオレは。騎士団の下っ端だけど、そういうのは全然気付かなかった。強いて言うなら307(サンマルナナ)に流れて来る中古品が多くなってきた事くらいかな……いや、それはフレイク大尉のおかげか……」


 自問自答するように言った後。ちらりとシルベーヌを見る。


「それで。オレに協力してほしいのは、その壊れた機械のプログラムとかを解析する事。これで間違いないね?」

「そうです。ご協力して頂けますか?」

「もちろん! オレも下っ端だけど、変な事を騎士団がしようとしてたり、どこかの誰かと戦争が始まるなら止めたいからね。それと同時に、オレは出来る範囲で君達に味方すると約束するよ」


 シルベーヌの問いかけにダースさんは迷いなく答え、任せろと言わんばかりに軽く自分の胸を叩いた。

 俺達3人はほぼ同時に深々とお辞儀をし、シルベーヌが胸のポケットから、大人の親指程のサイズの機械を取り出した。プラスチックの外装がされた記録媒体だ。


「この中に、今言ったプログラムがそのまま入ってます。コピーとかでもない、本当にそのままのを移してある感じです」

「流石、準備がいいねえ。でも職場で怪しい機材の解析なんて出来ないから、家でコソコソやる事になるよ。それにシルベーヌちゃんで苦労したなら、オレでも時間はかかるはずさ」


 ダースさんはそう言ってニヤリと笑うと、そのメモリを受け取ってポケットにしまった。


「解析が終わるか、どん詰まりになったら連絡するよ。気長に……って訳にもいかないかもしれないけど、待っててね」

「はい! よろしくお願いします」


 再び全員で頭を下げた後、顔を上げる。

 自然と気の抜けた溜め息が漏れ、シルベーヌがソファにぐったりと背を預けた。どこか安心した顔で俺を見ると、ホッとした様子で俺に微笑みかける。彼女も緊張していたのは間違いない。後ほどきちんと労ってあげなければならないだろう。

 そんな気の抜けた姿を見て、ダースさんが明るく笑った。


「そこまで緊張しなくていいのに! こういう仕事なら大歓迎さ。なんせ普段は地味な事ばっかりだからねえ……もうちょっと壮大な事して見たいとか思っちゃうんだよ!」


 そこまで言って、ダースさんがハッとする。


「しまったぁ……! 地味な作業で、親父さんに頼まれてた今期の補充申請書忘れてた……! ああヤバい! ごめんねブラン君! シルベーヌちゃん! ミルファちゃん! また今度ね! いい知らせ期待しといて!」


 慌ててそう言うと、俺達が買って来たお土産の羊羹をひっつかみ、バタバタした足取りで部屋を出て行った。今までの頼もしい姿から一変し、怖い上司に怒られる部下という姿に早変わりしたので、3人全員で少しだけ笑ってしまう。しかし、あれがこの小隊の日常の一場面なのだろう。

 その後はラミータ隊長やベイクにも会えればと思ったが、どうも仕事で人型機械ネフィリム共々出払っているらしい。任務の内容について部外者が聞くのは失礼過ぎるので、素直に退散する事になった。



 そして家に帰る道中。開けた公園の隅に、明るい色のトレーラーが停まっていた。見間違えるはずもない。アルさんのお店であるフードトラックだ。

 それは運転席に居たシルベーヌにも見えていたようで、軽トラの荷台に乗っていた俺にバックミラー越しに合図をした後ハンドルが切られ、邪魔にならない場所に軽トラを停めた。


 3人でお店に近づくと、そこには爽やかな笑顔で働くアルさんに続き、優雅な笑顔のエリーゼさん。次いで劇団員3人。大柄なメアさんが気前の良い笑顔で、メアさんと共に居たボンさんやタンさんも快活な笑顔で働いていた。

 お客さんは非常に多いが、人でごった返している訳でも無いし、小さなゴミも丁寧に回収されているいう状態だ。きびきびとしていて、まるで何年も働いていたかのように見える劇団員3人の演技(動き)が、お客さん達を自然と律しているようにも感じられた。


「アルさんやエリーゼさん。それに劇団員の皆さんも平穏を取り戻しているようですね。本当に良かった。ついでに食べて行きましょう?」


 ミルファが嬉しそうに言い、俺とシルベーヌの手を引いて注文の列に並ぶ。すぐにお店の制服を着たメアさんが、メニューの書かれたチラシを握ってこちらに歩み寄り、驚いた顔をする。


「皆さん! どうもどうも!」

「お久しぶりです。って訳でもないですね。ちょっと前ぶりです」


 俺がメアさんに答えると、彼は嬉しそうにお店の方に手を振り、知り合い全員に俺達の来店を知らせた。

 アルさんやエリーゼさんが小さく手を振ってくれ、劇団員達もこちらに笑顔を向けてくれる。


「店長も奥さんも喜びますよ! っと、注文はレジが近くなった頃に伺います! 今はポテトのLサイズが割引中ですよぉ!」


 メアさんは明るくそう言うと、また色々な仕事でせわしなく動き出した。すっかり手慣れた様子で、ガラの悪い演技をして俺達に絡んでいたのと同一人物とは思えない程である。

 そして注文が終わって商品を受け取った時、ついでに小さなメモ用紙も渡された。『トレーラーの裏に机と椅子が出してあります。少し待っていて下さい』とエリーゼさんの綺麗な字で書かれたメモだ。顔を上げると、アルさんとエリーゼさんが少しだけ微笑んだ。


「何だろうな?」

「まあ。ゆっくり食べながら待ちましょ? やっぱり美味しいのよねえアルさんの料理」


 俺に続いてシルベーヌが言い、和やかな軽食が終わる頃。

 丁度お客さんも減って来た様子で、アルさんとエリーゼさんが俺達の所にやってきた。アルさんの怪我はもう良いようだけれど、少しだけ身体が強張っているのが察せる動きである。

 挨拶も程々に済ますと、エリーゼさんが俺達に微笑んで言う。


「実はですね。近日中に騎士団が主催する舞踏会があるんです。舞踏会と言っても、色々な人が集まる顔合わせのパーティーと言った方が良いもので。助けて頂いたお礼と言っては何ですが、それに皆さんをお呼びしたいんです。旅費は私が出す小旅行と思って下さい」

「それってひょっとして――」


 俺が思わず声に出したが、シルベーヌとミルファも気付かない訳が無い。

 こういう内容の物かと、俺達が貰った招待状に書かれていた事を話すと、エリーゼさんも少しだけ驚いた後に淑やかに微笑んだ。


「でしたらお話は早いです。ホワイトポートにいらっしゃるなら、私の家に泊まりませんか? お父様にも皆さんを紹介したいんです」


 エリーゼさんの父。それはすなわち、相当大きな商会の会長だったはずだ。そして同時に。少なからず前回の事件に関わっているであろう人物でもある。

 俺達探索者シーカー3人は、同時に顔を見合わせた。

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